商品やサービスを魅力的に、またわかりやすく伝えることができる動画。総務省情報通信政策研究所の「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、全年代での休日の動画投稿・共有サービスを見る平均時間は58分、平日でも38分という結果が出ています。どの年代でも日常的に動画を視聴するのが当たり前の世界観となってきているのではないでしょうか。
これまで、動画はBtoC向けのマーケティング活動として活用されるのが一般的でしたが、昨今では、BtoBやBtoBtoCにおいても動画が活用されています。「動画を活用している企業の収益は、活用していない企業よりも49%も前年比伸び率が高い」というデータもあり、「動画マーケティング」が企業にとって重要施策の一部として取り上げられ、積極的に取り組む企業が増えているのです。
本記事では、Web上のコンバージョン増加施策の一貫で、今後動画マーケティングを取り入れたいと検討されているBtoBマーケティング担当の方向けに、動画活用メリットや動画市場、効果などを踏まえ、詳しく説明していきます。
目次
動画マーケティングとは?
「動画マーケティング」とは、映像コンテンツを活用して集客や宣伝活動、販売戦略を行うことです。基本的には、製品・商品の認知度拡大や比較検討時の興味関心度の向上、顧客獲得などの態度変容を促すことを目的としています。
そして「動画マーケティング」は、動画制作の前段階となる戦略立案、企画や構成作成、制作、公開後の分析、改善までのプロセス全てが対象です。
動画を制作し公開するまでの一部分の工程だけを見ていては、本来の目的が達成される可能性が低下します。仮説を元に戦略立案を行い、実装し、実証データを確認し、改善する……という全工程を確認し、PDCAサイクルを回すことが重要です。
関連記事:【2022年】動画マーケティングとは?メリット・手法・事例から最新トレンドまで徹底解説!
BtoB領域で「動画マーケティング」が注目されている理由
BtoB領域で動画マーケティングが注目される理由は主に、急速にデジタル化が進んだこと、またコロナウイルス感染の拡大によりリモートを取り入れる企業が増加したこと、の大きく分けて2つです。これらの環境要因について詳しくご説明します。
通信の高速化・5G開始によるデジタル化
通信の高速、大容量、多数の端末接続、などを特徴とした5Gが2020年に展開が開始されてから、普及は緩やかに拡大傾向です。総務省が発表した「令和2年情報通信白書」のデータによると、5G普及開始時から販売台数は増加し、2025年には、携帯電話総販売台数の半数以上が5G対応機種となることが予測されています。
(出典:総務省「令和2年情報通信白書」)
通信が高速化し、デジタル化が急速に進んだことで、これまで以上に場所や環境にとらわれずに情報を見られる環境が整いました。しかしその反面、急速なデジタル化により情報が溢れ、本来伝えたい情報が埋もれてしまうといったデメリットも生まれています。
従来通りのテキストやビジュアルのみでのアプローチでは情報が行き届きづらいといった背景から、toCだけでなくtoBにおいても短時間で魅力を伝えられるリッチな動画配信を用いる動画マーケティングを積極的に行う企業が増加しているのです。
営業活動の急速なオンラインシフト
新型コロナウイルスの影響により、企業の営業活動が、訪問営業からオンライン営業へとシフトし、企業においてのデジタル化が急速化したことも動画マーケティングが活発化している要因の一つです。これまで対面営業が主流とされてきましたが、非接触での活動が求められ、インサイドセールスなどの非対面で行う営業手法へのニーズが高まりました。
実際に、以下の「2019~2025年度のウェブ会議市場規模推移および予測推移」を見ると、緊急事態宣言時が発令された2020年からウェブ会議市場が右肩上がりに拡大し、今後もオンライン上で行われるウェブ会議が活発に行われていくことがわかります。
(出典:ITR Market View)
非対面での営業手法ツールの一つとして、また企業がプロモーションの一環で行ってきたオフラインセミナーがウェビナーや動画説明に代わるなど、動画が営業目的で活用されるシーンが増えてきています。
日本国内のデジタルシフト化が進む一方で、営業活動におけるデジタル化への取り組みに遅れをとっている業界もあります。以下は、大手人材業界エン・ジャパン株式会社が行った『1000社が回答!「オンライン商談」実態調査』の業界別調査結果です。
(出典:engage(エンゲージ))
業種別に見ると、広告・出版・マスコミ関連、IT・情報処理・インターネット関連業種が積極的に導入を進めている中、「サービス関連」、「不動産・建設関連」、「流通・小売関連」などが遅れを取っている結果です。
これらの導入に遅れを取っている業界は、オンライン上での営業活動を優先して行う顧客との接点を失い、売上が減少する可能性があります。売上の機会損失を発生させないために、Webサイトやメールなど非対面の接点におけるDX推進が重要であり、新たなDX営業の手段として「動画マーケティング」が有効です。
動画マーケティングを活用することで営業活動にどのようなメリットがあるのか、について次の章で詳しくご説明します。
BtoBにおける「動画マーケティング」のメリット
BtoBではどのような点が動画マーケティングを活用する上でのメリットだと言えるのでしょうか?
