【2023年】動画マーケティングの7大トレンド&企業の活用法を解説

【2022年最新】動画マーケティングの7大トレンド&企業の活用法を解説

スマートフォンの普及や5G環境の整備に伴い、個人のデバイスでの動画視聴が日常化しつつあります。スマートフォンからの動画視聴は2014年から2019年の5年間で約4倍に成長。2020年以降は新型コロナウイルスの影響もあり、さらに加速していると予測できます。このような中、商品・サービスの魅力を分かりやすく端的に伝えられる手段として「動画マーケティング」に取り組む企業が増加しています。

一方で、動画関連の市場は、技術の発展により日進月歩でトレンドが変化しているマーケットであるのもまた事実。当記事では、国内外における動画マーケティングのトレンドについて、各社の取り組み事例を交えながら分かりやすく紹介します。

「既に動画を活用しているけれどもなかなか成果が出ない……」「商材が複雑で文章だけのコンテンツでは、魅力をうまく伝え切れていない……」と感じている企業様は、ぜひ今後の参考にしてください。
動画マーケティング入門ガイド

「動画マーケティング」とは?

動画マーケティングとは、製品サービスをプロモーションするために動画を用いるマーケティング施策を指し、ビデオ広告やライブビデオ、スポンサードビデオ、テレビなどが含まれます。動画は「複数の五感」に訴えかけることが可能で、一般的には、テキストなどの「読む」、あるいはオーディオなどの「聴く」タイプのコンテンツよりも短時間で理解でき、記憶に残りやすいと言われています。

実際に、SuperMagazine株式会社が公開しているレポートによると「15秒間の動画1本は静止画約450枚分にも相当する」とのことです。
15秒間の動画1本は静止画約450枚分にも相当する

さらに、メラビアンの法則と呼ばれる心理法則もあります。これは米心理学者Albert Mehrabian(以下、メラビアン氏)によって発表された説で、「3Vの法則」「7-38-55ルール」とも呼ばれています。メラビアン氏によると、人間が「言語」「聴覚」「視覚」から受け取る情報量の割合は均一ではなく、以下のように異なるとのこと。

メラビアンの法則

動画を活用すれば、上記の「言語」「聴覚」「視覚」のすべてに訴えかけることが可能です。つまり、動画媒体は情報をわかりやすく伝える手段として優れており、複雑な製品サービスなどを潜在見込み客に知ってもらうマーケティング担当者にとって、非常に有効なコンテンツ媒体ということができます。

関連記事:【2022年】動画マーケティングとは?メリット・手法・事例から最新トレンドまで徹底解説!

今後も、動画マーケティング市場は引き続き大きく成長

近年、動画マーケティングの市場規模は拡大傾向にあります。下のグラフから分かるように、2022年の動画広告市場は、昨対比133.2%の5,601億円に到達し、さらに2023年には7,209億円、2026年には1兆2,451億円に達すると予想されています。広告商品別の内訳では、昨年に引き続き、大手動画配信サービスにおけるインストリーム動画広告の需要が大きく増加し、市場全体の成長をけん引しました。

近年ショート動画が若年層ユーザーを中心に大きな支持を得ており、その視聴時間が増加しています。中でもスマートフォン向け動画広告需要は前年対比132.7%の4,621億円にのぼり、動画広告需要全体の83%を占める見込みです。また、コネクテッドテレビ向け動画広告の需要も急激に高まり、昨年対比157.0%となる540億円となりました。

引用:サイバーエージェント「2022年国内動画広告の市場調査」

さらに、矢野経済研究所の発表に見られる別のデータ(下記参照)では、動画コンテンツビジネスそのものの成長度合いも見てとれます。
矢野経済研究所「動画コンテンツビジネスに関する調査を実施(2022年)
(引用:矢野経済研究所「動画コンテンツビジネスに関する調査を実施(2022年)」

このように動画関連の市場が成長している背景には「スマートフォンの普及」「5Gに代表される通信の高速化」に加え、コロナ禍による「動画活用の機会の増加」が挙げられます。

