BtoB企業にとって、ウェビナーマーケティングは重要なリード獲得・ナーチャリングチャネルとなっています。ウェビナー配信プラットフォームを提供するON24が、同プラットフォームのユーザーを対象にしたグローバル調査でも、95%が「ウェビナーは重要なマーケティングツールである」と回答しています。
ただし、ウェビナ―から成果を得るには、単に開催するだけではなく、適切なターゲット設定やテーマ企画、開催後の分析とフォローアップなどが不可欠です。
本記事では、ウェビナーマーケティングのメリット・デメリットや実施手順、成功に必要な2つの視点を解説します。
目次
ウェビナーマーケティングとは?
ウェビナーとは、オンライン上で開催するセミナーです。企業が「ウェビナー」を起点として新規リード獲得やナーチャリング、クオリフィケーションを行う一連の流れをウェビナーマーケティングと言います。
ウェビナーマーケティングにおいては戦略の立案から企画、集客、ウェビナー開催、分析、開催後のコミュニケーションなど様々な施策を組み合わせ、展開する必要があります。例えば、リード獲得を目的にするのならば、潜在層向けにノウハウ紹介のウェビナーを企画し、Web広告で集客、開催後はメルマガでナーチャリングをするなど。
そして、ウェビナーで得たデータは分析し、データに基づいたアプローチやウェビナーの改善を図り、参加者との関係を構築して、態度変容を促すことが重要です。
関連記事:ウェビナー(Webinar)とは?メリット・デメリットと開催手順をわかりやすく紹介!
ウェビナーマーケティングが注目される背景
新型コロナウイルス感染症の影響で、BtoB企業にとって重要なリード獲得チャネルであった「オフラインセミナー」や「展示会」などの対面型施策が困難になり、新たに注目を集めたのがウェビナーです。
株式会社シャノンの調査によれば、企業で製品やサービスの情報収集及び選定に関与する担当者の5割以上が「ウェビナーに自発的に参加している」と回答。また、2022年のContent Marketing Instituteの調査では、BtoBマーケターが過去1年でもっとも成果につながった手法としてウェビナーやバーチャルイベントを挙げています。
出典「ウェビナーが定着した一方で、セミナーを希望する人は3割以上。アンケートからわかった、顧客が望むチャネルの多様化とは」
ウェビナーは、オフラインのセミナーよりも低コストで開催し、多くの集客に期待できるため、BtoB企業から注目を集めているといえます。ここからは、ウェビナーマーケティングに取り組むメリットを見ていきましょう。
BtoB企業がウェビナーマーケティングに取り組むメリット
BtoB企業がウェビナーマーケティングに取り組むメリットは、以下の通りです。
- 多くのリード獲得を見込める
- 質の高いリードの醸成ができる
- 効果的なリードクオリフィケーションができる
ここからは、各メリットの詳細を解説します。
多くのリード獲得を見込める
ウェビナーはインターネット接続さえあれば、自宅やオフィスなどから参加可能です。従来のセミナーや展示会などのオフラインイベントよりも参加ハードルが下がるため、一度に集客できる人数が多くなる傾向にあります。ON24の調査によれば、76%が「ウェビナーではより多くのリードにリーチできる」と回答。
また、距離を問わず国内外から広く集客できるため、今まで難しかった層へのアプローチも可能です。
質の高いリードの醸成ができる
ナーチャリング(顧客育成)では、リードに有益な情報を提供して信頼関係を構築することが重要です。WACUL株式会社の調査によれば、満足度の高いウェビナーコンテンツとして多くの票を集めたのが「業務に役立つ独自のノウハウを紹介する」「ここでしか知れない貴重な情報だった」と判明。この調査が示すように、ウェビナーはブログ記事やSNSよりも、質の高い情報やブランドならではの知見を提供できるため、効果的なリードナーチャリングを実施できます。
Demand Generationによれば、マーケティング担当者の45%が「ウェビナーは質の高いリードの集客チャネル」と回答していることからも、リードナーチャリングに効果的な施策だといえます。
関連記事:ウェビナー開催で、リード獲得・育成効果を最大化するポイントとは?成功事例とともに解説!
