新型コロナウイルス感染症をきっかけに、ウェビナーでリード獲得やナーチャリングを実施するBtoB企業が増えています。その一方で、ウェビナーで期待通りの成果を上げられていないと悩む方は少なくありません。
その理由は「企画」にあるかもしれません。そこで本記事では、ウェビナーの企画の重要性や立て方、成果につなげるポイント、効果測定・企画改善の方法を解説します。
・本格的にウェビナーを展開するにあたり、企画のコツを知りたい
・ウェビナーで集客はできているが、リード獲得やナーチャリングにつながっていない
というマーケティング担当の方は、ぜひ最後まで読んでお役立てください。
目次
ウェビナーの「企画」はなぜ重要か?
ウェビナーとは、Web(ウェブ)上で開催するセミナーです。新型コロナウイルス感染症の流行でオフラインでのセミナー開催が困難になったことをきっかけにBtoB企業での活用が増加し、今や、ウェビナーは主要なマーケティングチャネルのひとつとなりました。
BtoB企業におけるウェビナー開催の主な目的は、「新規リード獲得」「ナーチャリング(見込み顧客の育成)」「クオリフィケーション(見込み顧客の選別)」であり、それぞれの目的に応じてテーマを選定することが重要です。
例えば新規リード獲得を目的としたウェビナーでは、自社がターゲットとする層をメインにリードを獲得し、その後のナーチャリングやクオリフィケーション、商談化へとつなげなければいけません。
ターゲットのニーズや課題感に適していないウェビナーを企画しても、リードとして獲得したい層に刺さらないでしょう。万一、リードを獲得できても、そのリードは自社に適していないため、その後のナーチャリングや商談化へとつなげるのは困難です。
出典:「ながら見」が7割。BtoBオンラインイベントの実態調査
また、WACUL株式会社の調査によれば、参加したオンラインイベントに対して満足度が高かった人の導入意欲は通常の人よりも1.51倍高く、満足度が高いコンテンツとして最も票を集めたのは「業務に役立つ独自のノウハウを紹介する」コンテンツであると判明。ターゲットが求める情報を提供できるように企画を練りこんでおかなければ、満足度の低下を招いてしまいます。
ウェビナーとオフラインセミナーの企画の違い
BtoB企業がウェビナーを企画する際、オフラインセミナーの企画との違いを理解しておく必要があります。下記はウェビナーとオフラインセミナーの違いをまとめた表です。
ウェビナー企画を立てる上で、特に重要なのが「参加のしやすさ」の違いです。オフラインセミナーの場合、参加者は会場まで足を運ぶ必要があるため、「せっかく来たから」と多少セミナーの時間が長くとも集中して聞いてくれます。
対してウェビナーは、インターネット接続さえあれば、自宅やオフィスから気軽に参加できる性質上、参加者は集中して視聴しない傾向にあります。WACUL株式会社の調査によれば、BtoBウェビナー参加者の7割が「ながら見」をしているとのこと。業務の隙間時間にウェビナーに参加する方が多いと推測できるため、短時間のウェビナーを多く開催したり、アーカイブ配信を残したりするのが有効です。
上記を踏まえ、ウェビナーの企画では注意すべき点があります。
ウェビナーを活用すれば、オフラインのセミナーよりも多くのユーザーにアプローチできますが、ユーザーの集中力やエンゲージメントを高める企画を考えなければいけません。具体的には、チャット欄での質問への回答、投票・クイズ機能を使ったアンケートの実施、複数スピーカーによる会話型ウェビナー、視聴者の注目を集める資料の工夫、ウェビナー時間を30分未満にするなどが効果的です。
企画時には、ウェビナーとオフラインセミナーにおける参加者とのコミュニケーション方法の違いに注意しましょう。
関連記事:双方向なウェビナーを実現する5つの方法!アーカイブでの双方向コミュニケーション手法も紹介
ウェビナー企画5W2Hの立て方
ウェビナー企画を立てる際には、以下の5W2Hを設定しましょう。
- Why:ウェビナーを開催する目的
- Who:視聴者ターゲット
- What:配信テーマ
- Where:配信する場所
- When:開催する時間
- How:満足度を高める工夫
- How much:開催や集客の予算
ここからは、各項目の詳細を解説します。
Why:ウェビナーを開催する目的
