マーケティングシナリオに合わせて配信していくステップメールは、お客様との信頼関係を構築し、コンバージョン率を上げる効果があります。当記事では、シナリオ作りが初めての担当者でも効果的なステップメールのシナリオを作ることができるよう、作り方とポイントを解説します。
ステップメールのシナリオとは?
ステップメールとは、マーケティングのシナリオに合わせて作成した複数のメールのことで、お客様に必要な情報を順番に配信していくものです。そのため、ステップメールのシナリオは、購買行動におけるお客様の行動や感情に配慮しながら作り、「今ちょうどこの情報が欲しかった」というものを、順序よくタイムリーにお届けできるようにしましょう。
マーケティングのシナリオとは?
シナリオは、直訳すると“脚本”です。ドラマや舞台では、俳優さんが1つのストーリーを、脚本の場面展開の通りに演技をしていきますよね。同様に、マーケティングにおけるシナリオとは、何かをきっかけにお客様が商品・サービスについての情報を得たいと考えはじめたときから購入までを、1つのストーリーのように可視化したものを指します。別の言葉では「カスタマージャーニーマップ」とも言います。
シナリオでは、お客様を主人公にして、いつ、どのタイミングで、どのような情報を得て、どんな感情になって、どういう行動をしたのかを、1つのストーリーにしていきます。そして、ステップメールはその流れに合わせて作り、配信していくのです。
ステップメールのシナリオの作り方
ステップメールのシナリオについてイメージできたところで、具体的な作り方を解説していきましょう。ここで注意したいのは、シナリオはお客様の目線に立って、お客様の感情・行動に寄り添うように決めるということ。決して、自社の都合や想像だけで決めてはいけません。そのためには、お客様についてよく知らなければなりません。
Step1.対象商品・サービス、目的とする行動、ターゲットの3点を決める
最初に決めるのは、対象となる商品・サービスと、目的とする行動とターゲットの3点です。
下記に、具体例を挙げて紹介します。
【対象商品・サービス】こども向け英会話教室
【目的とする行動】資料請求をしてもらい、無料体験レッスンを受けて入会してもらう
【ターゲット】3歳から12歳までのお子様のいる方
(2)保険会社
【対象商品・サービス】学資保険
【目的とする行動】無料相談で、学資保険を契約してもらう
【ターゲット】妊娠中の女性
(3)証券会社
【対象商品・サービス】証券口座
【目的とする行動】 無料マネーセミナーに参加してもらい、口座を開設してもらう
【ターゲット】社会人5年目ぐらいまでの若者
(4)証券会社
【対象商品・サービス】証券口座
【目的とする行動】お子様のジュニアNISAの資料閲覧で、口座を開設してもらう
【ターゲット】既存ユーザーで未成年のお子様のいる方
(1)のこども向け英会話教室の場合、最終目的とする行動は「入会」と1つに絞ることができるため、ターゲットは自然と決まります。
しかし、(2)の保険会社の場合には、社内に多くの種類の保険が存在するので、まずは対象となる商品・サービスとターゲットを絞る必要があります。今回の学資保険のように、まず商品を決めればターゲットも自然と決まります。
では、(3)(4)のような証券会社の場合は、どうでしょうか?最終目的は証券口座を開設いただくことですが、ターゲットが違うと目的とする行動も違ってきます。それに伴い、当然、ステップメールのシナリオも変わってくるのです。
つまり、業種によって、「対象商品・サービス、目的とする行動、ターゲット」の3点が即座に決まる場合と、諸条件を比較検討して決めなければならない場合があります。初めてのステップメールの場合には、マーケティング戦略も考慮しながら、最も費用対効果の高そうなパターンから始めてみるのがおすすめです。
Step2.ペルソナを設定してカスタマージャーニーマップを作る
対象商品・サービス、目的とする行動、ターゲットの3要素を決めたら、次はマーケティングのシナリオ(=カスタマージャーニーマップ)を作ります。
お客様の目線に立って、お客様の感情・行動を検討するには、まずはターゲットの人物像をより具体的に決めておく必要があり、これをマーケティング用語では「ペルソナ設定」といいます。ペルソナを細かく決めておくことで、行動や感情を想起しやすくなるため、カスタマージャーニーマップの作成の土台となる重要な作業です。
<ペルソナの設定項目の例 ※BtoCの場合>
- 年齢
- 性別
- 職業
- 居住地
- 家族構成(家族の年齢や属性も)
- 性格
- 現在の状況
- 将来の夢
- 主な使用デバイス
- よく使うSNS、よく見るコンテンツ など
ペルソナ設定においては、空想や理想だけで設定せず、既存のお客様をモデルにします。必要に応じて、ユーザーインタビューやアンケートを実施して、よりリアルな顧客像を反映させましょう。
カスタマージャーニーマップには、多様なテンプレートが存在しますが、今回はステップメールを作成するのが初めての方のために、比較的シンプルな例をご紹介します。
縦軸に、お客様の行動、接点(タッチポイント)、感情、企業側の対応策、横軸にお客様のフェーズとして、認知したきっかけ、情報収集、比較・検討、申込、継続を記入するようになっています。ぜひ参考にしてみてください。
<カスタマージャーニーマップの例(こども向け英会話教室)>
・32歳
・女性
・既婚
・専業主婦
・神奈川県在住
・夫は35歳で保険の営業職、こどもが2人(4歳で幼稚園に通う女の子、1歳の男の子)
・明るく、社交的な性格。こどもにはいい教育環境をと考えていて、今は子育てを楽しんでいる。
