デジタル主流の時代においても、いまだ企業のマーケティング施策として続いているダイレクトメール(以下、DM)の効果とは、一体どれほどなのか?また改善のポイントはあるのか?気になる方も多いかと思います。
当記事では、DMの効果を計る指標として一般的に用いられている「開封率」「反応率」の計算方法と、これらの数値を上げる具体的なポイントについて解説します。郵送物やメールといったDMによる販売促進を担当しているマーケターの方に、参考にしていただければ幸いです。
目次
ダイレクトメール(DM)の開封率・反応率とは
DM(ダイレクトメール)とは、販売促進のために顧客や見込み客に送付される印刷物やEメール(メルマガ)のことです。英語の「Direct Mail」を略してDMと呼ばれています。当記事では、主なDMの手段である郵送DMとEメールについて解説していきます。
DMでどれほど販売促進の効果があったのか、効果を測定する数値として開封率と反応率の2つがあります。
開封率の計算式
開封率とは、送付したDMのうち、実際に開封・閲覧された郵送物・Eメールの割合を指します。
Eメールの開封率は、次のように計算します。
反応率の計算式
反応率(レスポンス率)とは、送付したDMのうち、顧客からの反応(個人情報の登録や資料請求、商品の購入など)があったメールの割合を指します。
Eメールの反応率は、開封されたメルマガ数に対して、メルマガに記載されているURLがクリックされた数の割合であり、次のように計算します。
ダイレクトメール(DM)の開封率の目安【種類別】
DMの開封率がどのくらいか、種類別に見てみましょう。
※数値は調査によって異なりますので、あくまでも目安として捉えてください。
「DMメディア実態調査2020」によると、顧客一人1週間に受け取る数には、郵送とメールとで10倍以上もの差があり(郵送DMは平均6.7 通、Eメールは平均72.3 通)とEメールは数が多いため、多くのメールに埋もれがちになり、開封率が低くなっていると考えられます。そのため、近年では郵送DM(印刷物)の価値が見直されつつあります。
郵送DMは「取引関係の有無」により受取意向が変わる
存在価値が見直されつつある郵送DMですが、取引関係の有無により「受け取る側の意向」が異なることに注意が必要です。
引用:一般社団法人日本ダイレクトメール協会「DMメディア実態調査2020」
また前述の「DMメディア実態調査2020」によると、取引経験がある先からのDMは74.4%の人が「受け取ってもよい」と回答していますが、取引経験がない先からのDMは「受け取ってもよい」と回答した人は17.6%となり、約57%の差が生じています。
商品やサービスを利用した経験の有無、といった企業との関係性がDMの受け取り意向に大きく影響しているといえます。またポスティングチラシのように宛名のないDMを「受け取ってもよい」と回答した人は14.6%と少なく、読んでもらえる可能性は低いと言えます。
DMの開封率を左右する要素
DMの開封率を左右する要素は、以下の3つです。
- 情報の必要性
- 届くタイミング
- パッケージ
人は、「自分のことだ」「まさに今知りたいことだ」と感じる情報に興味を持ちます。そのために、ターゲット顧客の属性をセグメント化し、興味関心に合わせた内容のDMを最適なタイミングで送付できると、開封率が高くなります。
そして、郵送DMであれば、封筒に魅力的な言葉が書かれていたり、ノベルティのようなふくらみがあったりすると、開封されやすくなります。Eメールであれば、タイトルや書き出しが重要です。詳細情報を知りたくなるようなフレーズを用いることで、開封率アップが期待できます。
郵送DMの開封率を上げる3つのポイント
郵送DMの開封率を上げるためには、3つのポイントがあります。
- 開封しやすい工夫
- 魅力的なデザイン
- 中身に興味を持ってもらう工夫
それぞれどのようなポイントなのか、詳しく説明します。
ポイント1:開封しやすい工夫
1つ目のポイントは、開封しやすい工夫をすることです。せっかく興味を持って開封しようとしたのに、ハサミがないと開けられなかったりすると、開封は後回しになります。開封しやすく、また開封するのが心地よい感触であったりすると、開封率アップにつながります。
例えば、紙の封筒であれば、ミシン目を入れたり、ノリを薄めにつけたりしてハサミなしで開封できるようにします。ビニール封筒であれば、開封するためのタブを付けて、引っ張るだけで簡単に開くようにします。圧着ハガキの場合は、どちらから開けるかわかりやすくマークを入れると開封がしやすくなります。
ポイント2:魅力的なデザイン