以下3つをポイントに詳しく説明します。
- 非対面で多くの情報をわかりやすく伝えられる
- 記憶に残る
- 営業効率化・リソース削減ができる
非対面で多くの情報をわかりやすく伝えられる
コロナ以降、デジタル中心となったBtoBのアプローチにおいて、「動画」を活用するメリットは、Webサイトやメールなど「非対面営業」を通じて、短時間でより多くの情報を分かりやすく伝え、態度変容を促すという点にあります。デジタル上の接点において、「動画」は短い時間で多くの情報をわかりやすく伝えられるという強みを発揮します。
実際に、1分間の動画で、どれほどの情報量を伝えられるものなのでしょうか?アメリカの調査会社であるForrester Research, Inc のDr.James McQuivey氏は1分間で伝えられる動画の価値を、以下のように表現しています。
『1.8 MILLION WORDS:That’s the value of one minute of video, according to Dr. James McQuivey of Forrester Research.(1分間の動画は、180万語の情報量に相当する価値がある)』
180万語を1分間で伝えられるということは、たったの1秒で30000語を伝えられる計算になります。言葉で伝えるには到底不可能な情報量を、対面ならず非対面で伝えられるという点に、動画ならではの大きなメリットを感じられるのではないでしょうか。
動画であれば、BtoB担当者が判断材料として必要とする「定量的なデータ」をグラフやアニメーションにして分かりやすく導入効果を伝えたり、システム・製品の実物を共有しながら伝えるなど、より分かりやすい表現が可能です。また、まだ市場が成熟していない新しいビジネスモデルや商材において、利用のメリットやソリューション内容を分かりやすく伝えるのにも適しています。
記憶に残る
文章中心の記事や資料を読むよりも、動画を視聴した方が「記憶に残りやすい」、という人間の記憶定着率から見たメリットもあります。
アメリカ国立訓練研究所(NTL Institute)による人の学習の定着率についての研究では、「読書」と「動画視聴」で記憶定着率を比較すると動画視聴の方が2倍記憶に残りやすいという結果が出ています。
(出典:Learning Pyramid: A Way To Learn Knowledge)
上の「ラーニングピラミッド」と呼ばれる理論を用いて説明していきます。一番上から二番目に位置する「Reading(リーディング)」は、読書やウェブサイトなどの文字での情報を読み取る環境状態を指し、その場合の記憶定着率は10%の結果です。それに対し、動画視聴にあたる「Audio-Visual(オーディオビジュアル)」の記憶定着率の結果が20%、比較すると2倍の効果が見られることがわかります。
この結果から、BtoBまたはBtoBtoCにおいても商品・サービスの存在を「思い出してもらう」ための施策として高い効果が期待できると言えます。
マーケティングの仕組み作りの第一歩は、販売商品・サービスをまずは「知ってもらう」ことです。BtoB担当者が商材を検討するタイミングで、いち早く、また記憶に残りやすいインパクトのある商品情報を届ける必要があります。
しかし、昨今では、DMやWeb広告、SNSなど情報網が溢れているため、多くの情報量の中で「顧客の心に残る」PR方法を見出すのが難しい担当者も多いのではないでしょうか。動画であれば、文章や静止画だけでは担当者に届きづらい商材情報も、音声やアニメーション効果で「思い出してもらう」インパクトの強いメッセージを伝えることが可能です。
営業効率化・リソース削減ができる
