新規リードの獲得やナーチャリングを目的に、ウェビナーを開催しているBtoB企業は珍しくありません。しかし、十分な集客ができていないがために、期待した成果が得られないと悩む担当者は多いのではないでしょうか。
WACUL株式会社の調査によれば、BtoB担当者がウェビナーを知ったきっかけとして圧倒的に多いチャネルは「メール(81.5%)」であると判明しています。メール配信ができる相手とは、自社のハウスリストに含まれる「既存リード」であり、「新規リードの獲得」を目的とするならば、メール配信以外の積極的な集客が必要になるでしょう
新たなリードを集客するのに有効な施策が、集客サイトやSNSへの広告掲載です。本記事では、ウェビナー広告の必要性やその種類、集客力を高めるポイントなどを分かりやすく解説します。また後半では、BtoBでの集客に有効な「Facebookのバナー広告」の事例もご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
目次
ウェビナーの集客になぜ広告が必要か?
ウェビナーを成功に導くには、前提条件として「多くの参加者を集める」ことが重要です。
ウェビナーは、インターネット接続さえあれば気軽にどこからでも参加してもらえるという特性があり、新規リードの獲得に適していますが、開催テーマによっては購買意欲の醸成(ナーチャリング)や関心度合いの把握(クオリフィケーション)にも役立てられるなど、うまく集客することで費用対効果の高い施策となります。
ただし、ウェビナーには企画段階から当日の運営までの人的リソース・コストが必要ですし、平均参加率は19.4%という調査もあるため、費用対効果を意識して十分に集客する必要があります。
通常、BtoB企業が実施する主な集客方法は、自社サイトへの掲載やメール配信、自社アカウントのSNSでの告知などです。しかし、これらの方法でアプローチできるのは主に既存リード・既存顧客ではないでしょうか。
新規リードの獲得が目的の場合は、自社を認知していない層や興味がなかった層にもアプローチすることが重要になるため、広く周知することのできる「広告」の活用が有効な集客施策となります。
関連記事:ウェビナーの集客方法5選!集客力と商談化率を高めるポイントを合わせてご紹介
BtoB企業に適した「ウェビナー広告」の種類
BtoB企業に適したウェビナー広告の種類は以下の通りです。
- ウェビナー集客サイト(無料)
- SNS広告
それぞれの特徴を見ていきましょう。
ウェビナー集客サイト(無料)
ウェビナー集客サイトとは、ウェビナー情報をまとめたサイトです。集客サイトに広告を掲載すれば、ウェビナー参加に興味があるユーザーにアプローチできます。
以下では、無料で情報を掲載できるウェビナー集客サイトを厳選して3つご紹介します。
Web担当者Forum(無料)
出典:Web担当者Forum
Web担当者Forumは、Webサイトの構築・運用業務、Webマーケティング、PR業務の担当者に支持されるメディアです。2023年1月の月間PV数は300万以上、ユニークユーザー数は78万以上であり、多くの潜在顧客へのアプローチに期待できます。
Web担当者Forumには、無料で下記の情報を掲載可能です。
- ウェビナータイトル
- 日時
- 場所
- 参加費
- 主催
- URL
シンプルな広告掲載となるため、Web担当者Forumで潜在顧客を集客するためには、最も目立つ要素であるタイトルでユーザーの興味関心を惹かなければなりません。タイトルは通常テキストよりも大きく、太字で掲載されるため、ユーザーの興味関心を引きやすいためです。
<ウェビナー広告の掲載方法>
「マーケティング・Web系セミナー情報まとめ コーナーの記事一覧」ページより「セミナー情報を編集部に伝える」をクリックして、Googleフォームに必要事項を記入することで完了します。
Peatix(無料)
出典:Peatix
Peatixはイベント管理・告知サイトです。有料イベントを掲載する場合のみ、実績に応じた決済処理費用が発生します。実際にPeatixでウェビナーを検索してみたところ、営業やマーケティング、テクノロジー、人事などあらゆる業種向けのウェビナーが告知されていました。
グループとは、同じ興味関心を持つユーザーのコミュニティであり、ウェビナー参加者は自動的にグループに追加されます。Peatixでウェビナーやイベントの集客を継続すれば、徐々にグループが拡大し、安定した集客効果を見込めるでしょう。
