WebサイトやLPからのコンバージョン率を改善したいと、一通りの施策を実施してきたが効果がなく、新しい具体的な施策も見つからない……と悩んでいませんか。
近年では、インターネット広告市場は10年前と比較し2倍、と拡大傾向にあります。Web上での広告出稿や配信の効率化・自動化の促進により急速に市場が拡大し、Web広告の手法も多様化したため、自社に最適な施策を決めかねている方も多いことでしょう。
Web広告が溢れる中、従来の「広告主から一方通行でユーザーに対して配信する広告手法」だけでなく、新しく登場した「双方向型のインタラクティブ広告」の活用に注目が集まっています。
当記事では、インタラクティブ広告の概要や従来型の広告との比較、企業の活用事例を解説します。新しい広告手法をお探しの方は、参考にしてみてください。
インタラクティブ広告とは?
インタラクティブ広告とは、インタラクティブコンテンツのひとつです。
Hubspotではインタラクティブコンテンツを「ユーザーが求める情報と、企業が提示したい情報を結びつける『双方向型』のコンテンツ」と定義しています。つまり、ユーザーが「触れる」「選択する」などのタップアクションをもとに、一人ひとりへ最適な内容の広告を提示するのがインタラクティブ広告です。
インタラクティブ広告は、ユーザーのアクションをもとに情報を提供していくのが特徴です。
たとえば以下のように、広告として配信されている動画を視聴すると◎マークが表示され、タップするとポップアップ表示で商品詳細が確認可能。更にポップアップをタップして、ECサイトへシームレスに遷移し商品が購入できる、というようにユーザーのアクションをベースとする「双方向コミュニケーション」の仕掛けが広告に組み込まれています。
「インタラクティブ」という言葉の基本的な意味や関連用語について詳しくは、以下の記事で解説しています。合わせてお読みください。
関連記事:インタラクティブとは?意味・使い方、Webマーケティングの関連用語をわかりやすく解説!
従来の広告とインタラクティブ広告の違い
それでは、「従来型の広告」と「インタラクティブ広告」との違いは、どのような点にあるのでしょうか? 以下では従来の広告との違いと、インタラクティブ広告のメリットを解説します。
双方向・対話型コミュニケーション
従来型の広告は、企業側が発信したい情報をユーザーへ一方的に届けることしかできません。一方、インタラクティブ広告は、ユーザーのアクションに基づき最適化した情報が表示されます。
従来の広告が受動的な視聴体験であるのに対して、インタラクティブ広告は能動的な視聴体験です。
ユーザー自らのアクションによって提供された情報は、商品やサービスの訴求内容の深い理解につながるため、従来の広告よりも商材に対する興味関心を引き出せます。ユーザーの能動的な行動がより商材への理解や深い印象を記憶させることから、潜在的なニーズへアプローチし、コンバージョンの促進にもつながるでしょう。
ユーザーファースト
株式会社リチカの行った「CM・広告に関する意識調査」では、インターネット広告に対するイメージについて以下の調査結果が出ています。
出典:PRTIMES「【広告・CM意識調査】を実施「広告を見たい」はわずか13%、一方「興味関心にあったクリエイティブなら必要」は39.4%」
⇒その理由の第1位は「自分に興味のない情報だから」が74.1%
⇒一方で「興味関心にあったクリエイティブの広告であれば必要」と感じている人が39.4%
この調査結果から読み取れるように、従来型の広告は企業側が伝えたい情報を一方的に発信するため、ユーザーに不快感を与えて離脱されてしまう可能性があります。
一方でインタラクティブ広告は、ユーザー自身が求めている情報を選択するため、最短距離でニーズに合うコンテンツを提供でき、離脱防止にもつながるでしょう。
インサイトデータに基づく広告やマーケティング戦略の改善
Web広告は以下のようなユーザーの行動をデータとして可視化し、広告施策や改善に活かせるメリットがあります。
- 閲覧数
- 閲覧時間
- ページでの滞在時間
- クリック箇所
- 特定箇所のクリック数
- ページの離脱時間
さらに、インタラクティブ広告であればユーザー自らが情報を選ぶため、クリックデータからユーザーのニーズを把握することが可能です。取得したデータをもとに詳細なペルソナ像の再設計や、カスタマージャーニー設計など、広告以外のマーケティング施策にも活かすことができ、施策の効果の最大化にもつなげられます。
インタラクティブ広告の代表的な手法と活用事例