営業人員が足りず、営業業務の生産性に課題を抱えている企業の場合、営業効率化という面で動画を活用する手法もあります。
営業問い合わせは多数獲得できているものの、サービスや商品理解度の低い顧客が多く、商談の効率が悪いという問題を抱えている場合、説明動画で解決することができます。
Webサイト上に説明動画を設置し、動画を視聴後に問合せや資料請求へと誘導します。動画により、多くの情報を短時間で伝え、正しい商品理解を促すことで確度の高い顧客との商談設定が可能です。
また、導入時にオンボーディングを行うものの、同じ説明を長時間にわたって繰り返すため、社員の時間をより有効に活用したい、といった人員のリソース確保対策としても動画を活用できます。
オンボーディング時に人が介在し説明していたところを、動画での説明に変更することで、説明コストの削減が可能です。更に、動画内で操作画面上に強調をつけるなど、わかりやすい工夫を施しながら説明することで顧客満足度の向上も期待できます。
ファネル別!BtoBの動画マーケティング活用事例8選
動画活用の目的別で動画の打ち出し方は多数あります。ここでは、3つのフェーズと8つの種類に分けて、動画事例を交えながら各動画の特徴を解説します。
認知・興味 | 動画広告、バズ動画、YouTubeチャンネル運営 |
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比較検討 | サービス説明動画、商品説明動画、インタビュー動画、ウェビナー動画 |
オンボーディング | マニュアル動画 |
認知・興味:動画広告
動画広告とは、動画ファイル形式(映像・音声)の広告を指します。電車やバス・タクシーなどの交通機関で流れる動画や、テレビCMなどのデジタルサイネージの他、SNSやYouTubeも含めWeb上で流れる動画を指します。
BtoBの動画広告は、主に以下の3つの態度変容を目的として活用されます。
- ①認知・興味関心度の拡大
- ②ブランディング
- ③販売促進
こちらは株式会社DONUTSの「ジョブカン」の動画広告です。勤怠管理などのクラウド型のオフィス支援サービスを企業向けに販売しています。
(引用:株式会社DONUTS:ジョブカンCM「管理部門をDX」篇)
手入力での面倒な管理方法に焦点を当て、その課題解決策をコミカルに伝え、目を引くような印象的な動画に仕上がっています。時事的な「働き方改革関連法」をテーマに、「資料多すぎ篇」「プレゼン篇」などストーリー性のある構成も特徴的な動画です。
この動画は、タクシー内の動画広告としても放映されました。タクシー内での動画広告市場は右肩上がりに伸びており、CCI(CARTA Holdings)の「タクシーサイネージ広告市場規模推計」調査によると2023年には2018年の6倍、75億円にまで成長すると予測されています。
(引用:CCI(CARTA Holdings)/デジタルインファクト「タクシーサイネージ広告市場規模推計」)
タクシーはビジネス利用での移動手段として活用されるケースが多いことから、経営者や会社上層部への効果的なアプローチとして、BtoB、BtoBtoC領域から注目を集めています。
認知・興味:バズ動画
多くの人に共有された・拡散された、という意味合いを持つ「バズる」「バズった」のワード。結果的に「バズり」が発生した動画、のことを俗に「バズ動画」と言います。
SNS上でバズると、情報が拡散され、認知拡大や、大きな利益還元効果があることから、どのようにしてバズらせるかを解析する「バズマーケティング」に力を入れる企業が増え、「バズ動画」の注目が集まっています。
バズる動画の特徴は以下と言われています。