効果的なリードクオリフィケーションができる
ウェビナーで獲得したリードのうち、すぐに問い合わせや商談を検討するリードの数は極めて少ないです。
Gleanster Researchの調査では、営業がアプローチするべきリードは全体の25%しかいないとのこと。リードクオリフィケーション(リードの選別)をしなければ、営業の生産性が低下するだけではなく、営業が迅速に確度の高いリードにアプローチできなくなるため、商談機会の損失も生じるでしょう。
ウェビナーを開催すれば、参加者の属性情報やチャット履歴、アンケート内容など細かな情報を取得し、参加者の興味関心を把握できます。例えば、参加者の役職が部長であり、「具体的な製品の説明を希望しますか」という項目にチェックがついているなどアンケート内容が好意的ならば、商談化の確度が高いと判断して、インサイドセールスが迅速にアプローチできます。
ウェビナーで取得したデータを用いて、効果的にクオリフィケーションをし、確度の高いリードはすぐに営業やインサイドセールスに引き渡し、そうでない顧客にはナーチャリングを行いましょう。
BtoB企業がウェビナーマーケティングに取り組むデメリット
ウェビナーマーケティングには、下記2つのデメリットがあります。
- 集客の仕組みを確立しなければ、参加者が集まらない
- 参加者との一体感を醸成しにくい
以下では、各デメリットの詳細を解説します。
集客の仕組みを確立しなければ、参加者が集まらない
ウェビナーでリード獲得やナーチャリングなどの目標を達成するためには、集客の仕組みを確立し、多くの参加者を集める必要があります。特に、リード獲得が目的の場合、Web広告やウェビナーサイトなど様々な集客チャネルを活用しなければいけません。WACUL株式会社の調査によると、ウェビナー参加者の大半は新規顧客ではないと判明しました。
ウェビナー申込者の参加率は20%前後のため、適切な集客をして、多くの申込者を集める必要があります。Web広告の出稿やメルマガ配信、他社との共催、既存顧客への電話・ダイレクトメールなどの集客の仕組みも確立しましょう。
参加者との一体感を醸成しにくい
基本的にウェビナー参加者はカメラをオフにして視聴するため、参加者との一体感を醸成しにくいデメリットがあります。このデメリットを解決するため、リアルタイムの投票やQ&A、参加者へのフィードバック、SNSへの投稿の呼びかけなどをしましょう。
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ウェビナーマーケティングの7ステップと成功のポイント
ウェビナーマーケティングを進める手順は以下の通りです。
- 1.目的の明確化とターゲット設定
- 2.企画立案
- 3.リードの事前定義
- 4.アンケート作成
- 5.集客
- 6.フォローアップ
- 7.データ分析と次回ウェビナーの企画
ここからは、各ステップの詳細を解説します。
1.目的の明確化とターゲット設計
まずはウェビナーを開催する目的を明確にし、ターゲットや企画内容を定めましょう。BtoB企業のウェビナーマーケティングの目的は、主に「リード獲得」「ナーチャリング」「クオリフィケーション」の3種類に分かれます。下記画像が示すように、目的に合った配信手法を選定しなければいけません。
ターゲット設計においては、ペルソナとカスタマージャーニーの作成が有効です。ペルソナの課題や悩みは購買フェーズにおいて異なります。そこでカスタマージャーニーマップを作成すれば、認知から購買に至るまでの各段階で、適切なコンテンツを届けられるようになります。
関連記事:
カスタマージャーニーに必須の「ペルソナ」の作り方とポイントを徹底解説!
【初心者向け】カスタマージャーニーマップの作り方を7ステップでわかりやすく紹介!