2010年代に急速に普及したスマートフォンは、通勤・通学中やベッド上、バスルームなど「場所を問わない」動画視聴を可能にしました。この流れは、2020年に5Gが始まり、各キャリアが大容量プランを展開し始めたことで、さらに加速しています。加えて、コロナ禍によりお家時間で動画を楽しむ文化が広まり、消費行動の急速なデジタルシフトに伴い、従来のマス広告からデジタル広告へと移行する企業が増加したことも、動画関連市場の成長要因として考えられるでしょう。

デジタルにおける新しい顧客接点の創出手段の1つとして、動画を活用する企業が増えているのは必然の流れといえます。

【2023年最新】海外・動画マーケティングの2大トレンド

では、動画マーケティングの活用熱が高まる中、どのようなトレンドが生まれているのでしょうか?以下では「グローバル規模での動画マーケティングトレンド」を2点ご紹介します。

  • トレンド1:ショート動画(短尺動画)
  • トレンド2:ライブコマース

トレンド1:ショート動画(短尺動画)

「ショート動画」とは、YouTubeやInstagramなどの各プラットフォームに搭載されている機能の1つ。長くても60秒から90秒程度の短尺の動画であり、以下の点が特徴的です。

  • 動画の尺は「15秒〜90秒/本」程度
  • 動画はスマートフォンの画面に「縦向きフルサイズ」で再生される
  • 視聴者層を広げやすいため、動画マーケティングの「認知拡大」のフェーズで有効
  • 制作コストが低いため数を打ちやすい
  • 特に若年層に好まれる

プラットフォームごとに違いはあるものの、ショート動画は「幅広い世代にアプローチできる」「パーソナライズが表示が可能」など共通した特徴があり、企業としても自社のマーケティング施策で活用する意義は大いにあるでしょう。

特に潜在層への偶発的なアプローチが期待できるため、認知フェーズでの活用に向いています。ショート動画は日本でも多くの視聴者に視聴されており、特に若い世代に親しまれています。若年層リサーチ結果を発信する「TesTee Lab」の調査によると、調査対象の中学生で91.2%、高校生で88.6%、大学生で81.0%がショート動画を「観たことがある」と回答しました。

SNSのショート動画として、代表的なものは以下の3つです。

YouTubeショート Instagramリール TikTok
時間:最大60秒 時間:最大90秒 時間:15秒〜10分
ユーザー数:約6,700万人 ユーザー数:約3,300万人 ユーザー数:約1,690万人
BGM提供:あり BGM提供:あり BGM提供:あり

<YouTubeショート>

国内外においてYouTubeショートを視聴している視聴者数は、月間15億人にものぼると発表されました(2022年6月時点)。 YouTube アプリに実装されているショートカメラ機能を用いれば、誰でも制作可能。複数の店舗を展開している企業の各スタッフが、サービスや商品を紹介するために投稿するなど、企業の認知拡大の手段としても有意義な選択肢です。

YouTubeショートを活用している企業例として、世界最大の家具量販のコングロマリットであるIKEAの例が挙げられます。
YouTube「IKEA-España」
(引用:YouTube「IKEA España」

各国のIKEAで公式チャンネルを運用しており、自社商品を魅力的に紹介するショート動画をいくつも公開しています。IKEAには多くのアイテムがあり、デザイン性の優れた商品が多く目に留まりやすいため、短時間でさまざまな商品を紹介できるショート動画は非常に適していると言えるでしょう。

YouTubeショートの活用について詳しくは、以下の記事でもご紹介しています。
関連記事:【2022年最新】YouTubeショートとは?作り方や投稿方法、活用のメリットを解説

<Instagramリール>

Instagramリールとは、米国時間2020年8月5日に実装された機能で、現在は最長90秒の縦動画を作成・投稿・発見できます。YouTubeは動画視聴が前提であるのに対し、Instagramはフォロワー同士の投稿を楽しむ媒体。YouTubeショートとはまた異なるテイストの動画が求められると考えられます。
Instagramリール広告
(引用:Meta「Instagram、リール広告の提供開始を発表」