まずは、ウェビナーを開催する目的を明確にしましょう。目的が明確になれば、企画を立案するうえで重要なターゲットも判明します。
先にも解説した通り、BtoB企業がウェビナーを開催する主な役割はリード獲得・ナーチャリング・クオリフィケーションのいずれかです。以下は目的別のKPI例となります。
【リード獲得を目的としたウェビナーのKPI例】 | ●登録数: ウェビナーへの登録数(申し込み数) ●参加率: 登録した参加者のうち、実際にウェビナーに参加した割合 ●リードの質:アンケートなどで集めたウェビナー参加者の情報を分析。商談化する可能性の高い見込み顧客の数 |
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【ナーチャリングを目的としたウェビナーのKPI例】 | ●参加者エンゲージメント: ウェビナー中の参加者のチャット内容や質問の数、視聴時間などを評価 ●参加者アクション: ウェビナー後に参加者が取るアクション(例::資料ダウンロード、デモリクエスト)の数 ●フォローアップコンバージョン率: ウェビナー後のフォローアップメールや架電などのフォローアップによるコンバージョン率 ●リピート参加率: 過去にウェビナーに参加した人が再度参加する割合 |
【クオリフィケーションを目的としたウェビナーのKPI例】 | ●MQL(Marketing Qualified Lead)数: ウェビナーを通じてマーケティング部が確認したクオリファイドリード(興味があると判断されたリード)の数 ●SQL(Sales Qualified Lead)数: ウェビナーを通じて営業部が確認したセールスクオリファイドリード(営業対象となるリード)の数 ●商談数: ウェビナーを通じて生じた商談数 |
ウェビナーの目的に合わせて、具体的なKPIを設定し、正確に効果を測定できるようにしましょう。
Who:視聴者ターゲット
目的が定まったら、ウェビナーのターゲットを明確にしましょう。
ターゲットの課題・興味関心に合ったウェビナー企画を立てることで多くの人を集客をし、視聴者の興味関心を引き付けることができます。ターゲット設定で役に立つのが「ペルソナ」と「カスタマージャーニーマップ」です。
ペルソナとは、商材の典型的もしくは理想のユーザー像であり、一人の顧客を思い浮かべられるまで具体性を高めたもの。年齢や役職などのデモグラフィクスと課題や価値観などのサイコグラフィクスを設定して作成されます。ペルソナの作成により、ターゲットの課題やニーズを明確化できます。
しかし、認知から購買に至るまでの各ステージで、ペルソナの課題やニーズは異なります。そこでペルソナのフェーズごとに行動や接点を想定した「カスタマージャーニーマップ」を作成し、各ステージで最適なコンテンツを届けられるようにしましょう。
関連記事:BtoB企業のウェビナー成功事例5選!オンラインセミナー成功のコツを徹底解説
関連記事:カスタマージャーニーに必須の「ペルソナ」の作り方とポイントを徹底解説!
関連記事:顕在層と潜在層の違いとは?潜在層に有効なWeb広告・マーケティング手法とCVR向上のポイントを解説
What:配信テーマ
目的とターゲットが決まったら、ウェビナーのテーマを決定しましょう。
WACUL株式会社の調査で、BtoB企業担当者のほぼ全員(94%)が「業務に役立つノウハウや事例を知るためにオンラインイベントに参加した」と回答していることからも、ペルソナの課題やニーズに応えるテーマ設定が重要だと分かります。
リード獲得が目的の場合は、多くの潜在顧客との接点構築が重要なため、多くの人が関心のあるノウハウ紹介、ナーチャリングの場合は具体的な事例紹介など、目的に合わせたテーマ設定をしましょう。その後、メルマガや他のウェビナーなどでナーチャリング・クオリフィケーションをして、信頼関係を構築し、商談へと円滑に進めます。
Where:配信する場所
ウェビナーの配信場所は、「自社オフィス」もしくは「スタジオ」が主な選択肢です。自社オフィスだと騒音が気になる場合や、配信のプロに任せたいという場合はスタジオがおすすめです。各配信場所の違いを下記表にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
When:開催する時間・曜日
