WebサイトやLP経由のコンバージョン獲得を目指し、Web広告を運用しているものの、なかなか成果に繋がらない場合、新しい角度からのアプローチとして「動画広告」を検討される方も多いのではないでしょうか?
動画クリエイティブを活用した広告なら、「テキスト・画像のみの広告」以上に、ユーザーの自社商材への理解を深め、態度変容の促進が期待できます。ただし、動画広告運用を最適化するためには、動画広告の制作・出稿に必要な費用を正確に把握することが必要です。
今回は、動画広告の配信費用と制作費の相場について、配信媒体の違いも踏まえて解説します。費用対効果を最大化するポイントについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
動画広告費用の仕組み
動画広告とは、YouTubeやFacebookなどの広告媒体で出稿する、動画クリエイティブを用いた広告を指します。動画広告にかかるコストは「配信費用+制作費」です。
そして配信費用は、出稿する媒体ごとに決められている課金形態によっても変化します。
例えば、YouTube動画広告では「広告主」が動画広告を出稿し、ユーザーが動画を閲覧・クリックすることで、費用が発生する仕組みです。
動画広告の出稿で発生する費用は「広告の表示回数」に応じても変化。「自動入札」「手動入札」のオプションも存在し、自動入札ではプラットフォーム側が広告主の目標に合わせて最適な入札額を自動で設定し、手動入札を選択すれば自社が直接入札額を設定できます。
広告費用は「設定したターゲティング条件」によっても変わってきます。地域や年齢、性別、興味・関心、行動履歴、使用デバイスなど、ターゲティング条件が詳細であるほど、広告費用は高くなりやすい点には留意が必要です。
後ほどご紹介する「動画クリエイティブの制作費」も加味して、費用対効果に注意しながら取り組んでいきましょう。
動画広告の課金形態とは?
動画広告の代表的な課金形態として、以下のような種類があります。
CPV(視聴)課金 | 動画広告が1回再生されるごとに課金される形式。「〇〇秒以上再生される」「最後まで再生」など、出稿する媒体によって「再生の定義」は異なる。 |
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CPM(インプレッション)課金 | 動画広告が「1,000回表示されるごと」に課金される単価。 |
CPC(クリック)課金 | ユーザーが動画広告のリンクを「1回クリックするごと」に課金される方式。 |
CPE(エンゲージメント)課金 | SNSの「いいね」「リツイート」「リプライ」などのアクションに応じて課金が発生する方式 |
CPI(アプリインストール)課金 | アプリのインストール数に応じて課金される形式形式。 |
費用対効果を用対効果を最大化するためには、上記の課金方式のうち、自社の目的に適したものを選ぶのが有効です。例えば「CPMは表示回数が最大になるよう配信されるため、多くのユーザーの目に留まりやすい」「CPCは、クリックされなければ課金されないため、リスクが低い」などが考えられます。
媒体別!SNS動画広告の配信費用
動画広告を配信するSNS媒体の代表例は、次の通りです(2023年4月現在)。
- YouTube動画広告
- Facebook動画広告
- Instagram動画広告
- Twitter動画広告
- LINE動画広告
- TikTok動画広告
ここからは、媒体ごとの特徴や課金形態について解説します。
YouTube動画広告
YouTube動画広告では「動画が始まる前に表示される広告」や「動画の再生途中に表示される広告」などの形式があり、それぞれの形式によって課金方式も異なります。
参考:Google広告ヘルプを基に弊社にて作成。
当然、課金金額が多いほど露出も多くなりますが、初めて出稿する場合や運用に関するノウハウがない場合は「まずは少額から出稿すること」も検討しましょう。
Facebook動画広告
引用:Meta
Facebookの動画広告は、Facebook for Businessのアカウントを使って出稿する広告です。広告費は「1日の予算」「掲載期間の通算予算」のいずれかを選ぶことができ、1日100円以上から設定可能。
参考:Meta「Facebook広告ガイド」を基に弊社にて作成。
※注1:「ThruPlay」とは動画が15秒再生(15秒未満の動画の場合は視聴完了)ごとに課金される形式のこと。
Instagram動画広告
引用:Meta
InstagramはFacebookと同様
のMeta社のサービスであるため、広告出稿に関する基本的なシステムは後述するFacebook動画広告と同様です。
参考:Meta「Instagram広告」を基に弊社にて作成。
Instagramでは広告費100円から動画広告の出稿が可能。広告を掲載する際には「1日あたりの予算」「掲載期間」も指定できます。
Twitter動画広告