- 短時間
- メッセージは1つ
- どんでん返しや仕掛けがあるインパクトの強い動画
- 広告らしさを感じさせない
- 単純な楽しさや面白さを優先する
特徴を加味して動画制作をしたとしても、必ずバズらせられる訳ではありません。また、捉え方によって炎上してしまうようなコンテンツ作りは、細心の注意が必要でしょう。ではここからは、実際にバズった動画事例をご紹介します。
<グローバルでバズった動画事例①Volvo>
(引用:Volvo Trucks「The Epic Split feat. Van Damme」)
2021年にグローバルで大きな話題を呼んだVolvoトラックのCMです。メインテーマはトラックの安定性ですが、それよりも俳優の華麗な股開きがインパクトがあり単純にカッコ良いと、1カ月強で約6063万回再生されたバズ動画です。
<グローバルでバズった動画事例②Dove>
(引用: Dove JP「リアルビューティー スケッチ」)
この動画はBtoC向けの動画にはなりますが、「あなたは自分が思っているよりも美しい」というメッセージ性の強い動画です。動画から広告らしさを一切感じさせないことも、結果的にバズりが発生した要因の一つかもしれません。
認知・興味:YouTubeチャンネル運営
Think with Googleの調べによると「YouTube」の日本国内の月間利用者数は、2020年9月時点で約6,500万人を超え、企業の動画マーケティング戦略において欠かせないチャネルとなっています。
YouTubeで自社のチャネルを開設し、自社に関わる情報動画を継続的に投稿、チャンネルに動画を集約し集客する仕組みを分析しながら整える、いわゆる「YouTube上のチャンネル運営」を確実に行えば、幅広いユーザーや企業へのPRにつながります。
またYouTubeチャンネル運営を行うことで、企業のコアユーザーの獲得と育成も可能になります。好みのチャンネルを登録できる「チャンネル登録機能」で、チャンネル登録をしたユーザーは配信される動画を見逃さずに視聴することができます。配信するたびに自社商品やサービスに触れてもらう機会が増え、安定的、かつ継続的にコアユーザーを確保することができるのです。
BtoBにおいて有効なYouTubeのコンテンツ例としては、以下のようなものがあります。
- 自社で開催したウェビナーの「アーカイブ動画」
- お客様活用事例の「インタビュー動画」
- 自社商品に関する「サービスや機能の説明動画」
YouTubeは時間規制がないため、時間の長い動画もアップできます。長時間になりやすくホームページに掲載するには憚られるような細かな機能紹介動画やウェビナー動画などを掲載するのも良いでしょう。YouTubeでは「キーワード検索」での流入も見込めるため、潜在層への認知拡大にもつながります。
<BtoB企業のYouTubeチャンネル成功事例:株式会社Faber Company「ミエルカチャンネル」>
(引用:FaberCompany「ミエルカチャンネル」 )
株式会社FaberCompanyが運営している「ミエルカチャンネル」は、企業のWebマーケティング担当者をターゲットに、SEO情報やアクセス解析などの解説動画を発信しています。動画の尺は10分程度とまとまり視聴しやすい動画内容です。更新頻度は1〜2週間の間で定期的にアップされ、チャンネル内のコンテンツが充実、またサイトへのリンクも各所に貼られ、サービスサイトへの誘導も行われています。
YouTubeチャンネルの運営ポイントについては、以下の記事に詳しく記載しています。参考にしてみてください。
関連記事:企業のYouTubeマーケティング3つの手法&チャンネル成功事例5選を解説!