また米国時間2021年6月17日より提供され始めたリール広告は、ユーザーが投稿したリール動画と同じように広告が表示されるので、広告と感じさせずに、認知向上を図ることができます。また一般ユーザーがコメントやいいね、保存、シェアができる仕様ですので、企業が見込み顧客とのリレーション(関係性)を深めるのにも役立つでしょう。

<TikTok>

TikTokについては「ショート動画特化型のSNS」ともいえ、一般ユーザーによる動画の投稿や相互コミュニケーションが活発に行われていますが、TikTokユーザーに向けた企業アカウントの利用もなされています。2022年現在、TikTokのユーザーは18歳から24歳が最大のシェアを占めていますので、特に若い世代への認知拡大やブランディングとして、アプローチしたい場合に有効です。

このように気軽に視聴でき、通常の動画以上にユーザーとの接点構築をしやすいショート動画は、グローバル規模でも注目をされています。ショート動画を通じて潜在層への認知を高め、興味を促進する機会が増えれば、コンバージョン向上も期待できるでしょう。

トレンド2:ライブコマース

ライブコマースとは、「Live = 実演」「Commerce = 取引・決済」を合わせた用語。動画のライブ配信を行いつつ、見込み顧客と直接コミュニケーションを図り、自社商品やサービスの成約を促すマーケティング手法であり、次のような点が特徴です。

  • コメントにより視聴者と双方向のコミュニケーションを図れる
  • 視聴者は詳しい商品説明を受けられる
  • 通常のECと比べ、視聴者が商品を購入する比率は高い

ライブコマースは海外市場においても盛んに活用されており、特に中国の市場規模は大きく成長しています。ジェトロ(日本貿易振興機構)によると、2025年にはライブコマースのGMVは6兆4,172億元、EC小売額に占める割合は23.9%に達すると予測されています。

(引用:ジェトロ「新たなEC手法として存在感を高めるライブコマース」

一方で、株式会社Mofflyが実施した「ライブコマース利用実態調査2021」によると、日本におけるライブコマースの認知度は24%と依然として認知度は低い状況。しかし、2018年からは3%と僅かながらも上昇していますので、中国市場での成長度合いも踏まえると、今後は国内でもライブコマースの需要は増えていく可能性は大いにあるでしょう。

ライブコマースは配信側はリアルタイムで視聴者とやり取りできるため、商品購買や来店を促進できます。株式会社ジャストシステムが調査を実施した「Eコマース&アプリコマース月次定点調査 (2019年9月度)」では、調査対象のライブコマース視聴者の5割が商品を購入したと発表されました。ライブコマースはリアルタイムで視聴者に商品詳細を説明したり、疑問に答えたりすることで理解・購買促進につながるのが特徴。そのため、特に有形商材を扱う企業のマーケティング手段として親和性が高い手法です。
資生堂ライブコマース
(引用:資生堂

ライブコマースに注力している企業として、化粧品の日本国内シェア第1位を誇る、株式会社資生堂が挙げられます。資生堂は、かねてより中国市場でライブコマースを活用しており、その成功を元に日本でもライブコマースを展開。

日本のライブコマースにおいては、ビューティーコンサルタントや研究員による商品特徴や使用方法の紹介が中心。視聴者からの寄せられた質問にリアルタイムで回答し、化粧品のテクスチャーも見せながらコミュニケーションを図ることで、商品購入へとつなげています。ライブコマースの動画は、質疑応答のコメントまで含めて「アーカイブ動画」としてサイトに掲載しており、後から視聴したユーザーの購買促進にも役立てています。

【2023年最新】日本国内・動画マーケティングの5大トレンド

ここからは「日本国内における動画マーケティングのトレンド」として、5点をご紹介します。

  • 疑似体験動画(VR動画・AR動画・360度動画)
  • 顧客起点のインタラクティブ動画
  • 企業のYouTubeチャンネル
  • BtoBマーケティングでの活用
  • 視聴データの利活用

注目すべきは、ただ視聴者が受動的に動画を見るのではなく「疑似体験」「シェア」「動画からの直接購入」「動画上でコミュニケーション」といった、視聴者側のアクションを促す動画の活用が増えていること。通常の動画の弱点である視聴者の「離脱」を防ぐ上で、有用な手段といえるでしょう。また近年では、BtoB領域での活用、視聴データの利活用など、新しい領域での活用も進んでいます。以下では、それぞれについて詳しく解説していきます。

