商品やサービスのPRや認知向上の手段として、企業におけるYouTubeの活用が進む中、動画を内製する機会も増えているかと思います。社員が出演者として登場したり、自社メンバーで動画を撮影・編集したりするときに、不可欠なアイテムが「台本」です。
当記事では、YouTube台本を作るメリットや作り方のステップ、構成のコツをご紹介します。すぐに使える台本のテンプレートもご紹介していますので、ぜひご活用ください。
目次
YouTubeの台本を作るメリット
YouTubeの台本を作るメリットは、おもに以下の3点です。
それぞれについて、解説していきます。
メリット1:視聴者に向けて、わかりやすく話せる
台本を作ると、視聴者に分かりやすく伝えることが容易になります。台本があれば事前に話す内容が整理されているため、カメラや人前で話すのに慣れていない人でも、落ち着いて撮影できることでしょう。最初は棒読みになってもかまいません。場数を踏んで練習を重ねれば、徐々に慣れていきます。
メリット2:編集作業がスムーズになる
台本通りに動画を撮影すると、編集作業がスムーズになります。台本から言葉をコピーしてテロップを入れるなど、工数削減にも役立つのがメリットです。また言葉に詰まることが少ないため、カット作業も楽になります。複数人で動画作成をする場合は「必須」ともいえるでしょう。
メリット3:事前に内容を確認し、正確な情報を発信できる
企業のYouTube運営で最も大切なのが、情報の正確性です。間違った情報を発信してしまうと、視聴者だけでなく、取引先からの信頼も失ってしまいます。
また企業がYouTubeで情報発信をする場合、関連部署への確認作業も必要です。撮影に立ち会わない人にも台本を共有して事前に確認し、気になる点があればフィードバックをもらって、修正しておくと良いでしょう。
YouTube台本の作り方 5ステップ
YouTube台本をどのような手順で作成したら良いか、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。そこで、YouTube台本の作り方のステップをご紹介します。
ステップごとにポイントを解説していきます。
1:動画の目的・対象者を決める
まずは企画の目的やターゲット、ニーズを言語化して設定します。ここがブレると、視聴者に刺さる動画コンテンツが生まれないだけでなく、クリック率や視聴維持率の低下にもつながります。
特に「ターゲット設定」は重要です。なぜなら、属性の異なるユーザーが入ってくると、チャンネルのバランスが崩れてしまうからです。
例えば、初心者向けのビジネスYouTubeチャンネルを開設したとします。しかし、このチャンネルで上級者向けの動画コンテンツを配信してしまうと、初心者と上級者の登録者が混在してしまいます。その上で初心者向けの動画を出すと、クリック率や視聴維持率は下がり、チャンネル全体の評価は落ちていくことでしょう。
そのため、動画の目的やターゲットは細かく設定することが大切です。「企業のYouTubeマーケティング手法や他社のチャンネル成功事例」を参考にしながら、自社の活用目的やターゲットを考えてみてください。
2:構成を考える
次に、動画の大まかな流れ(構成)を考えます。台本における構成とは「骨組み」のようなものです。構成がないと、話が行ったり来たりして、何を話しているのか分からなくなります。逆に構成を考えておけば、全体の流れを理解しながら、撮影当日もスムーズに話すことができるでしょう。構成のロジックや詳細については、次の章でご紹介します。
3:構成に沿って、台詞と編集指示など詳細を書いた「台本」を作る
構成に沿って、出演者の台詞や編集指示を書いていきます。台本は完璧に書くのではなく、自由度を高めるために「余白の部分」を持たせることも大切です。
台本を記事のように「です・ます調で書く」「接続詞は減らす」という人もいますが、YouTube撮影においては、あまり意味がありません。出演者が自然に話せるように、完成した原稿を音読して、ブラッシュアップしていくことが大切です。音読をしながら、あえて接続詞を増やしたり、話し言葉に直したりと、通常の記事作成とは異なる視点で改善を加えていきます。また台本が完成したら、音読をしながら時間を計ると、動画の時間の目安にもなるのでオススメです。
当記事の最後に「台本テンプレート例」をご紹介していますので、ぜひご活用ください。
4:出演者は台本を元に練習する
出演者は台本を元に練習します。練習のポイントは以下の2つです。
- 繰り返し音読する
- 話し言葉に落とし込んでいく
繰り返し音読することで、台本の内容を頭の中に落とし込めます。内容を理解せずに台本を読むと、伝えたい箇所に力が入らず、視聴者へ熱意が伝わりません。音読を続ければ、「ここで力強く話そう」「ここは単調に説明した方が良い」と分かってきます。