比較検討:サービス説明動画
「サービス紹介動画」とは、無形商材を対象としたサービスの申込増加や利用促進を目的とする動画のことです。企業のサービスに興味関心を抱き、検討段階にある企業をターゲットとして、商品の特徴や利点などをわかりやすく訴求します。
無形商材の中でも、専門性が高く説明が複雑化しやすいサービスを扱っている場合には、サービスのどこを指しているのか、何を見て欲しいのか、を見ている人へのわかりやすい伝達が必要です。
形のないサービスを直感的にわかりやすく伝えるためには、アニメーションの活用も有効。利用シーンや利用イメージ、効果や特徴をアニメーションを駆使して表現し、伝えたいポイントに視聴者の目が集まるよう自然に誘導することができます。
<アニメーションを活用したBtoBサービス説明動画事例:株式会社ペイミー「給与即日払いサービス Payme」>
(引用:Payme「給与即日払いサービス『Payme』サービス紹介動画」)
給与の即日払いサービスを検討中の企業担当者をターゲットに、給与即日払いサービス「Payme」を紹介する動画です。約1分間の動画でテンポよく情報を伝え、視聴者を飽きさせない工夫を施しています。企業の課題と解決策を色や動きで訴求し、視聴者が見るべき視線をアニメーションを使って誘導できます。
比較検討:商品説明動画
「商品説明動画」とは、有形商材サービスを対象に、商品やサービスの魅力を訴求する動画です。端的にわかりやすく説明し、比較検討中の企業の商品に対する理解度を高め、購買行動を促進することを目的としています。
商品動画でどれだけの購買行動を促進できるか、気になる方もいるかもしれません。アメリカとイギリスに拠点を置くアニメーション動画制作会社のWyzowlによる調査で、以下の調査結果が出ています。
- 96%:商品やサービスについて詳しく知るために、商品紹介動画を見た
- 84%:商品動画を見て、買う気になった
- 79%:商品動画を見て、商品の購入を決めた
(引用: Video Marketing Statistics 2021|wyzowl)
こちらはtoC向けの商材ですが、半数以上の人が、商品動画をきっかけに購入しているという結果があります。BtoBに対しても、ある程度の商品説明動画の購買効果は期待できるのではないでしょうか。
<BtoB向けサービスの商品説明動画事例:株式会社スマートドライブ:クラウド車両管理システム「 SmartDrive Fleet」>
(引用:スマートドライブ「3分でわかるSmartDrive Fleet」)
株式会社スマートドライブが提供する「SmartDriveFleet」は、車両を運転する企業をターゲットに、クラウド型の車両管理システムを販売しています。冒頭で、誰に対し、何を解決できる商材かを分かりやすくワンシーンで伝え、またその後に各課題に対するメリットを伝えることで、魅力が簡潔に伝わる動画内容となっています。3分の尺で課題→解決策→問い合わせ誘導とまとまりのある動画構成で、アニメーションを使って視覚的にも見やすいのが特徴的です。
商品説明動画の作り方や事例について詳しくは、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:サービスや商品をPR!「紹介動画」のメリットと作り方・最新トレンドを映像ディレクターが徹底解説!
関連記事:【2022年最新トレンド】サービス紹介動画・商品紹介動画のユニーク事例10選!
比較検討:インタビュー動画
企業が商品やサービスを「認知」し、商品の「比較や検討」へ行動を促すために活用するのが、インタビュー動画です。
他企業の事例をインタビュー動画として掲載し、検討中の企業に視聴してもらうことで、導入前の課題、導入背景、導入後の効果、など比較検討時の情報収集を短時間で実行可能です。比較検討時の訴求コンテンツとして、文章と写真でまとめたインタビュー記事は多くありますが、「動画」であればクライアントの言葉や表情、利用シーンや商品・サービスの詳細をそのまま映し出せるため、よりリアリティが増します。
<インタビュー動画事例:株式会社セールスフォース・ジャパン「お客様事例-製造業界」>
(引用:セールスフォース・ジャパン「【お客様事例-製造業界】お客様の変化と未来を素早く捉えSalesforceと物流の未来を創造」)
営業管理プラットフォームを提供するセールスフォースを導入した、株式会社豊田自動織機様の導入事例インタビュー動画です。Salesforceを導入した経緯や、導入後の営業効果などについて、取締役副社長の佐々木氏が回答する動画の作りになっています。3分間の動画の中で、実際に利用した機能や活用効果がイメージでも伝わり、導入検討者の購入意欲が促進するような仕上がりになっているのではないでしょうか。
Salesforceの導入を検討している、または不安のある担当者からすると、この動画を視聴することで、サービス導入後の想定効果やメリットが具体的にイメージでき、導入前の不安を払拭することができます。実際に利用しているユーザーによるリアルな声をそのまま伝え、商品の信頼性を高められることこそがインタビュー動画の狙いの一つです。
比較検討:ウェビナー動画