トレンド1:疑似体験動画(VR動画・AR動画・360度動画)

日本では、疑似体験動画の活用機会も増加しています。疑似体験動画とは、視聴者が再生途中の画面をあらゆる角度から閲覧できるタイプの動画で「まるでそこにいるかのような没入感」を得ることが可能。おもに以下のような特徴があります。

  • 視聴者は自分の見たい視点で自由に視聴可能
  • VRビューワーを使用すると、頭の動きと視点が連動する
  • 通常の動画では伝えきれなかった商品の細部や迫力、臨場感を伝えられる
  • 自社商材に対する興味関心や購買意欲のより一層の高まりが期待できる

疑似体験動画は「VR(Virtual Reality)動画」「AR(Augmented Reality)動画」「360度動画」などに大別され、それぞれの違いは以下のとおりです。

VR(Virtual Reality) CG技術などを使って仮想現実をつくり上げ、視聴者はまるで「自分がそこにいるかのような」疑似体験ができる。VRゴーグルを装着することで、現実に近い世界に没入感が得られる。
AR(Augmented Reality) 現実世界に映像情報を表現する映像技術。近年では企業の製品カタログや商品紹介において、AR技術を採用したアプリケーションが登場している。
360度動画 360度さまざまな角度から景色や物を視聴できる動画。自由な視点や角度で映像を視聴可能で、オンラインのショールームや職場体験などにも活用されている。

これらの疑似体験動画は、テクノロジーの発達に伴って実用化されて来ましたが、今後にわたっての規模拡大も見込まれています。実際に、矢野経済研究所が発表している、下記のデータをみてみましょう。
矢野経済研究所「XR(VR_AR_MR)360°動画対応HMD市場」
(引用:矢野経済研究所「XR(VR/AR/MR)360°動画対応HMD市場に関する調査を実施(2021年)」

上記をみれば、2022年現在はゆるやかな成長ですが、2027年にかけて大きく市場規模が成長する見込みであるとわかるでしょう。

疑似体験動画を活用するメリットとしては、「時間と場所を選ばず、リアルな体験を届けられる」「コストを削減しつつ、良質な顧客体験を提供できる」などがあります。

たとえば、Webサイト上に視聴者が疑似体験できる「ショールームの見学動画」を設置し、実際のショールーム見学の予約に誘導する……といった活用法で使われています。動画で疑似体験をしたお客様は、興味関心が高い状態で実際のショールームに来訪するため、購入や相談などのネクストアクションにつながりやすくなります。

下記は、イタリア最高級キッチンブランドValcucine TOKYOが公開している、動画を使ったバーチャルショールームです。
Valcucine TOKYO バーチャルショールーム
(引用:Facebook「ValcucineTokyo | SHOWROOM」

上記のような疑似体験動画なら、顧客はあらゆる角度から能動的に自社商材を閲覧できますので、より購買意欲も高まることでしょう。

360度動画を活用した事例については、以下の記事でもご紹介しています。合わせてご覧ください。
関連記事:【2022年】360度動画の事例8選、作り方、おすすめカメラを徹底解説!

トレンド2:顧客起点のインタラクティブ動画

「インタラクティブ動画」とは、視聴者が「触れる」仕組みを備えた動画です。視聴者のタップやクリックなどのアクションに合わせて、動画が変化。動画から関連サイトに直接遷移したり、詳細情報のポップアップ表示も可能です。
インタラクティブ動画の特徴
従来「企業からの一方的な情報提供」で終わっていた動画媒体に、こうした「顧客起点」の仕掛けがあることで、従来型動画マーケティングでは不可能だった「双方向コミュニケーション」が実現できるようになりました。インタラクティブ動画を活用するメリットとしては、以下のようなものが代表的です。

  • 自身が見たい項目を選ぶので、離脱されにくい
  • 視聴者のペースで視聴でき、理解を深めやすい
  • コンバージョンにつながりやすい
  • 複雑な商材の理解を促進できる
  • 視聴データを取得し、視聴者のインサイトを把握できる
  • オリジナリティのあるコンテンツで、シェアされやすい