そして音読を繰り返し、台本を話し言葉に落とし込んでいきます。台本が完成した段階では、文章は話し言葉になっていません。そのまま読むとぶっきらぼうなイメージになってしまうため、読み進めながら「話し言葉」に書き換えましょう。もちろんアドリブで、撮影時に話し言葉に変換できる人は、そのままでも問題ありません。
5:撮影本番は、以下のような方法で台本を活用する
撮影本番も、台本を目に見える位置に置いておきたいと感じる人もいるでしょう。そんな方におすすめの方法をいくつか紹介します。
- パソコンに映す
- 台本を動画上に映す
- テレプロンプターを使う
- 台本アプリを使う
一般的なのは、パソコンに映した台本を読む方法、もしくは、台本を動画上に映す方法です。後者はスライドを共有しながら説明できるため、視聴者と一体感をもつことができます。
テレプロンプターとは、カメラの三脚に取り付ける撮影用機器です。下に置いた原稿をミラーに反射させ、カメラ目線を維持しながら読み続けられます。台本を何度も確認する必要がないため、カット編集が多い場合に有効です。
またスマートフォンで動画を撮影する場合には、台本アプリを活用すると便利です。作成した台本のセリフをスマートフォンの画面上に字幕で表示しながら、動画撮影も同時にできるため、自然な視線で撮影ができるというメリットがあります。プロンプターが搭載されていますので、別途買う必要がありません。
以下、代表的なアプリを2点ご紹介します。
■Selvi
作成した台本のセリフをスマートフォンの画面上に字幕で表示しながら動画撮影も同時にできる無料アプリ。iOS(iPhone / iPad)とAndroid両方に対応で、スマートフォンで動画撮影をする際に最適です。
・GooglePlay
・AppStore
■BIGVU
Selvi同様に、台本を読みながら、スマートフォンでスムーズに動画撮影ができるアプリです。機能別に3つのプランが用意されており、動画の最大尺や機能が異なります。まずは無料プランから試してみるのが良いでしょう。
・GooglePlay
・AppStore
YouTube台本の構成のコツ
YouTube台本の構成にはコツがあります。
- 「オープニング」は短く端的に!
- 文章の「型」を使う!
- 「エンディング」で次のアクションへつなげる!
3点について、それぞれ解説していきます。
「オープニング」は短く端的に!
オープニングは、短く端的に伝えることが大切です。オープニングが長く、視聴者に関心の薄い内容が続くと、本編に入る前に離脱されてしまいます。また視聴者は最初の15秒で「自分にとって観るべき動画か」を判断します。
そのため、オープニングでコンセプトや伝えたい内容を、短い言葉でまとめる力が必要です。目安としては「1分以内のオープニング」を目指しましょう。
文章の「型」を使う!
文章の「型」を使うと、骨組みのしっかりした台本を作成できます。こちらでは、おすすめの型をいくつか紹介します。
SDS法
SDS法に当てはめると、シンプルで流れのよい台本が出来上がります。以下の流れで文章の構成を組み立てます。
詳細(Details)
要点(Summary)
以下ではSDS法を用いた文章例をご紹介します。
:今回は「パーソナライズドマーケティング」について解説をします。
詳細(Details)
:「パーソナライズドマーケティング」とは、個人の属性や行動履歴・興味関心に基づいて、最適なコンテンツやサービスを提供する仕組みのことです。結果として売上や顧客体験の向上につながることから、広告・、Webサイト、DMなど、さまざまなシーンで活用されており・・・・、
要点(Summary)
:今回は、顧客にあわせた情報提供や効率的なマーケティングが実現できる「パーソナライズドマーケティング」をご紹介しました。ぜひ活用してみてください。
SDS法は要点を端的に伝えられるのがメリットで、時間のないビジネスマンに向けた動画に向いています。
短時間で視聴者を惹きつけるコンテンツにもおすすめです。
PREP法
PREP法に当てはめると、説得力のある台本ができあがります。以下の流れで文章の構成を組み立てます。
理由(Reason)
具体例(Example)
要点(Point)
以下ではPREP法を用いた文章例をご紹介します。
:子どもの教育で大切なのは、短所を直すことではなく、長所を伸ばすことです。
理由(Reason)
:なぜなら、子どもの成長において自己肯定感は欠かせない要素だからです。
具体例(Example)
:例えば、短所ばかり注意していると、子どもは「自分は価値がない存在だ」と思い始めます。逆に長所を褒めて伸ばしてあげると、自己肯定感が上がり、どんなことにも挑戦できる人間に育っていくでしょう。
要点(Point)
:だからこそ、子どもの短所を直すのではなく、長所を伸ばすことに着目してみてください。
最初に要点や結論を持ってくるため、関心の高い状態を維持できるのがメリットです。
また具体例を盛り込んで話すので、視聴者の信頼を獲得したい場面にもおすすめ。
どんな動画にも使える万能な手法といえるでしょう。
「エンディング」で次のアクションへつなげる!