2.企画立案
企画立案で考えるべき重要項目は以下の通りです。
- 配信テーマ
- 開催日時
- ウェビナーの時間(尺)
ここからは、各項目について簡単に解説します。
◆配信テーマ
ターゲットの課題や悩みを解決するテーマを立案しましょう。WACUL株式会社の調査によれば、BtoB企業のオンラインイベントの参加者の9割以上が「業務に役立つノウハウや事例を知るために参加した」と回答。この調査結果から、課題の解決につながる配信テーマの立案が必要だと分かります。
◆開催日時
ターゲットの役職や所属業界などを考慮して、多くの方が参加できる日時を設定しましょう。ON24の調査によれば、火曜日・水曜日・木曜日の参加率は20%を超える一方、それ以外の曜日の参加率は10%以下となります。この調査結果を参考にしつつ、実際のウェビナーの参加率も見ながら、自社ターゲットに最適な開催日時を見極めましょう。
◆ウェビナーの時間(尺)
参加者の多くが片手間にウェビナーを視聴することを踏まえれば、ウェビナーの尺は1時間以内に抑えるのが理想です。実際に弊社がウェビナーを開催する際も、視聴者のエンゲージメントを高く保つために、1時間以内に収まる内容で企画しています。最近では、ランチタイムに30分程度など短尺のウェビナーを開催する企業も増えてきています。自社ターゲットの行動パターンなども踏まえながら、適切な時間を検討しましょう。
3.リードの事前定義
マーケティングだけでなく、インサイドセールスなど社内の各部門が円滑に連携することで、ウェビナーで獲得したリードの熱量を保ちながら、商談へと導けます。そのためにも、ウェビナ―開催前には、事前にリードの定義をし、インサイドセールスのアプローチタイミングを明確にしましょう。
例えば、ウェビナー後に料金ページを見たリードはSQL(営業に引き渡すリード)としてインサイドセールスが迅速に架電をする、ウェビナー後に「商談希望」と回答したリードはSQL(営業に引き渡すリード)として営業がアプローチするなどです。リードの定義をしておくことで、部署間の連携がスムーズになります。
4.アンケート作成
ウェビナー参加者の興味関心や購買意欲を測定する有効な方法が「アンケート」です。アンケートの主な項目は下記のとおり。
- 参加者情報
- ウェビナーを知ったきっかけ
- 参加の理由、目的
- ウェビナーに対する評価、要望、感想、今後の参加意向
- 商品・サービスへの関心度、質問
- プライバシーポリシー
インサイドセールスや営業部門と話し合い、リードの興味関心や目的を測定できるアンケート設計をしましょう。そうすることで、リードの温度感や課題を把握し、効果的な架電やナーチャリングができます。また、アンケート結果からウェビナーの満足度を測定して、次のウェビナーにつなげることも可能です。
関連記事:ウェビナーアンケートの作り方&項目例を解説!回答率を高める5つのコツも合わせて紹介
5.集客
新規リード獲得が目的の場合、多くの潜在顧客の参加を促すためにも、広告やウェビナー集客サイトなどでの集客は欠かせません。一方、既存リードのナーチャリング・クオリフィケーションが目的ならば、メルマガやSNSなどのオウンドメディアを中心とした集客施策を実施しましょう。
また、GoToWebinarの調査では、ウェビナーの4週間前より集客に取り組めば、登録率が平均して12%向上するとのこと。
出典「THE BIG BOOK OF WEBINAR STATS」
さらに、登録の59%は1週間前、17%は当日に行われていることも判明しています。1カ月前から当日まで根気強く集客することで、多くのユーザーの参加を促せます。
関連記事:ウェビナーの集客方法5選!集客力と商談化率を高めるポイントを合わせてご紹介
6.フォローアップ
ウェビナーマーケティングで特に重要なのが「フォローアップ」です。ウェビナー終了後にはアンケート調査を実施し、満足度や抱えている課題、相談会への申し込み意向などを聞きましょう。
アンケート内容や視聴履歴などを基にリードの確度を測定し、クオリフィケーションやナーチャリングへとつなげます。
7.データ分析と次回ウェビナーの企画
ウェビナーマーケティングでは、分析と改善サイクルを回すことが重要です。集客状況や参加率、満足度、商談化率などのデータとアンケート結果を分析し、企画からアフターフォローにおける各段階の改善点を特定しましょう。改善点を次回のウェビナーに反映することで、ターゲットの満足度を高めるウェビナーを企画できます。
ウェビナーマーケティングの成功事例 | 株式会社スタディスト
株式会社スタディストは、BtoB向けのクラウドサービスの開発とコンサルティングサービスを提供する企業です。ライブ配信を中心にウェビナーを開催していたものの、当日に参加できないユーザーにもアプローチするため、アーカイブ動画の配信を決定します。
ウェビナーのアーカイブ配信に取り組むにあたり、リード獲得だけではなく、ナーチャリングとクオリフィケーションも実施したいと考え、動画内に自由度の高いCTAの設置や既存のSFA・MAツールとも連携できる「インタラクティブ動画マーケティングMIL」を導入しました。
まずはリード獲得の施策をご紹介します。同社はライブ配信の録画を編集し、MILのプラットフォーム上でインタラクティブ要素を追加しました。右側のメニューに「資料請求」や「オンライン相談」などのCTAを表示することで、視聴中にリードの興味関心が高まった段階で、いつでも行動喚起できるようになりました。
ナーチャリングとクオリフィケーション施策に関しては、MAツール「Pardot」を通して個別にIDを付与したメルマガを既存リードに配信します。リードが動画を視聴すると、視聴時間やタップ個所などの細かな視聴データがSFAツール「Salesforce」に連携される仕組みです。
これによりインサイドセールスは日々の業務で活用するSalesforce上で、各リードの視聴データを確認し、「75%以上視聴した」など視聴時間の長さや「CTAを3回以上タップした」などのアクション状況から確度の高いリードを特定して、迅速にアプローチし、商談化につなげられるようになりました。
関連記事:ウェビナーのインタラクティブ動画化でBtoBのリード獲得・育成・商談化を実現!