コロナウイルスの影響によりオフラインセミナーや展示会が困難となったことで、新規顧客獲得の施策として、ウェビナーにも注目が集まっています。実際にシャノン社が行った「今後注力したいマーケティング施策」調査の結果では、1位がウェビナー施策でした。
ウェビナーは、商品説明、勉強会、座談会、ディスカッションなどを目的に行われますが、それらの様子をレコーディング(録画)し、二次コンテンツとして制作されるのが「ウェビナー動画」です。
ウェビナー動画は、自社サイト上やYouTube上、SNS広告などに掲載し、比較検討段階にいる企業に対して興味関心度を引き上げるツールとして活用ができます。また、既存顧客に対しても、メール等で送信し、サービス・商品に対する理解をさらに深め、アップセル・クロスセルにつなげる効果も期待できます。
弊社(MIL株式会社)では、サイト訪問者や既存顧客とのコミュニケーションの一つとして、セミナー後の動画をアーカイブ配信しています。視聴者が動画内をタップ・クリックできる「インタラクティブ動画」として提供しており、目次から見たい項目を選んで視聴ができたり、関連する動画やWebサイトに直接遷移できる仕組みになっています。
(参考:MIL株式会社「セミナー情報」)
オンボーディング:マニュアル動画
「マニュアル動画」とは、サービスや商品を購入または導入した企業に対し、機能や操作方法を説明する動画です。BtoBでは一般的には、「オンボーディング」と呼ばれる、顧客がサービスを使い始めてから、使用方法や機能を理解して自走できるまでの期間に活用します。
マニュアル動画のメリットの一つに、BtoB担当者のリソース削減効果が考えられます。オンボーディング時は企業内で実践的な研修を行うことで利用担当者の理解を深められますが、進めるには時間と場所の確保が必要です。マニュアル動画を準備し、自己学習を進められる環境を整えられれば、研修場所や教える企業担当者のリソースを確保する必要はありませんので、オンボーディングのプロセスを効率化できます。
マニュアル動画のもう一つのメリットは、自社の製品や商品の正しい使い方をわかりやすく説明し、顧客にファンになってもらうことです。自社サービスのコアなファンを形成し、最終的には別商品やサービスの購入など売上増加が期待できます。
売上増加を実現するには、まずは現在利用中の商品を継続的に利用し続け、満足してもらう必要があります。そのためのサポートツールの一つとしてマニュアル動画を活用し、継続的な顧客接点を作る企業が増えています。
マニュアル動画の事例:zoom「Zoomビデオウェビナー」
(引用:zoom「Zoomビデオウェビナー」)
テレビ会議ツールとして世界的に有名な「zoom」。Zoomの利用シーンや機能、使い方など、分かりやすく画面上で伝えています。声でのナレーションと、特徴的な点は字幕を入れて説明することで、より理解度を高められるマニュアル動画になっています。
<マニュアル動画の事例:株式会社セールスフォース・ジャパン:「Zoomビデオウェビナー」>
(引用:株式会社セールスフォース・ジャパン「Salesforce-デモ動画」)
クラウドアプリやプラットフォームを提供する株式会社セールスフォース・ジャパンでは、マニュアル動画を多数制作し、YouTube上で公開しています。使い方や機能の紹介、活用方法などを、1-2分程度の動画に簡潔に集約。サービスや機能に対し不明点のあるユーザーも、チャンネルの一覧ページとタイトルを見て動画を視聴すれば全て解決できる、ユーザーメリットの高い仕組みとなっています。
動画マニュアルの事例や作り方について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:動画マニュアルとは?メリット、作り方、事例、おすすめツール3選をまとめてご紹介!
BtoBの動画マーケティングで効果を出す3つのポイント
動画マーケティングを実施している企業の60%が「効果を実感した」という結果が「コンテンツマーケティング調査レポート」で発表されています。BtoBにおいても以下3つのポイントを実行することで、効果が期待できます。
- 動画の利用目的・ターゲット・KPI・配信媒体を明確にする
- 「視聴離脱を減らす」ことを意識して構成する
- 視聴データを元に、分析・改善する
それぞれのポイントについて、詳しく説明していきます。
動画の利用目的・ターゲット・KPI・配信媒体を明確にする
1つ目のポイントは、動画マーケティングの企画時に「利用目的」「ターゲット」「KPI」「配信媒体」を明確にすることです。
◆利用目的
利用目的が定まらなければ、動画のテーマ、訴求内容のズレが生じ、伝えるべきメッセージを伝達できません。どのような態度変容を目的としているのか明確にしましょう。そうすることで自ずと動画コンセプトのイメージも広がります。
◆ターゲット
どのような企業・担当者に動画を訴求したいか、企業や担当者のペルソナを設計しましょう。企業規模、設立年数、担当者、所属部署、組織課題など……。具体的にターゲットがイメージできるほど、細部に拘わった動画訴求ができます。また、制作時の社内の会話も、ペルソナを軸に共通認識で進行するため効率的です。
関連記事:カスタマージャーニーに必須の「ペルソナ」の作り方とポイントを徹底解説!