動画の内容をまとめて締めくくった後、5〜20秒ほど流れる定型パターン「エンディング」を設定しましょう。エンディングは、動画を最後まで観てくれた視聴者に対して、アプローチする大事な場面です。
エンディングには「チャンネル登録」や「おすすめ動画」などのリンクを設置できます。チャンネル登録やおすすめ動画に誘導すれば、チャンネルの成長につながるでしょう。
効果的なエンディングの作り方について詳しくは「YouTubeのチャンネル登録数を増やす!効果的なエンディング(終了画面)の作り方」でご紹介しています。ぜひご一読ください。
YouTube台本のテンプレート例
YouTube動画のスタイルが決まってきたら、テンプレート化して台本作りを効率化しましょう。
この章では、今すぐ使える台本のテンプレート例をご用意しました。
オープニング | オープニング動画を挿入 |
---|---|
挨拶 | こんにちは!〇〇です! |
導入(1分以内) | この動画では〇〇について解説します。
・〇〇 こんなお悩みはありませんか? そこで今回は、〇〇の専門家である〇〇が、〇〇について徹底解説します。 〈編集〉箇条書きのテロップ挿入 |
本題(10分程度で解説) |
要点 〇〇 詳細 〇〇 要点 〇〇 〈編集〉1テーマあたり2分程度にカット |
まとめ | いかがでしたか? 最後に、今回の動画のポイントをおさらいします。 ① ② ③ ④ ⑤ 以上の点を押さえて、〇〇してみてくださいね。 それでは最後まで動画をご視聴いただきありがとうございました! |
エンディング | エンディング動画を挿入 |
テンプレートを参考にしながら、各社オリジナルの台本へとアレンジいただければ幸いです。
効率的にYouTubeの台本を作成する3つの方法
テンプレートがあっても文章力に自信がなく、台本の作成に時間がかかるという方もいるかもしれません。そのような方は、以下3つの方法で台本作成を効率化してみましょう。
- 1.音声入力ツールの活用
- 2.YouTube台本ライターへの外注
- 3.ChatGPTの活用
以下、それぞれについてご説明します。
1.音声入力ツールの活用
いざパソコンに向かって台本を作ろうとしても、なかなか文章が浮かばなかったり、話し言葉に起こすのが難しいという方は、音声入力ツールをおすすめします。例えば「Googleドキュメント」では、ドキュメント上部の「ツール→音声入力」を選択して表示されるマイクボタンをクリックするだけで、自分の話し言葉が自動的に文章として入力されます。
このようにして、一旦、自分の話し言葉を文字にした上で、誤字脱字を直したり、構成の枠組みを客観的に整えていくと良いでしょう。
2.YouTube台本ライターへの外注
音声入力を使ってもうまく台本が作成できない、もしくは魅力的な台本に仕上がらないという方には、台本ライターへの外注がおすすめです。YouTubeチャンネルのジャンルや目的に合ったライターを選定し、依頼しましょう。YouTubeの台本が作成できるライターを見つけるには、以下のようなプラットフォームを利用すると良いでしょう。台本の単価はライターのスキルや文字数・難易度によって異なります。確認した上で発注しましょう。
3.AIツールの活用
続いては、今注目のAIツールのライティング活用です。2つのツールをご紹介します。
■Catchy
Catchyとは、AIライティングアシスタントツールです。広告・資料・メール・動画などで使える文章をAIが提案してくれます。YouTube動画の制作においては、台本作成だけでなく、タイトルの提案からディスクリプションの生成、企画案作成まで、ライティングアシスタントが動画制作をサポートします。
Catchyのユニークな点は「文章の雰囲気」を選べるところ。要点を伝えて、AIが作成した台本に、最後に人間が加筆修正を加えれば1本の台本がスピーディーに完成します。無料プランの場合は、制限がありますので、企業が活用したい場合は有料プランを利用すると良いでしょう。
出典:Catchy
■ChatGPT
ChatGPTとは、Open AIが手掛ける対話型AIサービスです。指定した内容に応じて文章を自動作成してくれるため、うまく活用することで、YouTubeの台本作成の手間を省けます。外注ライターに比べてコストが掛からず、また作業時間が圧倒的に短縮できる点は大きなメリットですが、完全ではないため、人間の目による添削は必須となるでしょう。
出典:ChatGPT
以下のようなプロンプト(命令文)を入力することで、台本の文章ができあがります。
#命令書 :
×××××(文章案)
上記の文の言い回しを変えてください
文を作るにあたっては以下の条件を踏まえたものとします。
#制約条件 :
1.登場人物は「××」と「●●」
2.××は聞き役
3.●●は説明役
4.××は語尾に「△△」をつける癖がある
5.●●は語尾に「〇〇」をつける癖がある
6.動画のテーマは「××××」について
7.聞き役である××が●●に質問をしながら会話を進める形式
8.文章は5000文字程度
#入力文 :
命令書の内容に沿った文を条件を踏まえた上で文章を作成してください
#出力文 :
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色々なプロンプトを試して、最適な作成法を見つけてみてください。また上記でご紹介した3つの方法以外にも様々なテクニックを駆使して、効果的な台本をスピーディーに作成してみましょう。
まとめ
YouTube台本を作成すれば、動画撮影だけでなく編集作業もスムーズになり、企業のYouTubeチャンネル運営を効率化することができます。また企業チャンネルとして重要な「正確な情報伝達」にも役立ちます。ぜひ本記事を参考に、YouTube台本の制作に取り掛かってみてください。
執筆者
黒谷 純子
MIL株式会社 マーケティング
大学卒業後、編集プロダクション等を経て、人材サービス企業のマーケティング職に従事。2021年3月よりMIL株式会社に入社し、現在は自社サイトやMILblogの企画・ディレクション・執筆等を担当している。
Twitter : https://twitter.com/MIL29292841