動画マーケティングは各視聴者毎に「最適化した」動画を届けることが難しく、離脱されやすい点がデメリットでした。しかし、インタラクティブ動画であれば、視聴者自身が見たい情報を選んですぐに遷移できるため、離脱率解消につながります。米Innovidが公開している調査データによると、インタラクティブ動画は通常の動画に比べてユーザビリティが561%上昇し、平均視聴時間が41秒増加すると判明したとのことです。

実際に、英会話教育事業を展開する株式会社シェーンコーポレーションが作成したインタラクティブ動画の例をみてみましょう。
シェーン英会話のインタラクティブ動画

シェーンコーポレーションでは、コロナ禍において新しいターゲットとして据えた「子ども層」の集客に課題を抱えていたため、集客方法の見直しを検討。新たなアプローチ手段として、双方向のコミュニケーションを図れるインタラクティブ動画を選択しました。「子ども英会話」の無料体験レッスン数増加を目的にして、Webサイトにインタラクティブ動画を設置したところ、インタラクティブ動画の「接触者」が「非接触者」に比べて、約5倍のコンバージョン率となる成果につながっています。

動画の最初に「先生は?」「授業は?」「子供の様子は?」と3つの項目が出てくるため、視聴者は自身が見たい項目を選択します。通常の動画であれば企業の意図した順で、一方的に情報が提供されますが、インタラクティブ動画であれば自身の視聴したいコンテンツをすぐに見ることができるため、ストレスなく興味関心を高められるのです。また視聴者のアクションデータから何が知りたいか?など「インサイト」を分析できるため、サイトに掲載するコンテンツやマーケティング活動全体にも活かすことができます。

関連記事:インタラクティブ動画接触者のCVRは非接触者の約5倍に!Webサイトからの「無料体験レッスン申込」を促進

トレンド3:企業のYouTubeチャンネル

近年は、自社のYouTubeチャンネルを開設し、マーケティングに活用する企業も増加傾向にあります。チャンネル開設だけなら無料で行えるため、企業の規模や予算に囚われず、すぐに実行可能。さらに、次のような点も特徴です。

  • チャンネル登録者数が増えれば安定的なプロモーションが可能
  • チャンネルが育てば広告収入も得られる
  • YouTube自体がSEOに強い

国内だけでも、月間6,900万人以上のアクティブユーザーが存在。10代から60代の非常に幅広い世代から利用されている巨大プラットフォームになっています。
Think With Google「Youtubeの特徴」
(引用:Think With Google「『みんなのメインステージ』——新しい時代・進化する YouTube」

多くの見込み顧客にアプローチできる点が、YouTubeで自社チャンネルを開設する企業が増えている理由です。チャンネル登録をした視聴者に対しては優先的に動画が視聴されますので、「チャンネルが育てば育つほど」コアなファンの囲い込みが可能。自社でアップロードした動画を顧客接点として、商品やサービスの訴求を継続的に行えます。

さらに、YouTubeの動画を「面白い」と感じてもらえたり、内容に共感してもらえたりすれば、視聴者のSNSアカウントにおける「シェア」も期待できます。拡散が拡散につながる「バズ」の状態を形成できれば、大幅な認知拡大が実現するでしょう。

YouTubeチャンネルを効果的に活用している企業として、全国にフランチャイズ学習塾「武田塾」を展開する株式会社A.verが挙げられます。

(引用:YouTube「武田塾チャンネル|参考書のやり方・大学受験情報」

武田塾の公式チャンネルでは、「参考書解説」「受験のテクニック」などの自社の見込み顧客である受験生に向けたお役立ちコンテンツを配信。2022年10月現在、チャンネル登録者数14.4万人を超え、総再生回数は1億9600万回にものぼっています。若年層リサーチ結果を発信する「TesTee Lab」の発表によると、調査対象の中学生80.9%、高校生83.0%がYouTubeを視聴していると判明していますので、武田塾のターゲット層とは親和性が高いといえるでしょう。

企業におけるYouTubeチャンネルの活用事例については、以下の記事でもご紹介しています。
関連記事:企業のYouTubeマーケティング3つの手法&チャンネル成功事例5選を解説!