<Peatixでウェビナー広告を掲載する流れ>
1:グループ作成
2:イベントページ作成
3:告知
4:ウェビナー当日の受付
ITreview(無料)
出典:ITreview
ITreviewは、国内最大級のIT製品/SaaSのレビューサイトとして広く知られていますが、ウェビナー情報の掲載も可能です。比較検討段階のユーザーが多いため、商材の紹介やデモ体験、導入相談会などの顕在層向けのウェビナーが多く掲載されています。
出典:ITreview
<ITreviewにウェビナー広告を掲載する条件>
ITreviewにウェビナー情報を掲載するためには、直近1年以内に自社キャンペーンで3件以上のレビューを獲得しなければいけません。そのため、ウェビナー広告を掲載できるのは「IT製品」や「SaaSベンダー」に限られます。
SNS広告
SNS広告もまた、ウェビナー集客に有益な施策です。数あるSNSプラットフォームの中でも、BtoBのウェビナー集客に多用されているFacebookとLinkedInについてご紹介していきます。
Facebook広告
出典:Meta広告ライブラリ
Facebookは30代と40代の4割以上が利用するSNSです。Facebookのアルゴリズムはグローバル36億人のユーザーデータを学習しているため、非常に精度の高いターゲティング機能で、狙ったユーザーに広告を届けられるという特徴があります。
性別や年齢などのデモグラフィクスだけではなく、自社サイトへのアクセス経験があるユーザーや既存の顧客と類似しているユーザーにもターゲティングすることが可能。自社への興味関心が高いユーザーにウェビナー広告を配信できるため、温度感の高いリード獲得が期待できるでしょう。
関連記事:【2022年最新】Facebook広告の始め方・やり方を「画像付き」でわかりやすく解説!
出典:LinkedIn
LinkedInはビジネスパーソン向けのSNSです。Facebookと同様に実名登録という共通点がありますが、Facebookは「友人知人などのリアルな人間関係」をベースにつながるのに対し、LinkedInは「ビジネスの関係や興味関心」に基づいてつながるという違いがあります。
eMarketerの調査によれば、BtoB担当者の40%が「LinkedInは質の高いリード創出に最も有効なチャネル」と回答。また、HubSpotの調査ではLinkedInのコンバージョン率(2.74%)は、Twitter(0.69%)とFacebook(0.77%)の約3倍高いとわかりました。
LinkedIn上で広告を出稿すれば、自社業界への興味関心が高いビジネスパーソンへアプローチできるため、多くの集客を見込めるでしょう。
ウェビナー集客率を高める!広告クリエイティブ&運用のポイント5点
ウェビナー集客率を高めるためには、下記ポイントを意識してクリエイティブの作成と運用をしましょう。
-
- 1:ターゲットの課題感に訴求するタイトル
- 2:タイトルが引き立つバナーデザイン
- 3:ウェビナー参加メリットの明確化
- 4:申込負荷の軽減
- 5:告知時期
各ポイントの詳細を解説します。
1:ターゲットの課題感に訴求するタイトル
ウェビナー広告で最も重要な要素の一つが「タイトル」です。
タイトルはユーザーの興味関心を引く役割があります。魅力的なタイトルで広告のクリックを促せば、「さらに知りたい」と詳細を見てもらえ、申し込むかどうかを検討してもらえるでしょう。タイトル作成のポイントは、ターゲットの課題感に訴求して、「これは自分のためのウェビナーだ」と自分ごと化してもらうことです。
出典:株式会社イノーバ
例えば、コンテンツマーケティング支援企業の株式会社イノーバは、「BtoBサイト作りっぱなしからの脱却を目指せ!成功につながる運用戦略と具体的な手法を学ぶ」というタイトルのウェビナーを下記ターゲットに向けて開催しています。
- BtoB担当者
- マーケティング成果につながるサイト運用ができていない
- リニューアル後のサイトがそのまま手付かずになっている
- 自社サイトをもっと商談獲得に活用したい
「サイト運用ができていない」「サイト経由でリード獲得ができていない」と悩むBtoB担当者が、このウェビナータイトルを見ると、興味が湧くのではないでしょうか。
まずはターゲットの課題や悩みを明確にし、その解決策があることをタイトルで伝えましょう。
関連記事:集客力UP!ウェビナータイトルの付け方とポイントを、タイトル例と共に紹介!