2つ目のポイントは、ターゲットにとって魅力的なデザインであることです。顧客が「自分に関係のある情報だ」と感じるためには、顧客が好むデザインを施す必要があります。例えば、低学年の子ども向けの通信教育であればイラストをアイキャッチに入れる、大人の女性向け商品であればきれいな色味のシンプルな書体などが考えられます。
また、DMの内容の見せ方としては「情報を全面に表示する手法」と「情報を控えめにする手法」があります。
情報を全面に表示する場合は、キャンペーンの情報や特典を表示したり、または肝心な金額を知るための誘導先を示したティザー(じらし)コピーを表示したりするものです。短期間で効果が確認できるイベントの情報や、低価格の商品に向いています。
情報を控えめにする場合は、ブランドイメージを表すデザインや写真・余白を活用し、金額などの具体的な情報は見せない手法です。高級で上品なイメージを打ち出したい商品や、高単価でじっくり検討する商品に向いています。
ポイント3:中身に興味を持ってもらう工夫
3つ目のポイントは、中身に興味を持ってもらう工夫をすることです。封筒に入っているのに中身が「いつものチラシかな」と想像できてしまっては、開封されにくくなります。「中身は何だろう?」と興味を持たせると、DMの開封率が上がります。
例えば、「(物を)つかむ」grabの名詞形で「グラバー」という言葉があります。ノベルティやサンプルといったグラバーを入れて封筒にふくらみをつけると、中を確認したくなります。ビニール封筒や透明窓のついた封筒であれば、プレゼント、販促グッズや割引チケットなどの中身を見せて、開封したい気持ちを誘いましょう。
Eメールの開封率を上げる3つのポイント
Eメールの開封率を上げるためには、3つのポイントがあります。
- タイトルの工夫
- 配信時間や配信頻度の見直し
- 迷惑メール判定を避ける
それぞれのポイントについて、ご説明します。
ポイント1:タイトルの工夫
最も重要なポイントは、タイトルを工夫することです。郵送DMでは、一番に目がいくのは封筒やハガキの表面であり、Eメールではタイトルです。目を引くタイトルのコツを3つご紹介します。
スマホでの表示文字数を考慮し、15文字に重要な情報を入れます。
・目に止まりやすいパワーフレーズ・数字を入れる
「10月限定キャンペーン!」「プレゼント」など、メリットを感じるフレーズや数字を使います。ただし、「成功する人は〇〇を持っている」などの伏せ字タイトルは、連続して使うとあまり良くない印象になります。
・記号や装飾などで目立たせる
文字以外にかっこや記号などが入っていると、受信ボックスの中で目を引きます。
タイトルについて、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考になさってください。
関連記事:開封率を上げる!メルマガタイトル(件名)のコツ【事例・フレーズ付】
ポイント2:配信時間や配信頻度の見直し
2つ目のポイントは、配信時間や配信頻度を見直すことです。
配信する曜日や時間帯、配信頻度がターゲットの行動に合っているかを見直しましょう。そのためには、ターゲットのライフスタイルを把握しておく必要があります。
例えば、会社員向けであれば、平日の昼休み時や朝晩の通勤時間帯、休日などに配信します。主婦向けであれば、平日の日中帯や、夜の家事が落ち着いた頃に配信します。関係や商品によって接触回数が多くてもよければ、配信頻度を上げます。
「メルマガ配信時間・曜日の正解は?効果的なタイミングをターゲット別に考察」の記事にて、詳しく解説していますので、配信タイミングを検討する際の参考にしてみてください。
ポイント3:迷惑メール判定を避ける
3つ目のポイントは、迷惑メール判定を避けることです。
迷惑メール判定とは、受け取る側のメールツールがフィルタリングし、自動的に迷惑メールボックスに振り分けることです。
件名が空欄であったり、配信リスト内に無効なメールアドレスが多く送信エラーが繰り返される送信元であったりすると、迷惑メール判定される可能性があります。
この他にも、迷惑メールとして判定される例を、以下のページでご紹介しています。
関連記事:【2022年最新】メルマガ開封率の平均値とは?効果測定と開封率を上げる7つのテクニックをご紹介
ダイレクトメール(DM)の反応率の目安【種類別】
DMの「反応率」は以下の通りです。
※数値は調査によって異なりますので、あくまでも目安として捉えてください。
・郵送DMを受け取って、ネットで調べるなど何らかの行動を起こした比率=15.1%
・購入や資料請求、問い合わせといった行動の合計=4.5%
引用:一般社団法人日本ダイレクトメール協会「DMメディア実態調査2020」
