ホワイトペーパーは、一度制作すれば継続的なリード獲得に繋げられる、効果的なマーケティング施策といえるでしょう。
株式会社IDEATECHが行った調査によると、ホワイトペーパーの制作ペースが「1か月に2~3本以上」が32.4%、「1か月に1本程度」は27.0%とあったことからも、実施頻度の高い施策とわかります。とはいえ、実際に制作していてもリード獲得につながらず、お悩みの方も多いのではないでしょうか?
そこで当記事では、ホワイトペーパーの重要性やリード獲得に繋がる作り方、制作上のポイントから効果的なプロモーション戦略まで解説します。ホワイトペーパー制作についてお悩みのBtoBマーケティングの担当者様は、ぜひお役立てください。
目次
ホワイトペーパーによるリード獲得とは?
ホワイトペーパーの起源は、元々イギリス政府が発行した公式外交報告書であるといわれています。現在では、主に企業や非営利団体から発行される資料を指し、業界に関する調査情報やノウハウ、自社製品情報などを記載するのが一般的です。「営業資料」ではなく、「自社の見込み客にとって役立つ情報が記載された資料」といえるでしょう。
ホワイトペーパーは、Web上で配布するのが一般的です。自社の見込み客に資料ダウンロードを促すことで接点を構築し、ダウンロードの際に連絡先を入力してもらうことで、リード情報の取得に繋げます。
代表的なホワイトペーパーの種類は、以下の通りです。
調査レポート系 | 業界のトレンドや市場動向、競合分析などの情報をまとめた資料。 |
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業務ノウハウ系 | 特定の業務について、具体的な手法、戦略、アプローチを詳しく説明する資料。 |
導入事例系 | 自社の製品やサービスが実際にどのように機能し、導入した顧客に効果をもたらしたかを具体的に紹介する資料。 |
製品・サービス比較系 | 自社製品と競合製品とを比較し、自社製品の優れた点や独自の機能を強調する資料。 |
用語集系 | 特定の業界やサービス分野に関する専門用語について、網羅的に解説した資料。 |
ホワイトペーパーの重要性
ホワイトペーパーがマーケティング活動において重要な理由は、マーケティング・営業戦略をより効果的に実施できるようになることにあります。なぜなら、前述のようにホワイトペーパーの配布は、ダウンロードフォーム経由でリードに関する属性情報(所属企業や部署、役職など)を取得できるためです。
フォームに名前やメールアドレス、業種、役職など、リードに関する情報を入力してもらう形式を採ることで、ダウンロード後に営業やインサイドセールスによる効率的なフォローが可能。
さらに複数のホワイトペーパーを制作することで、ダウンロードされた資料の内容から各リードの抱える課題についての仮説立ても行えます。
競合他社の乱立する業界の場合は、ホワイトペーパーを活用して、業界のリーディングカンパニーとしてのブランディングを試みるのも効果的でしょう。
リード獲得にホワイトペーパーを活用するメリット
BtoB企業がリード獲得を目的としてホワイトペーパーを作成する主なメリットは、以下です。
- リードナーチャリング(育成)に繋がる
- 営業活動でも有効活用できる
次項より、個別にみていきましょう。
リードナーチャリング(育成)に繋がる
ホワイトペーパーは「リードを獲得する」だけでなく、ナーチャリング(育成)できるメリットがあります。リードナーチャリングとは、見込み客に対し適切なアプローチを継続的に行うことで、購買意欲を高め、受注・商談へと繋げる育成プロセスのこと。
株式会社IDEATECHがホワイトペーパーを活用しているBtoB企業のマーケティング担当者107名に対し行った調査では、37.5%が「顧客のナーチャリングに繋がる」と回答しています。
出典:PR Times「株式会社IDEATEC ホワイトペーパー施策に関する実態調査」
情報収集段階、比較検討段階など、ステージに合わせた資料を用意することで、より効果的にナーチャリングを行えるでしょう。
営業活動でも有効活用できる
ホワイトペーパーは、営業による商談のタイミングで活用することも可能です。
営業担当者が製品やサービスの価値を伝える際、ホワイトペーパーは具体的なデータや事例を元にした補足資料として役立つため、営業をより効率的に行えるようになります。
リード獲得にホワイトペーパーを活用するデメリット
ホワイトペーパーは制作に時間・コストがかかるため、思ったほどリードが獲得できなければコストパフォーマンスが悪化してしまいかねません。制作を外注する場合は、1本10万円程度~の金額をみておいた方がよいため、しっかりと費用対効果を見極める必要があります。
また、一度ユーザーの手に渡った資料は更新されないままになってしまうことも。ホワイトペーパーに掲載している情報を更新した場合、最新の情報を参照してもらうためには再度ダウンロードしてもらうしかありません。
ホワイトペーパーの作り方5ステップ
リード獲得につながるホワイトペーパーは、以下の5ステップで作成しましょう。
- Step1.目標・ターゲット設定
- Step2.全体ストーリーの検討
- Step3.コンテンツ制作(調査・分析・取材)
- Step4.執筆
- Step5.全体デザイン
各手順について、具体的に説明します。
Step1.目標・ターゲット設定
まずは、ホワイトペーパー制作の目標を明確にしましょう。「どういったターゲットにアプローチし、何件のリードを獲得したいのか」という施策のゴールから逆算することで、「どのようなホワイトペーパーを作成するべきか」が定義できます。
ターゲットを設定する際には顧客の購買行動を可視化したカスタマージャーニーの作成や、理想の顧客像であるペルソナの作成も効果的です。ターゲットが「どのような課題を抱えているか」を検討し、ターゲット層が持つ課題を解決するテーマを設定しましょう。
関連記事:【初心者向け】カスタマージャーニーマップの作り方を7ステップでわかりやすく紹介!