2:タイトルが引き立つバナーデザイン
ウェビナー広告でユーザーの興味関心を集めるには、タイトルが引き立つバナーデザインが欠かせません。
スマートフォンが普及した現代において、人間の脳の処理速度は0.03秒にまで速くなっています。ユーザーは広告の一つひとつを丁寧に見るのではなく、スキャンをするかのように一瞬で判断し、興味を持った広告のみ目を止めて、詳細を確認するといえるでしょう。
こうしたユーザー行動を踏まえて、一瞬で興味関心を引く「バナーデザイン」を制作することが大切です。
基本的に、BtoB企業のウェビナー広告のデザインは下記要素で構成されます。
- タイトル
- サブコピー
- 日程
- 登壇者の写真、肩書
- 企業ロゴ
バナーデザインの基本は、一番伝えたい情報を大きく目立つようにすること。ウェビナー広告においては、タイトルを一番目立つようにします。
後ほどバナー事例をご紹介しますので、事例や他社のバナーを参考にしながら、作成するとよいでしょう。
3:ウェビナー参加メリットの明確化
ウェビナー広告の集客力を高めるには、参加メリットの明確化も有効です。
WACUL株式会社の調査によれば、BtoBのウェビナー参加者の99.4%が「業務に役立つノウハウや事例を知るため」にウェビナーに参加していると判明。この調査からも、参加して得られる「業務に役立つノウハウ」が分かれば、ウェビナ―参加への興味が増すと読み取れるでしょう。そのほかにも、ライブ診断や資料などの参加特典もメリットです。
ここで事例をひとつ見てみましょう。
出典:Senses
営業支援ツールSFAを提供する株式会社Sensesは、SFAの機能性や導入の必要性がわからない担当者に向けてウェビナーを開催。上記画像の通り、SFAの「基本」がわかるというメリットが明確に提示されています。また、ターゲットは役員や経営者、営業責任者などの忙しい層です。そこで「20分」という短時間で必要事項を学べるメリットも提供しています。
4:申込負荷の軽減
ウェビナー申込時の負担になる可能性があるのはフォーム入力です。ターゲットの情報を詳細に獲得しようと、申込フォームの項目数を多くした場合、ターゲットの入力負担が大きくなり、申込率が低下してしまいます。WACUL株式会社の調査では、フォームの項目数を1つ減らすだけで、通過率が約2%向上するとのこと。
この調査結果を踏まえ、集客力アップを狙うなら、氏名とメールアドレス、会社名など、参加者とコンタクトを取り、ウェビナー後のフォローアップに必要な項目のみフォームに設置するとよいでしょう。
上記画像は、弊社のウェビナー申込フォームです。氏名やメールアドレス、会社名などの基本情報に加えて、ドロップダウン方式で役職やビジネスモデル、視聴の目的などを設定しています。ドロップダウンを導入すれば、ユーザーの入力負担の軽減が可能です。
様々な業界のBtoB企業のウェビナー申込フォームを確認したところ、以下項目を設定している企業が多いです。
- 氏名
- メールアドレス
- 電話番号
- 会社名
- 役職
- 参加目的
但し、ウェビナー開催の最終目的は、獲得したリードを商談や受注につなげることです。申込フォームの項目は、ウェビナー後にリードにアプローチをするインサイドセールスの担当者と相談したうえで、選定することをおすすめします。
5:告知時期
ウェビナーの告知は開催1カ月前から始めましょう。GoToWebinarの調査では、ウェビナー開催の4週間前より、定期的に告知をすれば、登録率が平均12%向上するとのこと。特に重要な告知期間は「開催の1週間前」です。
出典:GoToWebinar
同調査では、「参加者の59%がウェビナー開催1週間以内に申し込みをしている」、「そのうちの17%がウェビナー当日に申し込みをしている」と判明しています。ウェビナーの集客力を高めるためにも、開催1カ月前にはウェビナー広告の掲載や自社サイトなどで告知を開始。1週間前にはメールやSNSでの告知にも注力し、当日の開催間近まで粘り強く告知することが重要です。
【参考】BtoBウェビナーのFacebook広告バナー事例まとめ
ここからは、バナーデザインの参考になるように、BtoBウェビナーのFacebook広告の事例をいくつかご紹介します。
・シナジーマーケティング株式会社
出典:Meta広告ライブラリ
シナジーマーケティング株式会社は、Googleが提供する解析ツール「GA4(Google アナリティクス 4)」への移行期間が間近に迫ったことを受けて、GA4のサイト解析入門ウェビナーを開催。ウェビナータイトルの上に「UA終了まで残り僅か!」というメッセージを入れることで、まだGA4への移行が完了していない担当者やGA4を使いこなせていない担当者に向けて緊急性や危機感を醸成できているでしょう。