・結婚前は外資系企業で営業事務をしていたので、いずれは仕事を再開したいと考えている。
・使用デバイスは、スマホとiPad
・Instagramはよく見る。子どもが寝た後、Netflexで海外ドラマを見るのが息抜き。
▼田中明子さんのカスタマージャーニーマップ
関連記事:【3分でわかる!】カスタマージャーニーとは?カスタマージャーニーマップのメリット・活用法を徹底解説
Step3.シナリオを作る
ここからはカスタマージャーニーマップを基に、メールのシナリオを作っていきます。お客様が何を起点に企業との直接的な接点を持つのか、どの段階で、どんな情報を提供し、どう行動してもらうかを決めて、メールの内容を決めていきましょう。上記のこども向け英会話教室を例に、シナリオの作り方を解説します。
<シナリオ作成の例(こども向け英会話教室)>
広告や検索によって自社サイトを訪問してくれたお客様に「資料請求フォーム」からお申し込みいただき、その後に5通のメールを送信する流れです。
お客様の行動や感情に配慮しながら、下記のシナリオを作成しました。
1通目:資料請求のお礼
資料請求フォームを入力し、手続きが完了したタイミングで送信。資料請求が無事に完了したことをお伝えし、安心していただく。
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2通目:郵送資料がお手元に届いたどうかの確認
資料が届く営業日2、3日後に送信。資料の見ていただきたいポイントなどを解説。
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3通目:お子様の年齢に応じたおすすめクラスのご案内とお近くの教室の調べ方
資料到着を2、3日後に送信。お子様の年齢別クラスの特徴やお近くの教室をご案内し、より具体的にイメージを膨らませていただく。
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4通目:保護者向けのオンライン説明会と無料体験レッスンのご案内
定期的に保護者向けのオンライン説明会を実施のご案内に、無料体験レッスン風景の動画を埋め込んだり、「オンラインなので、小さなお子様がいる場合でも安心です」と添えたり、「無料体験のスケジュール確認」へのリンクを入れたりすれば、紙の資料を読むだけよりも、お申し込みのハードルが下がります。
またキャンペーンを設定し、「無料体験へのご参加で○○プレゼント」「無料体験当日のお申込みで、入会金が50%OFF」などアクションを促進するメッセージも効果的です。
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5通目:よくある質問(Q&A)と「見学はお気軽に」のメッセージ
説明会や無料体験レッスンに関して、お客様からよくいただく質問を抜粋して案内しましょう。また、サイト上にはチャット相談機能があることも添えておけば、不明点を事前に解消できて安心感につながります。
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お届けする資料にも、クラスのご案内や説明会、無料体験レッスンのご案内は記載されているので、ご案内が重複すると考えてしまうかもしれません。しかし、育児中の女性はなにかと忙しいですし、資料をじっくり読むのが苦手な方もいらっしゃいます。そのため、ステップメールで接点を増やしたり、追加の情報をお伝えしたりすることは、コンバージョン率アップにも効果的です。
また、より適した内容の資料やメールを送信するには「資料請求フォーム」の工夫も必要です。氏名、住所、電話番号、メールアドレスといった基本情報以外にも、お子様のお名前や年齢、現在の英語に対する取り組み(既に教室に通っているのかどうか)等を記入する欄を設置して、より深い情報を得ましょう。お客様から質問のある場合も想定し、フリーコメント欄等もあるとよいでしょう。
入力フォームについて詳しくは、以下の記事でご紹介しています。合わせてお読みください。
関連記事:「EFOとは?入力フォームの離脱を改善しコンバージョン率を上げる6つのポイント」
Step4.シナリオを基にメールの原稿を書く
シナリオが完成したら、あとはステップメールの本文を書くのみ。ペルソナになりきって、それぞれのタイミングで、どのようなメールが届いたら企業に対して好感を持てるか、不安が解消できるかを考えていきます。
社内にメルマガの担当者がいれば、効果的な書き方を相談してみましょう。もしも、社内にノウハウが無かったり、リソースが足りないときには、専門のセールスライターに発注したり、メール配信スタンドのステップメールセミナーに参加してみたりするのも有効です。
シナリオが完成したら、メルマガ配信システムに登録をして、正しく動作するかを確認しておきましょう。また、ステップメールにご登録いただくためのお申し込みフォームの設置と、お申し込みフォームまでどうやって来ていただくかという集客の準備もお忘れなく。
メルマガの配信については、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:「メルマガとは?目的、メリット、形式、法律上の注意点など、基礎知識とポイントをわかりやすく解説!」
シナリオ作りのポイント3点
ここでは、シナリオを作るときのポイントを3つお伝えします。ステップメールを作るためには、かなりの労力を要します。マーケティング施策を成功させて、目標を達成するためにも、ぜひご一読ください。
カスタマージャーニーは、できるだけリアルに作る!