関連記事:カスタマージャーニーに必須の「ペルソナ」の作り方とポイントを徹底解説!
Step2.全体ストーリー・構成の検討
ホワイトペーパーの目標・ターゲット設定が完了したら、次に全体のストーリーラインを決定します。具体的には、表紙や目次から始まり「どういった内容を、どこに、何ページ入れるのか」というホワイトペーパーの骨子の作成です。
出典:株式会社JBN「ホワイトペーパーとは?基礎知識や種類、ページ構成を解説」
ページ構成はホワイトペーパーの種類によって異なります。例えば「調査レポート系」のホワイトペーパーなら、以下のようなページ構成が一般的。
- タイトルページ
- 目次
- 全体サマリー
- 本編
- 自社商材の紹介
- 会社情報・連絡先
- リ参考文献/脚注
このようにして、本格的な制作を行う前に、ホワイトペーパーの全体の流れと各部分の内容を定義しましょう。
Step3.コンテンツ制作(調査・分析・取材)
全体の構成が完了したら、コンテンツの中身を制作します。
この際、ホワイトペーパーの種類に応じて作業内容は異なります。例えば、調査レポート系のホワイトペーパーならアンケートを実施したり、定量的なデータ、統計、事例収集などが必要です。
導入事例系なら「顧客インタビュー」の実施、製品・サービス比較系なら「他社商材の情報収集」といった形で、制作するホワイトペーパーのクオリティを高めるための情報やデータを揃えましょう。
Step4.執筆
次に、ホワイトペーパー全体のテキスト部分の執筆作業を行います。ここまでのステップで作成した全体ストーリーとリサーチ結果に基づいて「どこにどういったグラフを入れるのか」まで含めて本文を作成すると、その後の工程がスムーズに進みます。
Step5.全体デザイン
本文の執筆が完了したら「レイアウトや図表作成」「写真・画像の挿入」などを行って、視覚的に魅力のあるデザインにして、ホワイトペーパーの完成を目指します。
特に、表紙デザインはユーザーの「ダウンロードするかどうか」の決断に影響を与えるため、Step1で定義したターゲット層に刺さるデザインにしましょう。
出典:McKinsey & Company「スペシャリティ・ケミカル事業をアジアで大規模に展開するために」
ホワイトペーパーでリードを獲得するポイント
ホワイトペーパーの作成・配布で効率的にリードを獲得するポイントとしては、次の通りです。
- ターゲットの興味・関心を引くタイトルにする
- ダウンロードの手間をなるべく削減する
下記より、順番にみていきましょう。
ターゲットの興味・関心を引くタイトルにする
ホワイトペーパーでより多くのリードを獲得するためには、ターゲット層のニーズを捉えた端的かつ魅力的なタイトルが不可欠。例えば前述した「ペルソナを明確に設定する」「読者の課題について仮説立てを行う」などによる、訴求ポイントの絞り込みが効果的です。
出典:MIL株式会社/ダウンロード資料・動画
ユーザーがホワイトペーパーの表紙を一目見た際に、直感的に「これは自分に向けられた資料だ」とわかるタイトルにしましょう。
ダウンロードの手間をなるべく削減する
ホワイトペーパーのリード獲得効果をアップさせるためには、ダウンロード時にユーザーが離脱しないように、フォームの内容を最適化する必要もあります。例えば、「入力項目は多くし過ぎない」「エラー表示をわかりやすくする」など。
入力項目については、「営業・インサイドセールスの意見を取り入れる」「プルダウン式にする」など工夫しましょう。
このように、ホワイトペーパー制作時には「EFO(入力フォーム最適化)」もセットで行い、ユーザーの離脱を低減します。
関連記事:EFOとは?入力フォームの離脱を改善しコンバージョン率を上げる6つのポイント
ホワイトペーパーのプロモーション戦略
ホワイトペーパーは、「制作さえすれば」リードを獲得できるわけではありません。ホワイトペーパー施策では、内容はもちろんのこと、より多くの人にダウンロードしてもらうためのプロモーション戦略も大切です。
例えば、自社のサイトやメルマガ、SNSアカウント、プロモーションサイト(例:PR Timesなど)でのプロモーションが一般的でしょう。
それ以外にも、デジタル広告の配信という選択肢もあります。「テキスト + 画像」「テキスト + gif」などの形式で表示されるディスプレイ広告なら、広告が表示されたユーザーに対し、ホワイトペーパーを魅力的に訴求可能です。
またSNSでは、広告種類のひとつに「リード獲得広告」があります。広告下部に表示された「サインアップ」の部分をクリックすると、外部のサイトに遷移することなく入力フォームが現れる仕組みになっているため、リード情報を獲得しやすくなっています。
出典:LinkedIn
ホワイトペーパー以外にリード獲得に効果的なチャネルとは?