・Hubspot
出典:Meta広告ライブラリ
HubSpot社のウェビナー広告は、BtoB企業の典型ともいえるデザインです。左上に目立つように「マーケティングリーダーが今こそ持つべき視点とは?」というタイトルを記載し、右下には登壇者の写真を掲載しています。
バナーデザインにおいては、ユーザーはZを描くように「左上 → 右上 → 左下 → 右下」の順に情報を見る傾向にあります。特に注目を集めるのが、左上と右下の要素です。HubSpotのバナーデザインは、左上にタイトル、右下に登壇者写真と最も伝えたい情報を配置しています。
また、CTAボタンに「30秒で完了」という文言を入れて、申し込みの簡易性を訴求。背景には、HubSpotのブランドカラーを使用しており、同社を認知しているユーザーは瞬間的に「これはHubSpotのウェビナー広告だ」と想起できるでしょう。
出典:Meta広告ライブラリ
こちらは弊社MILのFacebook広告です。クリエイティブに関しては、最も目立つであろう真ん中上部にタイトル「LPのあるべき姿とは?説得から納得のコミュニケーションへ」を設置。また、ユーザーの視線が集まりやすい右下に登壇者の写真を掲載しました。
クリエイティブで興味を持ったユーザーを申し込みに遷移させるために、広告の文言でもターゲットの抱える課題を記載して、自分ごと化を推進しています。
広告以外の手法で、集客を最大化するには?
ウェビナーの集客を高める方法は広告だけではありません。ここからは、広告以外の手法で集客を最大化する2つの方法をご紹介します。
広告以外の集客方法1:他社との共催
自社のハウスリストが少ない場合、他社とウェビナーを共催することで、無料で他社のハウスリストに含まれるリードにアプローチできます。共催で獲得したリードを商談化へとつなげるためには、まず慎重に共催先を選定しなければいけません。理想は「競合ではない(サービス提供分野が異なる)・ターゲットユーザーが共通している・十分な集客チャネルを保有している企業」とタッグを組むことです。
弊社MILはWebマーケティング支援を提供しているFaber Company社との共催ウェビナーを実施しました。
Faber Company社のリードは「集客ができていない」、MILのリードは「コンバージョンができていない」という課題を抱えています。両社のターゲットは一致しているものの、悩みが異なるため、競合することなくリード獲得が見込めます。Faber Company社のリードにとって、弊社の「インタラクティブ動画」は有効な解決策となります。
このようにリードの層や課題の範囲が共通している共催相手を選ぶことが重要です。
広告以外の集客方法2:アーカイブ配信
続いて2点目は、ウェビナーのアーカイブ配信(オンデマンド配信)です。
ウェビナーのアーカイブ配信とは、録画したウェビナー映像をいつでも視聴できるように公開する配信手法です。ON24の調査によれば、アーカイブ配信のみを視聴する人は全体の31%とのこと。ウェビナーをアーカイブ配信することで、多忙な意思決定者や、日中の視聴が難しい医療関係者などのユーザーにもアプローチできるため、より多くのリード創出を見込めます。
関連記事:ウェビナーアーカイブの配信方法&成果を出すポイントを解説!動画でリード獲得やナーチャリングを促進
まとめ
ウェビナーで「新規リードの獲得」や「ナーチャリング」を実施する場合、事前の集客が欠かせません。ウェビナー集客サイトやSNSなどで広告を出稿することで、多くの潜在顧客にアプローチできます。タイトルが目に留まるバナーデザインを作成し、1か月前からは複数チャネルで告知しましょう。
また、他社との共催やアーカイブ配信も集客力の最大化に貢献します。特にアーカイブ配信は、ゼロからコンテンツを作成するなどの大きな追加コストをかけることなく、リード創出が可能です。ウェビナー広告とアーカイブ配信を合わせれば、リーチ数の最大化ができるでしょう。
執筆者
瀧口 愛
MIL株式会社 マーケティング
Web制作会社でサイト構築に従事後、MIL株式会社へ入社し、マーケティングチームに所属。ウェビナーや展示会実施の基盤を構築し、毎月のウェビナーやオフラインイベントの企画・運営全般を担当している。その他、メルマガ配信やマーケ全体の施策効果分析など、フィールドマーケティング領域全般を担う。