トレンド4:BtoBマーケティングでの活用

動画マーケティングは、BtoB企業からも注目を集めています。2020年の新型コロナウイルスの感染拡大により、オフラインの展示会や訪問営業の機会が激減したことを受け、新たな顧客接点を構築する必要性が高まったためです。

株式会社マーケライズの発表によると、コロナ禍では、多くの企業において展示会や商談機会が減少したと判明しています。
マーケライズ「製造業界の営業・販促活動へのコロナ禍の影響を調査」
(引用:株式会社マーケライズ「製造業界の営業・販促活動へのコロナ禍の影響を調査 展示会や商談減少が多数、営業・販促活動の変革が急務に」

このような背景から、従来型のマーケティング手段の代わりに、オンライン商談やWebサイトでの情報提供、メール配信など、オンラインでのアプローチが主流に。デジタル上での効果的な表現方法として、動画活用が注目されるようになり、多くのBtoB企業が動画マーケティングに着手しました。

動画マーケティングは、BtoBにおいてもオンラインの顧客接点として有用な手法ですが、以下のような点がBtoCとは異なります。

  • 扱う商材はデジタルツールなど「高単価」なものがほとんど
  • ターゲットは一般ユーザーではなく企業や企業内担当者。複数人で意思決定を行う
  • 感情に訴えかけるよりも、理論的なアプローチが必要となる
  • 内容が専門的で、用語解説が必要なケースもある

上記のような特徴があるBtoB領域の動画マーケティングでは、どのような取り組みがなされているのでしょうか。取り組み内容は各社さまざまですが、マーケティングのフェーズを「認知・興味」「比較検討」「オンボーディング」に分けた際のおもな活用例としては、次のとおりです。

認知・興味 動画広告
バズ動画
YouTubeチャンネル運営
比較検討 商品説明動画
サービス説明動画
導入事例インタビュー動画
ウェビナー動画
オンボーディング マニュアル動画

上記をみれば、BtoBマーケティングの各フェーズにおいて、動画活用が有効であるとわかるでしょう。BtoBの商材は一般的に単価が高く、見込み顧客との商談サイクルも長くなりがちです。そのため、顧客接点を維持し続けたり、顧客とのリレーションを深めたりしなければなりません。

自社商材の特徴や使用例などをわかりやすく表現できる動画を活用すれば、中長期に渡る顧客とのコミュニケ―ションが促進でき、BtoB企業の売上げの拡大にも貢献します。

BtoB領域でクラウド型ソフトウェアを展開しているSalesforceは、各フェーズにおいて動画を効果的に活用しています。YouTubeチャンネルで自社製品の機能紹介動画やデモ動画、お客様事例動画を公開することにより、ツールの持つ性能や価値をわかりやすく紹介。同一の動画をWebサイト上にも掲載し、見込み顧客から既存ユーザーまで、すぐに動画を届けられる環境を構築しています。

(引用:YouTube「【機能紹介-小売業界の使い方】Salesforce Connect Commerce Everywhereのご紹介」

このような、BtoB企業の取り組みは、BtoCでも参考になります。たとえば、見込み顧客の検討サイクルが比較的長くなると予想されるような、複雑で高単価な商材を扱っている場合は、BtoCでも各フェーズに合わせた動画を使ってコミュニケーションを計る手法が有効でしょう。

トレンド5:視聴データの利活用

単なる「動画制作」と「動画マーケティング」の違いは「データを分析し、動画を改善しながら運用する」という点にあります。

そのため、動画マーケティングで効果を出すためには、「施策の効果改善」のためのデータ分析が必要不可欠。動画を視聴した視聴者の属性情報や行動履歴を分析したうえで、インサイトを可視化すれば、より効果的なマーケティング施策につなげられます。