当日の参加率を高めるためには、開催時間を考慮しなければなりません。ターゲットの業界や役職などを踏まえたうえで、多くの集客を見込める時間帯に開催しましょう。
ON24とGoToWebinarの調査では、参加率が高いのは火曜日・水曜日・木曜日の24〜27%であり、それ以外の曜日の参加率は4〜11%と低くなると分かっています。また、参加率が高まる時間帯は午前の10時と11時であり、午後の12時以降は参加率が8%以下になるとのこと。
また、ターゲットが医療・看護業界など業務の関係で日中に参加するのが困難な業種・職種の場合、ターゲットが都合のよい時に視聴できるアーカイブ配信の活用も効果的です。
関連記事:ウェビナーアーカイブの配信方法&成果を出すポイントを解説!動画でリード獲得やナーチャリングを促進
How:満足度や能動性を高める工夫
ウェビナー施策を成功に導くためには、参加者の満足度を高める工夫も必要です。WACUL株式会社の調査では、ウェビナー満足度がとても高い人の導入意欲は普通の人の1.51倍高いと判明。それでは、どのようなウェビナーを開催すれば、参加者の満足度を高められるのでしょうか。同調査では以下3つの要素が高い満足度に貢献すると分かりました。
- 求めていた情報を得られた
- ここでしか知れない貴重な情報だった
- 日々の業務にすぐに役立った
これらを提供するためには、前述のように、ターゲットペルソナをよく理解しておくことが必要です。
なお、ターゲットに役に立つ情報提供が満足度に直結する一方、BtoBウェビナーにおいてはエンタメ性の重要度は低くなります。それでも、価値ある情報を伝えるだけでは、満足度を高めるのは困難でしょう。分かりやすいスライドを作成したり、Q&Aやリアルタイムアンケートなどの双方向コミュニケーションができる仕掛けを構築して、視聴者の能動性を引き出す工夫も必要です。
How much:開催や集客の予算
ウェビナーの目的や規模、形式によって必要な予算が異なります。例えばゲストスピーカーを招く、スタジオを借りて高品質なウェビナーを配信する、動画配信ツールを導入するなどの場合は、ある程度のまとまった予算が必要です。
また、集客の予算も忘れてはいけません。ナーチャリングやクオリフィケーションが目的の場合、メルマガやSNSを通して、多くのコストをかけずに既存リードを集客できます。しかし、リード獲得が目的であれば広告やウェビナー集客サイトなどを活用して、多くの潜在顧客にアプローチする必要があるため、広告費等が発生します。集客方法について詳しくは、以下をご参照ください。
関連記事:ウェビナーの集客方法5選!集客力と商談化率を高めるポイントを合わせてご紹介
成果につながるウェビナーを企画する3つのポイント
ウェビナーで成果を上げるために、下記3つのポイントを意識して企画を立てましょう。
- ターゲットの課題をテーマに設定
- 視聴者ファーストの配信体制
- フォロー体制の構築
ここからは、各ポイントの詳細を解説します。
ターゲットの課題をテーマに設定
ウェビナー参加者の大半は、業務の課題を解決する情報を求めてウェビナーに参加します。そのため、企画段階ではターゲットが抱えている課題を抽出し、ウェビナーのテーマに設定することが有効です。
例えば、弊社MIL株式会社では「LPのコンバージョンを劇的に改善する新提案!〜顧客の理解と興味を深める最新の『動画×診断コンテンツ』を徹底解説!〜」というウェビナーを企画しました。
引用:LPのコンバージョンを劇的に改善する新提案!〜顧客の理解と興味を深める最新の「動画×診断コンテンツ」を徹底解説!〜
このウェビナーにおけるターゲットの課題は以下の通りです。
- LPからのCV獲得に課題がある
- 現状のWebサイトだけでの商品訴求に対して限界を感じている
- 新しい方法での獲得施策を検討している
上記課題を抱えている企業・担当者にとって、弊社が提供するインタラクティブ動画が有効なソリューションとなるため、参加者は有効な解決策を知ることができ、弊社は新規リードを獲得できるという双方にメリットがあります。
また、新規リード獲得においては、ウェビナーの共催もおすすめの戦略です。他社のハウスリストに含まれるリードにもアプローチできるため、より効率的にリードを獲得できるでしょう。注意点としては、ウェビナーの共催で成果を出すためには、共催企業と自社のターゲットユーザーが近しい、かつ、十分な集客チャネルを保有しているかどうかを十分に確認しなければなりません。
