近年、新型コロナウイルスの拡大により顧客との接点が減少するなど、BtoB企業各社はマーケティングや営業活動に大きな影響を受けました。対面の営業活動からオンラインを駆使した営業活動へと改革を行うBtoB企業が増加する中、オンラインでの新たな顧客接点として注目されているのが「ウェビナー」です。
株式会社キャスターの「オンラインセミナー(ウェビナー)に関するアンケート」では、90%以上の回答者が「コロナ禍での新規顧客獲得にウェビナーは重要と感じている」と回答しています。コロナ禍が終焉しつつある現在も、ウェビナーを継続して行うBtoB企業はほとんどであり、ウェビナーがマーケティング施策の一つとして定着している企業が多いのではないでしょうか。
しかし、中には「ウェビナーで新規リードを獲得したいが、具体的な方法が分からない」「ウェビナーを開催しているものの、既存リードのフォローや育成にはつながっていない」などと悩むマーケティング担当者もいるかもしれません。
当記事では、ウェビナーと通常のセミナーとの違い、BtoB企業がウェビナーを実施するメリットとデメリット、集客方法やウェビナーの事例を踏まえ、解説していきます。
目次
ウェビナー(Webinar)とは?オフラインセミナーとの違い
ウェビナーとは、オンライン上で開催するセミナーを指します。ウェビナーとオフラインセミナーでは、以下のような特徴の違いがあります。
BtoB企業のオフラインセミナーとウェビナーは開催形態などの違いがあるものの、どちらも「獲得」と「育成」の役割を担います。集めたいターゲットや開催目的、予算などを踏まえながら、開催形態を決めると良いでしょう。
BtoB企業のウェビナー増加の背景
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、BtoB企業の営業やマーケティング活動の一環としてウェビナーを開催する企業が増加しています。
ネオマーケティング株式会社が行った「新型コロナウイルス感染拡大前後のBtoB企業のマーケティング活動」調査では、新型コロナウイルス感染拡大後に効果が上がった施策についての質問に対し、「オンラインセミナー(ウェビナー)」が一番多い結果でした。
出典:Markezine「新型コロナ感染拡大後のBtoBマーケ、効果が上がった施策はウェビナー【ネオマーケティング調査】」
また、BtoB企業がウェビナーを行う一番の目的は、リード獲得やリード育成(ナーチャリング)と考えられます。株式会社博報堂プロダクツの「オンラインイベントに関する調査」では、オンラインイベントの開催目的として一番多いのが「社内向けのイベント(40.0%)」ですが、その次に「既存顧客の関係構築(39.3%)」と「新規リード獲得(38.5%)」という結果が出ています。
その背景として、BtoB企業にとって顧客との関係構築の場となっていたオフラインセミナーや訪問営業が、新型コロナウイルス感染症の影響により余儀なく中止され、リードの獲得や関係構築の場がオフラインからオンラインへと移行したことが考えられます。
BtoB企業がウェビナーを開催するメリット
リードの獲得においては、幅広い人へアプローチできる点に企業開催側のメリットがあります。また参加者側にもオンラインだからこそ得られるメリットがあるでしょう。ここで詳しくご紹介します。
企業側のウェビナー開催メリット
まず、BtoB企業がウェビナーを開催するメリットは、一度に多くの人へリーチできるという点です。これまでのセミナーは場所や時間の関係で参加が難しかった層も、ウェビナーであれば参加しやすくなるため、リード獲得数に悩みを抱えるBtoB企業にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
実際に、オフラインセミナーよりオンラインセミナーの方が集客数が多く、3年後にはオフラインでの集客に比べて3倍ほど多く集客ができたという調査データもあります。
出典:マイナビニュース「ウェビナーとは? マーケティングで今注目のネクプロを試してみた」
またリードの獲得以外にも、人員や会場代などのコスト削減のメリットも考えられます。株式会社博報堂プロダクツの「オンラインイベントに関する調査」では、オンラインイベントのメリットについて「金銭的・人的コストが下がった(50.5%)」といった結果が出ました。
続いて、「参加者との接触回数を増やすことができた(36.5%)」「今まで接触したことがない方にアプローチできた(36.0%)」という回答結果からは、ウェビナーがリード育成に優れていることもよくわかります。
既存リードのフォロー方法に悩みを抱える企業にとっては、ウェビナーは効果的な施策と考えられるのではないでしょうか。
出典:PRTIMES「【オンラインイベントに関する調査】 オンラインイベント(ハイブリッド開催含め)の継続意向は約90% ‐ 成果を上げるカギは「参加者のエンゲージメント向上」 」
参加者側のウェビナー参加メリット
参加者側にとっても、ウェビナーであれば、開催側と同じくオンライン環境で参加できることから、以下のように「参加へのハードルの低さ」がメリットとして挙げられるでしょう。
- 移動にかかる金銭が少ない
- 時間を気にせずに参加できる
ウェビナー開催企業側と参加者側のメリットについて詳しくは、以下の記事で解説しています。
関連記事:ウェビナー(Webinar)とは?メリット・デメリットと開催手順をわかりやすく紹介!