<Eメールの反応率>
・反応率(開封数に対するクリック数)=10.5%
・クリック率(配信数に対するクリック数)=2.3%
引用:米国キャンペーンモニター社
ダイレクトメール(DM)の反応(レスポンス)率を上げる4つのポイント
郵送とメールに共通する、DMの反応率を上げるためのポイントは、4つあります。
- 適切なタイミング
- ターゲットが興味を持つ内容
- 魅力的なオファー
- 動画の活用
それぞれのポイントを見ていきましょう。
ポイント1:適切なタイミング
1つ目のポイントは、適切なタイミングです。適切なタイミングに送信するには、ターゲットのライフサイクルの中で、DM送付時期がどのような状況にあたるのか?を考慮することが必要です。
高校受験の準備を始めるライフサイクルの中で、4月からの学習計画を検討するためには、
DM送付の適切な時期は2月頃だと考えられます。
ポイント2:ターゲットが興味を持つ内容
2つ目のポイントは、ターゲットが興味を持つ内容にすることです。読み手の興味関心を意識してDMを作成すると、最後まで読んでもらえる可能性が高まります。またターゲットの好みやプロフィールに合わせて内容を作成するパーソナライズDMは、一般的なDMよりも効果的です。
書き方としては、「皆様へ」ではなく「あなたへ」と一人ひとりに向けて手紙を書くような、パーソナライズな表現にすると、自分ごととして受け取られやすくなります。
関連記事:【例文付】効果的なダイレクトメール(DM)の書き方を目的、シチュエーション別に解説
ポイント3:魅力的なオファー
3つ目のポイントは、ターゲットにとって魅力的なオファーがあることです。オファーとは、商品やサービス本体以外に、顧客に提供する「特典」のことです。顧客に来店を促したり、購買意欲を高めたりする役割があります。
前述の「DMメディア実態調査2020」によると、単なる新商品・サービスの案内DMよりもクーポンの案内・プレゼントの印刷物DMのほうが、購入経験者でプラス7.5%、未購入者でプラス15.9%となり、具体的なメリットの提示が開封率アップにつながることが分かります。
・新商品の試供品
・セールの優待券
・ポイントクーポン
・来店プレゼント
・イベント招待
ポイント4:動画の活用
4つ目のポイントは、DM内で動画を活用することです。動画は、文字情報では伝えにくい、表情や感情を端的に表現できます。1分間の動画は180万語相当(Webページで3,600ページに相当する数)とも言われています。
メール内に動画コンテンツを設置することで、興味をひくだけでなく、短時間で情報を伝えられ、印象に残りやすくなる効果も期待できます。また、動画付きのメルマガは珍しいため、他社との差別化やイメージアップも期待できるでしょう。
郵送DMにおいては、印刷物にQRコードを印刷し、リンク先から動画を閲覧してもらう方法があります。ターゲットに合わせた動画を送り、文字のみの一般的なDMとは違った「特別感」を演出します。動画視聴後は商品・サービスへの関心も高まるため、Webサイトへの送客など次のアクションも期待できます。
また近年ではインタラクティブ動画(触れる動画)という、視聴者がタップ/クリックのできる仕掛けを組み込んだ動画手法がトレンドです。従来「視聴のみ」で終わっていた動画の中に「仕掛け」があることで、双方向コミュニケーションをはかることができるため、お問い合わせや資料請求などのネクストアクションを促進するDMの役割と、大変マッチしています。実際に、子ども層~高校生向けの通信教育のDM(郵送)や、銀行・保険会社といった金融業界におけるメルマガ、ファッションサイトのメルマガなどで活用されています。
まとめ
当記事では、DMによる効果として、開封率と反応率について解説しました。開封率とは、DMが開封された割合であり、反応率とは、DMによって購入や資料請求、問い合わせなどのアクションが行われた割合のことを指します。ご紹介した開封率・反応率を上げるポイントを参考にしていただき、単に送るだけでなく、「ターゲットの心を動かすDM」をぜひ企画してみてください。
執筆者
岡本 祐樹
MIL株式会社 インサイドセールス マネージャー
京都大学大学院を中退した翌月にITベンチャー企業に早期就職。SaaSのグループ会社にて大手企業の新規開拓営業を経験した後、IS代行のグループ会社に異動しコンサルティングに従事。動画編集フリーランスとして独立後、インタラクティブ動画マーケティングに可能性を感じ、2021年にMIL株式会社へ入社。ISの立ち上げをミッションに、既存顧客のデータからターゲティングとアプローチを繰り返し、日々多くのお客様の課題解決に伴走している。定期的にウェビナーにも登壇。