◆KPI
動画を視聴した後に起こしてほしいアクションは何か、その必要なアクションを数値化しKPI設計することで、動画の効果予測を立てられるようになります。一般的に設定すべきKPIは以下の5点です。業界や業種により定める指標が異なる場合もありますが、着目すべきKPIとして以下の項目を参考にすると良いでしょう。
- 視聴完了率
- 再生時間
- クリック数
- コンバージョン率
- インプレッション数
動画マーケティングの主要指標については、以下の記事で詳しく説明しています。参考にしてみてください。
関連記事:動画マーケティングの主要指標&動画分析ツールのおすすめ7選を解説!
◆配信媒体
訴求したいターゲットが集まる媒体の選択も重要です。配信メディアにも特徴がありますので、そのメディアの特徴に合わせて、動画制作の方向性も変わる可能性があります。主なソーシャルメディアの媒体特徴・利用率を確認したい場合は以下の記事を参考にしてください。
関連記事:動画を投稿できるSNSの特徴とは?動画の長さや動画広告の種類、保存方法を徹底解説
「視聴離脱を減らす」ことを意識して構成する
2つ目に、視聴離脱を減らすことを意識して動画を構成していきましょう。
アメリカのマーケティング会社「Briggsby」CEOのJustin Briggs氏は「YouTubeでは20秒間で5割のユーザーが離脱する」と伝えています。
動画はユーザーに応じたコンテンツの出し分けができないため、最初の20秒間はどのユーザーに対しても同じ内容が訴求され、興味がない時点で離脱してしまいます。離脱防止のために、最初の20秒間で飽きない構成にすることが重要です。
離脱を避けるポイントは、主に以下3つです。
- 印象のあるオープニングを展開
- 短時間でまとめて緩急をつける
- 視聴者が見たい項目を自身で選択できる「インタラクティブ動画」を活用
特に3つ目の視聴者と双方向のコミュニケーションを実現できる「インタラクティブ動画」の活用は、BtoBの活用において有効的です。一方向的な動画は視聴者が飽きてしまい、早期に離脱されるデメリットがあるのに対し、インタラクティブ動画では視聴者自身が見たい項目を選択し、その選択に合わせた情報提供が可能です。顧客が知りたい情報がすぐに再生されるため、離脱防止につながります。
視聴データを元に、分析・改善する
3つ目に、データ分析と改善を意識しましょう。冒頭にもお伝えしたとおり、動画マーケティングを成功させるには、分析から改善までのサイクルが重要です。
PDCAサイクルを迅速に回すために、視聴データ取得に必要な分析ツール選びも慎重に行いましょう。たとえば、YouTubeの動画の場合は「YouTubeアナリティクス」を使い、YouTube以外の動画配信プラットフォームを活用する場合は、それぞれのプラットフォームの分析機能を利用します。
データを取得しただけでは意味を成しません。定期観測してクリエイティブを改善するためには、管理・運用体制を整える必要があります。自社でリソースが無い場合、動画マーケティングの専門企業に任せるという手段も検討しましょう。
まとめ
本記事でお伝えしたように、BtoB業界においても、動画で商品やサービスを訴求する効果は絶大で、各フェーズでの実行メリットも多々あります。デジタル上のコミュニケーションにおいて、動画マーケティングはもはや不可欠になってきていると言えるでしょう。動画活用をこれから検討、または検討中の企業様は、ぜひ本記事を参考に施策検討を進めてみてください。
執筆者
黒谷 純子
MIL株式会社 マーケティング
大学卒業後、編集プロダクション等を経て、人材サービス企業のマーケティング職に従事。2021年3月よりMIL株式会社に入社し、現在は自社サイトやMILblogの企画・ディレクション・執筆等を担当している。
Twitter : https://twitter.com/MIL29292841