BtoB企業がウェビナーを開催するデメリット
BtoB企業のウェビナー開催には、メリットだけでなくデメリットもあります。
一つは、参加者の興味の度合いが判別しにくいという点です。単にウェビナーを勉強目的で視聴したり、会議や他の作業をしながらウェビナーを視聴する「ながら視聴」ができてしまうため、参加者の興味度合いがわかりにくいことがデメリットになる可能性があります。
更に、ウェビナーは「一方向のコミュニケーション」であるため、参加者のアクションが生まれにくいこともデメリットになります。視聴中に明確な反応があれば、その後のアプローチもしやすく、会話の中で顧客のニーズの把握もしやすくなりますが、反応がなければ会話を広げるのも難しくなるかもしれません。
実際に、株式会社博報堂プロダクツによる「オンラインイベントに関する調査」では、ウェビナーのデメリットの半数以上は「参加者とのコミュニケーションが取りづらい」と回答、また41%が「製品・サービスのリアリティ感、クオリティが伝わりづらい」と回答しました。
出典:PRTIMES「【オンラインイベントに関する調査】 オンラインイベント(ハイブリッド開催含め)の継続意向は約90% ‐ 成果を上げるカギは「参加者のエンゲージメント向上」 -」
ウェビナーを視聴いただいたとしても、視聴者の反応が分からない状況では、アプローチが困難であることが伺えます。コミュニケーションが取りづらいという点は、ウェビナーの参加者側のデメリットにもなり得るでしょう。
ウェビナーの開催手順 基本の5ステップ
ウェビナーの配信手法の一般的な流れは「企画」から始まり「アフターフォロー」までに終わる、全5つのステップがあります。
企画
告知・集客
準備
当日の運営
アフターフォロー
それぞれについてご説明します。
1.企画
ウェビナーを開催する目的を定め、目的に沿ったKPIを設定しましょう。その後、リアルタイムか録画配信かといった開催方法、使用するツール、ウェビナーの集客方法の決定、ウェビナーのタイトルや内容の検討、登壇者や運用するスタッフの選出を順に行います。
2.告知・集客
ウェビナーの告知ページを公開後、ウェビナーを多くの人に知らせるための集客を行います。BtoB向けウェビナーの代表的な集客方法は、既存リード宛にはメルマガや営業担当者からの案内、SNSでの告知などがあります。また新規リードの獲得を目的とするなら、外部のウェビナー情報サイトへの掲載や広告出稿などが主流です。
3.準備
プログラム通り時間内にウェビナーが終わるか、機材トラブルがないか、などを確認するために、当日までにリハーサルを行っておきましょう。
4.当日の運営
当日を迎えたら、改めて、使用するウェビナーツールやマイク、カメラなどの機材の設定・確認などを行います。またウェビナー開始後は、Q&Aの受付や終了アンケートのアナウンスなどを行い、ウェビナーを円滑に進めます。
5.アフターフォロー
ウェビナー終了後は、次回のウェビナーに活かすために振り返りを行いましょう。振り返りは、参加者数、出席率、ウェビナー後の商談化数などの数値を計測し、「定量的な振り返り」と、アンケート回答や質疑応答の内容などに基づく「定性的な振り返り」を行います。
BtoBウェビナーを企画する際のポイント
上記の5ステップの中でも、特に重要な段階と言えるのが最初の「企画」です。何を目的としてウェビナーを開催するのか?どのような顧客を対象に実行するのか?それらの要素により、ウェビナーの配信手法やテーマ、集客方法までもが大きく変わるからです。
企画時のポイントは以下の通りです。
- ウェビナーの「目的」を決める
- ターゲットとする顧客の「検討段階」を決め
- 目的と検討段階に合わせて「開催形態」や「テーマ」を決める
まずはウェビナーの目的や、どの検討段階の顧客を獲得または育成したいかなどを検討し、目的と顧客の検討段階に応じて適切な配信手法を定めましょう。