ホワイトペーパー制作以外にも、次のようなコンテンツがリード獲得に効果的です。
- オウンドメディア
- Web広告
- ウェビナー
以下より、それぞれについて解説します。
オウンドメディア
オウンドメディアとは、企業自らが所有・運営するメディアを指します。オウンドメディアにはコーポレートサイトやブログ型情報サイト、SNSアカウントなどが含まれます。
BtoBマーケティングにおけるリード獲得の文脈で「オウンドメディア運用」を行う場合、ブログ型情報サイトを指す場合がほとんどでしょう。
例えばブログサイトで「自社商材と親和性の高いキーワード」でSEO対策を施した記事コンテンツを作成し、オーガニック(自然)検索経由で見込み客の流入を図ることで、新規リードとの接点構築を果たします。
関連記事:SEOとは?初心者にもわかりやすく仕組みや主要な対策を解説!
Web広告
Web広告は、Google・Yahoo!の検索広告やディスプレイ広告、SNSの広告など、オンライン上で展開される広告媒体を意味します。広告からLPへの流入に繋げ、LP上でリードを獲得しましょう。
LPは流入の経路ごとに最適化された情報が掲載されているのが特徴です。自社の見込み客のニーズに即したWeb広告を出稿し、LP上で詳細な情報提供を行うことで、問い合わせや資料請求などのコンバージョンに繋げられます。
関連記事:LPとは?ランディングページのメリット、目的、流入経路、トレンド、成功事例など基本をまるごと解説!
ウェビナー
ウェビナーとは、インターネットを通じてオンラインで配信されるセミナーのことです。ウェビナー施策は、オフラインセミナーと比べて低コストで開催でき、より多くの視聴者を集められます。
潜在層向けにノウハウ紹介のウェビナーを企画し、Web広告で集客すれば、顧客データを得つつ、リード獲得に繋げることが可能です。ウェビナーで得たデータを分析し「パーソナライズされたアプローチ」「ウェビナーの改善」を図ることで、リードの態度変容を促せます。
ウェビナー施策はリアルタイム形式の「ライブ配信」が一般的ですが、後から配信する「アーカイブ配信」も必ず実施しましょう。 アーカイブ配信は、視聴時間が限られているライブ配信と異なり「より多くの視聴者にリーチできる」「リードナーチャリングが可能」「ROIを高められる」点がメリットです。
アーカイブ配信では、動画内にCTAを設置できるプラットフォームを選択することで、より多くのリードを獲得できるでしょう。アーカイブ活用について詳しくは、以下の記事でご紹介しています。
関連記事:BtoB企業のウェビナー成功事例5選!オンラインセミナー成功のコツを徹底解説
関連記事:ウェビナーアーカイブの配信方法&成果を出すポイントを解説!動画でリード獲得やナーチャリングを促進
まとめ
ホワイトペーパー制作は、ダウンロード段階で顧客情報を取得できるため、有用なマーケティング施策といえます。ただし、ホワイトペーパーは「制作しただけ」でリード獲得にはつながらないため、プロモーション戦略も非常に大切です。
さらに、ホワイトペーパーだけで新規リードの獲得を図るのではなく、記事コンテンツやウェビナー・アーカイブ配信など、他のアプローチ方法も組み合わせて、さまざまなチャネル経由での接点構築を目指しましょう。

執筆者
黒谷 純子
MIL株式会社 マーケティング
大学卒業後、編集プロダクション等を経て、人材サービス企業のマーケティング職に従事。2021年3月よりMIL株式会社に入社し、現在は自社サイトやMILblogの企画・ディレクション・執筆、ホワイトペーパー制作等、おもにコンテンツ領域を担当している。
Twitter : https://twitter.com/MIL29292841