動画データを分析するためには、まずKPIを設定しなければなりません。
動画マーケティングで用いられる主要なKPIは、以下のとおりです。

●視聴回数(再生回数):動画が視聴された回数
●インプレッション数:動画のサムネイルが各配信プラットフォーム上に表示された回数
●ユニークユーザー数:一定時間、動画を視聴した視聴者の総数を示す指標
●再生完了率:再生数のうち、「動画が最後まで視聴された割合」を表す数値
●総再生時間:視聴者が動画を再生した合計時間
●視聴維持率:インプレッション数のうち「動画の終了まで」、あるいは「30秒以上」再生された割合
●クリック率:「視聴回数 ÷ インプレッション数」を示す数値
●コンバージョン率:動画視聴者が購入・問合せなどの行動を起こした割合 

KPIを測定し、分析するためには、それぞれのKPIに応じたツールの活用が必要になります。たとえば、YouTubeで上記のようなデータを分析する際には「YouTubeアナリティクス」「NoxInfluencer」を活用する、コンバージョン率をKPIとする場合にはGoogleアナリティクスなどのサイト分析ツールと連携させる、などです。

また近年では、より本格的な動画マーケティングの実施が可能な「動画プラットフォーム」も注目を集めています。たとえば、アメリカ発の動画配信&分析プラットフォーム「Wistia」は、「サムネイルのA/Bテスト」「ヒートマップ」など、分析ツール以上の機能が実装されています。

また、インタラクティブ動画に特化したプラットフォームを使えば、動画上のタップ(クリック)データをもとに、視聴動態データの取得・分析も可能。視聴者の選択から「インサイト(本当の興味・関心)」について把握できますので、さらにコンバージョンを獲得しやすい動画の作成に繋がります。

動画マーケティングでは、以上のようなツールを活用し、自社の施策をスピーディかつ確実に改善していきましょう。なお、動画マーケティングにおけるデータ分析で必要な指標、ツールについては同ブログの下記記事でも解説しています。あわせてご参照ください。

関連記事:動画マーケティングの主要指標&動画分析ツールのおすすめ7選を解説!

動画マーケティングの展望予測

動画マーケティング市場規模は、今後ますます拡大していくでしょう。近年では「AIによる動画制作」や「新たな動画プラットフォーム」なども登場し、動画サービスも各社さまざまなものが展開されています。クリエイティブにおいても、新しいトレンドが生まれ続けると予測されますが「トレンドだから」とすべてを取り入れるのではなく、あくまでも自社の「目的に合わせた動画活用」の検討が大切です。

どれだけマーケティング活動におけるデジタル化が加速したとしても「すべてをデジタルで補えるか」といえば、そうではないでしょう。たとえば、顧客との密な商談やアフターサポート、問い合わせ対応など、人が臨機応変に対応しなければならない局面は、これからも残り続けます。

そのため、動画もあくまで「オンライン・オフラインをつなぐ橋渡し役」として捉えることが求められます。つまり、動画単体で訴求を行おうとするのではなく、視聴データから得られた視聴者のインサイトを1to1の営業・マーケティングといった、自社のあらゆる施策に活かしていくのです。

視聴者のニーズを正確に拾っていくうえでは、動画から得られるデータだけでなく「動画を通じて見込み顧客とのコミュニケーションを図り、コンバージョンの向上につなげる」との意識が求められます。

以上を踏まえると、動画マーケティングで売上げの最大化をはかるには、専門的なナレッジ(知識)やノウハウが必須といえます。自社のみで対応が難しいと考えられる場合には、外部専門家への依頼も検討してみましょう。

まとめ

昨今のテクノロジーの発達や消費行動のデジタルシフトにより、動画で実施可能なアプローチ手段は増え、動画マーケティングのトレンドも日々変化し続けてます。今回ご紹介したトレンドを踏まえつつ、自社の目的に沿った動画の活用法や運用体制を検討してみてください。

動画マーケティング入門ガイド

執筆者
黒谷 純子

MIL株式会社 マーケティング

大学卒業後、編集プロダクション等を経て、人材サービス企業のマーケティング職に従事。2021年3月よりMIL株式会社に入社し、現在は自社サイトやMILblogの企画・ディレクション・執筆等を担当している。
Twitter : https://twitter.com/MIL29292841

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