獲得するリードのターゲット層が確定していない企業も中にはあるかもしれません。その場合は「商談や受注へつながる可能性の高い顕在層や明確層」へのアプローチを重視しましょう。顕在層や明確層は既に興味度合いが高い層であるため、優先的にアプローチすることで商談数や受注数が増える可能性が高まります。
ウェビナーの目的は、受注を獲得することではなく、受注を獲得するまでの顧客接点であることを改めて念頭においてください。見込み顧客に対して送るメルマガ等から顧客が、いきなり購買行動を行い受注を得る、というケースは稀です。一般的には、見込み顧客はさまざまな情報を得て徐々に興味関心度合いが高まるものですので、段階的に顧客接点を持てる以下のような構図が必要となります。リードを獲得してから受注を行うまでの間に育成を目的としたウェビナーを置き、見込み顧客の検討度合いが自然と高まるように後押ししましょう。
BtoBウェビナーの代表的な集客方法
BtoBウェビナーの集客方法はオフラインやオンラインとありますが、ウェビナーはオンライン上で行われるため、基本的にオンラインに特化して施策を行うのが良いでしょう。
代表的な集客方法として、以下が挙げられます。
- メルマガ配信
- お知らせ枠などでの自社サービスサイトでの告知
- 自社SNSでのシェア
- 自社のオウンドメディアでの告知
- Web広告(Facebook広告などのリード獲得広告やウェビナー集客サイト上の告知掲載)
- インサイドセールスと既存リードの接点時にセミナーを案内
- 他者との共催ウェビナー
ターゲット層がよく利用するチャネルを選ぶのが基本です。BtoBのウェビナーでは、ターゲット企業の担当者がよく利用しているチャネルを探す必要があります。SNSをチャネルの一つとして選択する場合には、プライベートで使われるTwitterよりもビジネスでも利用されるFacebookを選ぶなど、ターゲットを想定しながら媒体を検討しましょう。
既存リードや顧客のナーチャリングの場合は、メルマガや自社サイト・オウンドメディアのみでも良いですが、新規リードの獲得を目的とする場合は広告などの外部媒体の利用を行うのも手段の一つです。自社サイトや外部サイトなど、多くのターゲットが集まるチャネルで多面的に告知をすることで、集客が期待できます。
また、告知は3週間前から行うのが理想的です。集客開始が遅ければ、思ったように集客ができないときに追加施策が打てなくなり、早く集客してしまうと当日の出席率が低くなることもあるため、準備時期も重要です。
ウェビナーの集客について詳しくは、以下の記事で解説しています。
関連記事:ウェビナーの集客方法5選!集客力と商談化率を高めるポイントを合わせてご紹介
BtoBウェビナーの費用対効果を最大化する「アーカイブ」活用
BtoBウェビナーの費用対効果を最大化する方法の一つが、「アーカイブ」の活用です。
BtoBウェビナーの配信方法は主に以下の4つに分けられ、そのうちの一つであるアーカイブ配信は、過去に実施された配信をオンデマンドで提供する方法で、各自が好きなタイミングで視聴できるという特徴があります。
配信方法 | 特徴 |
---|---|
ライブ一方向(リアルタイム) | リアルタイムでウェビナーを配信。 主催者側のみ情報を発信する |
ライブ双方向(リアルタイム) | リアルタイムでウェビナーを配信。 主催者と参加者双方でコミュニケーションが取れる |
ライブ録画配信 | 事前録画したウェビナーを特定の日時に配信。 特定のタイミングで配信する |
アーカイブ配信(オンデマンド) | 録画したウェビナーを継続的に配信。 参加者は好きなタイミングで視聴できる |
それではなぜ、上記の各配信手法の中で、アーカイブ配信がBtoBウェビナーの費用対効果を最大化できるのでしょうか。
それは、主催企業が様々なチャネルでアーカイブ配信をコンテンツとして活用でき、リード獲得やナーチャリングにも役立つからです。