Twitterは課金形態に応じて費用が変わる仕組みで、課金形態の種類は上記の通りです。
参考:Twitter広告キャンペーンの基本を基に弊社にて作成。
Twitter動画広告は課金形式も多いため「拡散目的ならCPM・CPE」「アクティブユーザーに広告費用を割きたいならCPC」など、運用目的にマッチしたものを選択しましょう。
LINE動画広告
引用:LINE for Business「LINE広告の費用ガイド 最適な予算設定、課金方式、費用対効果を高めるコツ」
LINE動画広告では、LINEのさまざまなコンテンツに連携(例:LINE NEWSやLINEマンガ)した広告出稿を行えます。課金方式はCPM・CPCに加え「友だち追加ごとに課金」も選択可能です。
「友だち追加ごとに課金」とは、広告を通じてLINE公式アカウントに友だち追加されると費用が発生する方式。友だち追加した分しか費用が発生しないため、費用を抑えやすいのが特徴です。
参考:LINE for Business「LINE広告の費用ガイド 最適な予算設定、課金方式、費用対効果を高めるコツ」を基に弊社にて作成。
なお、LINE広告における「インプレッション」の定義は、動画広告がユーザーのデバイスで100%表示された状態で、99%以下の表示では費用が発生しません。
TikTok動画広告
TikTok広告は、そもそもプラットフォームが動画専門であるため、配信できる広告も動画のみです。
参考:Tiktokビジネスヘルプセンターを基に弊社にて作成。
※注2:oCPMとは「最適化インプレッション単価」の意味であり、広告主が希望するアクションを起こしてくれそうなユーザーに広告を表示し、表示回数によって費用が発生する課金形式。
動画広告の制作費相場
動画広告の費用対効果を最大化するためには「制作費用」についても把握しておく必要があります。制作費は「動画の撮影有無」「制作時間」「必要な人材」などの複数要素により、大きく変動します。
代表的な以下の2パターンに分けて、動画広告の制作費の相場を解説します。
- パターン1:動画撮影なしでフリーランスに動画編集のみを依頼する
- パターン2:企画や撮影も含め、大手制作会社に動画制作一式を依頼する
次項より、個別にみていきましょう。
パターン1:動画撮影なしでフリーランスに動画編集のみを依頼する
素材は自社で提供し、フリーランスに動画編集のみを依頼するなら「数万円/本」程度での依頼も可能です。例えば、フリーランス・企業間の受発注用プラットフォーム「Lancers」が公開している料金相場をみてみると、以下の通りです。
引用:Lancers「仕事の種類・参考価格」
ただし、個人のフリーランスの場合、成果物のクオリティにバラつきがあり、コミュニケーションコストがかかるケースも想定されます。
パターン2:企画や撮影も含め、大手制作会社に動画制作一式を依頼する
「動画撮影も伴う、プロモーション動画」の制作一式を動画制作会社に依頼した場合、100万円前後の費用を見込んでおく必要があります。具体例として、株式会社プルークスのホームページに掲載されている価格表では、下記のような内訳になっています。
引用:株式会社プルークス「動画制作の相場・各マーケティング支援サービスの費用」
ディレクターや構成作家、カメラマン、編集スタッフ、タレントのキャスティング、衣装担当、メイク担当などに必要な「人件費」に加え、「撮影機材」「撮影スタジオ」などにもこだわれば、制作にかかる費用はさらに高額になります。そのため、事前に「自社が運用する動画広告には、どの程度のクオリティが必要なのか」を見極めておきないようにしましょう。
動画制作のステップについて詳しくは、以下記事をご参照ください。
関連記事:動画広告制作の5ステップを解説!作り方のコツや動画広告制作に強い会社5選も合わせてご紹介
動画広告の費用対効果を最大化する3つのポイント
動画広告の費用対効果を最大化するためには、以下の点に気をつけましょう。
- 媒体選定と媒体に合ったクリエイティブ
- 広告の遷移先での動画活用
- 動画広告運用に強いパートナー企業の選定
それぞれについて、個別に解説します。
媒体選定と媒体に合ったクリエイティブ
媒体ごとに広告の表示形式や視聴環境、ユーザー層が異なります。そのため、媒体ごとに最適なクリエイティブを作成することが、動画広告の費用対効果を最大化させるためには必須。
動画広告の費用対効果を最大化したいなら、事前に各媒体の「ユーザー層」「効果的なクリエイティブの特徴」をしっかりと把握して「自社が作るべきコンテンツはどのようなものか?」を明確にしましょう。
媒体によっては、短い動画が効果的な場合があります。例えば、Twitter公式では、動画広告の長さは「15秒」と推奨されています。
また、縦型動画が主流のプラットフォーム(例:InstagramやTikTokなど)では「ユーザーにとっての見やすさ」を踏まえ、縦型の動画クリエイティブを作成するのが有効。動画広告は、音声なしで視聴されるケースも想定して、字幕やテキストオーバーレイ(サムネイルや動画途中に表示される加工されたテキスト)を用いて、視聴者がメッセージを理解できるようにすることが重要です。