例えば、弊社はコンテンツマーケティングにおける動画活用を幅広く支援するサムライト社と共催で「集客からCVまで成果を最大化する”一歩先”の動画活用法」というテーマのウェビナーを企画しました。
引用:集客からCVまで成果を最大化する「一歩先」の動画活用法
弊社とサムライト株式会社は競合関係ではありませんが、動画マーケティングに精通しているという共通点があり、両社が集客するリードは互いの製品サービスに興味を持つ層だと言えます。ウェビナーのテーマには、両社のリードが共通して抱える課題「動画活用」を反映させています。
視聴者ファーストの配信体制
ウェビナーの配信体制は、視聴者の都合を優先しましょう。例えば、オフラインでセミナー開催するとしても、ウェビナーも合わせて「ハイブリッド配信」をすれば、会場に足を運べない遠方のターゲットや多忙なターゲットも視聴が可能になります。
出典:ON24 Webinar Benchmarks Report
またウェビナーのアーカイブ配信(オンデマンド配信)をすることで、忙しい日々を送る意思決定者や、業務の関係で参加できないターゲットにも視聴してもらうことが可能です。ON24の調査では、アーカイブ配信のみを視聴するユーザーは31%存在すると判明していることからも、アーカイブ配信はウェビナー活用に不可欠だといえます。
フォロー体制の構築
ウェビナーの企画段階で、ウェビナー後のフォロー体制も設計しましょう。
基本的には、ウェビナー後のアンケートの回答内容でターゲットの興味関心を測定し、確度の高いユーザーにはインサイドセールスが迅速にアプローチできる体制を構築します。
例えば、アンケートで「具体的な製品説明を希望する」にチェックしたユーザーにはインサイドセールスが当日に架電をし、そうでないユーザーはメルマガでナーチャリングをするなどです。
各部門が円滑に連携して、熱量の高いリードを逃さないために、営業やインサイドセールスの責任者と共にアンケートを設計しましょう。また、アーカイブ動画においても、動画内にCTAを設置するなどで顧客の興味関心を把握できます。アーカイブ配信については下記の記事で解説しています。
関連記事:ウェビナーアーカイブの配信方法&成果を出すポイントを解説!動画でリード獲得やナーチャリングを促進
ウェビナー企画の効果を測り、改善するには?
ウェビナーは企画だけではなく、分析と改善のサイクルを回すことが重要です。ウェビナー実施後は、必ずアンケートデータを分析し、参加者の満足度やニーズを把握して次の企画へ活かしましょう。例えば、アンケートで全編視聴していないユーザーが多いと判明すれば、テーマや視聴体験に問題があるとの仮説立てができます。
アーカイブ動画であっても、動画配信プラットフォームを用いれば、動画内に自由度の高いCTAの設置や細かな視聴データの確認が可能です。
関連記事:BtoBウェビナーのインタラクティブ動画化で新たな顧客接点を構築し、営業DXを促進!
アンケートだけでは得られない顧客のアクションデータから興味関心を把握して、次のウェビナーに反映することで、成果につながるウェビナーの企画を立てられます。
まとめ
ウェビナーでリード獲得やナーチャリングなどの目的を達成するには、ターゲットやテーマ、開催形態などの詳細な企画設計が欠かせません。特に、ターゲットにとって有益な情報を提供するコンテンツ設計が重要です。
また、商材単価が高く、複数の意思決定者が関与するBtoBにおいては、ウェビナー直後に導入されることは極めて稀でしょう。購買担当者は複数回コンテンツと接触して購買を決めるからこそ、ウェビナー後の継続的なコミュニケーション設計やアンケート結果をもとにしたコンテンツ改善が必要です。
ぜひ本記事を参考に、リード獲得やナーチャリングにつながるウェビナー企画を考えていただければ幸いです。
執筆者
瀧口 愛
MIL株式会社 マーケティング
Web制作会社でサイト構築に従事後、MIL株式会社へ入社し、マーケティングチームに所属。ウェビナーや展示会実施の基盤を構築し、毎月のウェビナーやオフラインイベントの企画・運営全般を担当している。その他、メルマガ配信やマーケ全体の施策効果分析など、フィールドマーケティング領域全般を担う。