アーカイブをWebサイトに掲載し、フォームで視聴申込みをした人のみが閲覧になる「限定公開」にすれば、BtoBのリード獲得方法としても活用できます。また、アーカイブ動画をメルマガコンテンツとして活用することでナーチャリング施策としての利用も可能です。リードにとってアーカイブ動画の内容が新鮮で興味深い情報と感じさせることができれば、再度サービスに対する興味度合いが上がり、商談の機会が増えるといった効果も期待できるでしょう。
同時に、アーカイブ配信により、ウェビナーへのアクセスが時間的・地理的な制約なしに広がり、視聴者数を増やすことができる点もメリットです。
しかし「アーカイブ配信」にはメリットがある一方で、開催者と参加者間での双方向のコミュニケーションが取れないというデメリットもあります。
デメリットを解消するには、視聴者との「双方向コミュニケーションが可能となる仕掛け」を施すことが大切です。視聴者が自発的に行動することを促す仕掛け、例えば、動画の視聴中や視聴後に「商材ページへの誘導リンクが表示される」「アンケートが表示される」などのインタラクティブ動画にするのも一つの方法です。
YouTubeでも、ある程度の仕掛けを取り入れることは可能ですが、機能に制限があります。リード獲得や育成の促進をするためには、「インタラクティブ動画」などの動画配信プラットフォームの活用により、より高度な双方向コミュニケーションを実現できます。
ウェビナーのアーカイブ配信については、こちらの記事でくわしく解説しています。
関連記事:ウェビナーアーカイブの配信方法&成果を出すポイントを解説!動画でリード獲得やナーチャリングを促進
BtoBウェビナーアーカイブの成功事例|スタディスト
わかりやすいマニュアルを誰でもかんたんに作成・共有できるクラウドツールを提供するTeachme Bizでは、リードの獲得・育成を目的としてウェビナーを継続的に開催していました。しかし、ライブ配信では日時が限定されるため参加者が限られてしまうことに課題を感じ、時間に限定されずに動画視聴が可能なアーカイブ配信を開始します。
出典:MIL「ウェビナーのインタラクティブ動画化でBtoBのリード獲得・育成・商談化を実現!」
さらに、顧客の行動変容につなげるために「インタラクティブ動画」を導入。動画内に「CTA」を設置して、動画を視聴しながら「資料請求」や「オンライン相談」「アンケート回答」「ホワイトペーパー請求」などのアクションが取れるような仕掛けを組み込みました。。ウェビナーを視聴後に「再度サイトを見てCTAを探す」のではなく、動画内でアクションが完結できるシームレスな構成にしたことで、視聴者のネクストアクションを促進しています。
また、インタラクティブ動画をSalesforceと連携させ、タップしたCTAの項目や視聴秒数などの視聴データを可視化して、ユーザー単位・動画単位で確認が可能に。
その結果、ウェビナーの視聴態度やアクションを踏まえて、インサイドセールスから効果的なタイミング・内容でアプローチができる体制が整いました。
まとめ
BtoBウェビナーが増加する背景、メリット・デメリット、配信手法を解説しました。BtoB企業にとって、ウェビナーは新規リードの獲得や既存リードの育成、案件化につなげる有効な施策です。ウェビナーの費用対効果を最大化させるためには、単に配信して終了するだけではなく、アーカイブ配信のようにコンテンツとして利用し続ける仕組みを作ることが大切です。さらに、
「アーカイブ動画」に双方向コミュニケーションの仕掛けを組み込むことで視聴後の行動促進が期待できるでしょう。オンラインウェビナーの開催とアーカイブ動画の両方を有効活用し、BtoBリード獲得やリード育成の成果をぜひ最大化させてください。
執筆者
瀧口 愛
MIL株式会社 マーケティング
Web制作会社でサイト構築に従事後、MIL株式会社へ入社し、マーケティングチームに所属。ウェビナーや展示会実施の基盤を構築し、毎月のウェビナーやオフラインイベントの企画・運営全般を担当している。その他、メルマガ配信やマーケ全体の施策効果分析など、フィールドマーケティング領域全般を担う。