各媒体の特徴については、以下の記事で詳しくご紹介しています。合わせてご覧ください。
関連記事:【2023年最新】SNS動画広告の媒体一覧と特徴を詳しく解説!媒体選定や成果最大化のポイント付き
広告の遷移先での動画活用
動画広告の目的は「リンクのクリックを促すこと」ではなく、その先の売上の最大化にあります。広告のみを動画にするのではなく、LP・広告のクッションページでも動画を活用することで、ユーザーの理解や興味関心を高め、コンバージョンを促進可能。
具体例として、2社の活用事例についてみていきましょう。
事例①|株式会社Greenspoon
冷凍のスープ・サラダ・スムージーを毎月ユーザーに届けるサブスクリプションサービス「GREEN SPOON」を提供している株式会社Greenspoonは、広告運用において以下の課題を抱えていました。
- 成約に至ってもらうまでのハードルが高い。
- これまでにない新しい価値を提供する商品であるため、ユーザーの理解促進のためには説明コストがかかる。
そこで、新規顧客にGREEN SPOONを「自分ごと化」してもらい、購入につなげる手段として、広告の遷移先のクッションページで「インタラクティブ動画」を活用。インタラクティブ動画は、視聴者が画面をタップして「ストーリーを選択」「クイズへの回答」を行うことで、自ら参加できる点が特徴です。
関連記事:LPへの遷移率が約2倍!SNS広告のクッションページにアンケート型のインタラクティブ動画を活用
アンケート型のインタラクティブ動画を使い、ユーザーがGREEN SPOONへの理解を深められるように「はい/いいえ」で回答できる設問を表示し、最後に「アンケート回答者限定特典」のオファー内容が提示される構成になっています。
結果的に、静的なクッションページと比較して、インタラクティブ動画を使ったクッションページはLPへの遷移率が約2倍となりました。広告のみを動画にするのではなく「LPに動画を活用する」「動画のクッションページも採用する」といった手法を採ることで、ユーザーの理解や興味関心をさらに高め、コンバージョンを促進できるでしょう。
事例②|株式会社シェーンコーポレーション
全国で英会話教室を展開している株式会社シェーンコーポレーションは、コロナの影響を受けて大人層の集客が難しくなり、「子ども層」へとターゲットを変更。Web経由での「無料体験レッスン」の申込促進のため、自社サイトに「インタラクティブ動画」を設置しました。
関連記事:シェーンコーポレーション様:インタラクティブ動画接触者のCVRは非接触者の約5倍に
インタラクティブ動画では、「講師」「授業」「子どもの様子」の3つの項目から、視聴者が興味のある項目を選んで、視聴することができます。動画を通じて「子供が楽しめる英語教室」「専門の研修を受けた講師の子どもとのコミュニケーション」などの特徴を訴求することで、インタラクティブ動画の「接触者」は「非接触者」に対し、CVRが約5倍ほど優位となる結果になっています。
動画広告運用に強いパートナー企業の選定
動画広告でCVRを最大化させるためには、「広告効果の検証・改善」をスピーディーに行うPDCAサイクルが極めて重要です。自社で動画広告の運用に関するノウハウがない場合は、外部のパートナー企業とともに広告運用に取り組みましょう。
パートナー企業選定の際には「自社の課題感を理解した提案を行ってくれるか」についてもチェックが必要です。
企業によっては「動画広告運用のコンサルティング」「内製化に必要なツール」を提供している場合もあります。「パートナー企業に丸投げ」するのではなく、自社でもノウハウ・知見を蓄積することを目指して、自社に合ったパートナー企業を選定しましょう。
関連記事:動画広告の運用の流れ&ポイントとは?広告運用会社5選もご紹介
まとめ
動画広告を使ってコンバージョンを獲得できたとしても、費用対効果が悪ければ、結果的に自社の損失につながりかねません。動画広告は「最適な課金形式の選択」「各媒体に適したクリエイティブの作成」を行い、費用対効果を最適化させることが必要です。
また、コストパフォーマンスを最大化する上では、広告のみを動画にするのではなく「動画のクッションページ活用」「遷移先LPでの動画活用」なども合わせて実施することで、ユーザーの理解や興味関心が高まるでしょう。多角的なアプローチで、コンバージョンを最大化させましょう。
執筆者
黒谷 純子
MIL株式会社 マーケティング
大学卒業後、編集プロダクション等を経て、人材サービス企業のマーケティング職に従事。2021年3月よりMIL株式会社に入社し、現在は自社サイトやMILblogの企画・ディレクション・執筆等を担当している。
Twitter : https://twitter.com/MIL29292841