今後のウェビナーマーケティングに必要になる2つの視点
多くの企業がウェビナーに取り組む今、競合と同じようにウェビナーを開催しても成果を出すのは困難です。以下2つの視点を意識しましょう。
- お客様ファーストの視聴環境の整備
- データ活用による最適なコミュニケーション
ここからは、各ポイントを解説します。
視聴者ファーストの視聴環境の整備
ウェビナーの「ライブ配信」のみでは、業務の関係で当日参加できないユーザーを取りこぼすことになります。GoToWebinarの調査では、平日の平均参加率は19.4%と判明しており、申し込みユーザーの大半は当日参加しないといえます。
視聴者ファーストでアーカイブ動画を配信すれば、当日参加できないユーザーにも視聴してもらえるようになります。実際にON24の調査によると、アーカイブ配信だけを視聴するユーザーは31%もいるとのこと。
先ほどご紹介した株式会社スタディストの例のように、アーカイブ配信をすることで、視聴者の好きな日時や速度で視聴してもらえるため、集客の最大化を期待できます。
関連記事:ウェビナーアーカイブの配信方法&成果を出すポイントを解説!動画でリード獲得やナーチャリングを促進
データ活用による最適なコミュニケーション
ウェビナーマーケティングでは、ウェビナーで得たデータからリードの興味関心を把握し、一人ひとりに適切なアプローチをするのが基本です。株式会社スタディスト事例では、インタラクティブ動画プラットフォームとMAツール・SFAツールを連携。アーカイブ動画の視聴データから確度の高いリードを特定することで、迅速にインサイドセールスへ引き渡す仕組みを構築していました。
SFAツール・MAツールとウェビナ―を連携する強みは、視聴した内容だけではなく、視聴後の行動まで追跡できることです。
例えば、データでは最後まで視聴されていたものの、実際は「ながら見」をしている可能性は高くあります。ツールと連携させることで、クリックなどのアクションから視聴中の行動および視聴後の行動まで追跡できるため、高精度でリードの確度の測定が可能です。
ウェビナーを実施する際には、アンケート結果や視聴データを収集できるウェビナーツール・配信プラットフォームを選び、最適なコミュニケーションを実施するようにしましょう。
関連記事:【2023年】ウェビナーツール・プラットフォーム7選を無料から有料まで徹底比較!比較表つき
まとめ
ウェビナーマーケティングとは、ウェビナーを活用して、リード獲得からナーチャリング・クオリフィケーションまでの一連の流れを指します。
ウェビナーマーケティングで成果を出すためには、ターゲット設定や課題に合わせたテーマ立案など考慮するポイントは多々ありますが、特に重要となるのは、の「ウェビナー開催後のフォローアップ」です。ウェビナー後のアンケートやアーカイブ配信などを利用して、データをもとに分析しましょう。リードひとり一人に適したアプローチをして、成果へとつながるウェビナーマーケティングの展開、およびデータ分析による改善点の特定と次回ウェビナー企画への反映をしていただければと思います。
執筆者
瀧口 愛
MIL株式会社 マーケティング
Web制作会社でサイト構築に従事後、MIL株式会社へ入社し、マーケティングチームに所属。ウェビナーや展示会実施の基盤を構築し、毎月のウェビナーやオフラインイベントの企画・運営全般を担当している。その他、メルマガ配信やマーケ全体の施策効果分析など、フィールドマーケティング領域全般を担う。