カスタマージャーニーを作るときには、ペルソナ設定と合わせて、社内の関係部署・関係者にも声をかけて意見を出し合い、できるだけリアルに作りましょう。担当者1人で考えるよりも、複数人で意見を出し合って作る方が網羅性も出て、よりリアルなものが作れます。
最初はシンプルなシナリオで、まずは始める!
あまり難しく考えずに、シンプルなシナリオを作り、まずはステップメールをスタートさせましょう。当記事で解説したこども向け英会話教室の事例は、セミナー開催や、個別相談会の募集にも応用が可能です。 リソースが割けず、フォローアップに手が回っていないような部署があれば、ステップメールの導入で自動化することで、効率の良いご案内が可能になります。
お客様の視点で考え、単独で読んでもわかりやすい内容にする!
ステップメールは、必要な情報を順番に配信していくものではありますが、お客様は必ずしもすべてのメールを順番通りに読んでくださるとは限りません。そのため、それぞれのメールは1通だけ読んでも内容を理解できるよう、わかりやすく書くことを心がけてください。
すぐに使える!目的別のシナリオ例をご紹介
最後に、すぐに使えるシナリオの例をご紹介いたします。自社の商品・サービスに置き換えて、ぜひ応用してみてくださいね。
検討段階のシナリオ
2通目:資料がお手元に届いたどうかの確認(サンプルなら、効果的な使い方のご案内)
3通目:お客様の年齢・属性に応じたおすすめ商品のご案内
4通目:個別無料相談会のご案内
【応用できる業種】金融、教育、化粧品、食品など
商品購入時のシナリオ
2通目:商品発送のお知らせ(配送業者や伝票番号などの情報)
*サブスクの場合は、利用開始のご案内(ユーザー情報やログイン情報)
3通目:商品がお手元に届いたかどうかの確認と、ユーザー登録のご案内
4通目:よくある質問や、困ったときのお問合せ先の紹介
5通目:活用事例やオプション商品などのご案内
【応用できる業種】通販、サブスクなど
既存顧客向けのシナリオ
2通目:数量限定商品、ポイントアップのお知らせ
3通目:キャンペーンがいよいよ始まりました
4通目:即完売の商品を入荷いたしました!
5通目:キャンペーンはあと1日で終了です
【応用できる業種】ECサイト、通販、化粧品メーカー、会員制サロン・スポーツジム など
まとめ
いかがでしたか。お客様に必要な情報を届けながら関係を構築し、商品・サービスへの理解を深めていただけるステップメール。まずはペルソナ・カスタマージャーニーマップを設定後、簡単なものから実施して、反応を見ながら改善を重ねていきましょう。
関連記事:【2022年】読まれるメルマガの作り方!7ステップのコツを徹底解説
関連記事:メルマガの平均クリック率とは?クリック率を上げる10の方法をご紹介!
執筆者
黒谷 純子
MIL株式会社 マーケティング
大学卒業後、編集プロダクション等を経て、人材サービス企業のマーケティング職に従事。2021年3月よりMIL株式会社に入社し、現在は自社サイトやMILblogの企画・ディレクション・執筆等を担当している。
Twitter : https://twitter.com/MIL29292841