インタラクティブ広告に興味を持っていても、自社の課題にマッチしている手法、コンバージョン達成に最適な方法が分からない、と悩む企業もあるかもしれません。以下では、インタラクティブ広告の代表的な手法と、すでにインタラクティブ広告を導入し、成功している企業事例をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
インタラクティブなバナー広告|アンケート回答に応じて最適なLPへ誘導
まずは、広告バナーに設問を設け、ユーザーが選択した回答から最適な商材またはランディングページへと遷移させる手法です。
出典:Q&A CREATIVE「複数商材・様々なユーザー課題に寄り添う商材をお持ちの企業様必見!! 生活者が広告を通じて自分の意見や気持ちを伝えられる」
上記の図のように、広告バナー自体に設問が設けてあるためユーザーは閲覧したその場で設問に回答し、回答に合ったランディングページへと遷移させることができます。その結果、広告接触者のコンバージョン見込みが高い状態でランディングページへの誘導が可能となります。
バナー上の設問を通じてユーザーの意識をヒアリングした上で最適な商材を提案できるため、複数商材を取り扱う企業に向いています。
たとえば以下の旅行会社のように複数の選択肢が広がる商材に対し、回答を通じてユーザーの潜在ニーズを発掘し、認知させたニーズに合った提案ができます。ユーザーそれぞれの持つ課題に対してさまざまなアプローチを提供できる商材のコンバージョンにも効果的です。
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社が提供する「Q&A CREATIVE」では、インタラクティブなバナー広告として、以下3つのフォーマットを展開しています。
2択の質問を通して広告接触者に適した商材を提示。潜在ニーズにアプローチできる。比較検討フェーズに効果的。
●「クイズ」フォーマット
クイズ形式で商材の機能や魅力を伝えられる。広告接触者の興味を引きやすい。認知施策に適している。
●「チャット」フォーマット
会話をしている印象を与えられる。よりインタラクティブ性が高く、商材に対するユーザーの親近感を高められる。
インタラクティブ動画広告|動画自体をLP化し、送客率が約2.6倍に
インタラクティブ動画広告とは、インタラクティブ動画を使用した広告手法を指します。
以下では、複数サロンの中から最適な脱毛サロンを紹介する、診断型のインタラクティブ動画の事例をご紹介します。広告バナークリック後の遷移先に、従来の静的なLPではなく、インタラクティブ動画のLPを設定した施策例です。
関連記事:タップで診断!インタラクティブ動画で作るリッチな「診断コンテンツ」
タップを通じて質問に答えていくことで、一人ひとりにとって最適なサロン・クリニックを提示し疑問を解消する動画コンテンツを制作しました。回答しながら、自身の悩みや脱毛に求めることを明確化させ、また不明点や不安を解消していきます。
最適なサロンやクリニックを提案された視聴者を、ワンタップでカウンセリング予約ページへ遷移させるために、最後の分岐動画である「サロン・クリニックの紹介動画」の下部には「無料カウンセリング予約はこちら!」という文言の「ダイレクト外部リンク」ボタンを設置しました。回答内容によって、同じサロンでも訴求の文言を変えるなど、視聴者ごとに表現や提案を最適化させているのが、インタラクティブ動画広告ならではの特徴です。
関連記事:タップで診断!インタラクティブ動画で作るリッチな「診断コンテンツ」
おもにInstagramのフィード・ストーリー上で配信したところ、従来の静的LPと比較して送客率15%が39%(2.6倍)、CVR2.1%が2.4%(+0.3%)へ改善、さらに以下の成果を出しています。
- インタラクション率:365.4%(動画に対して一人あたり3.6回以上タップ)
- ポップアップ表示率:25.1%
- リンククリック率:18.2%
- 平均滞在時間:62.5秒
- 10秒地点の視聴率:92.7%(再生開始から10秒地点までの間に離脱してしまうユーザーはわずか7.3%)
「脱毛」はユーザーごとに悩みやニーズが異なり、さらに比較的高額で長期間利用する商材です。一人ひとりのお悩みをふまえて情報を提供できるインタラクティブ動画広告が、効果的なプロモーションであることが分かります。
インタラクティブ動画広告|SNS広告のクッションLPとして活用し、購買意欲を向上
続いて、広告からLPへ遷移する間のクッションページとしてインタラクティブ動画を活用した2つの事例を紹介します。LP訪問前に動画を視聴して理解度を高めることで購買意欲を向上させ、成果へとつなげています。
・子ども服ブランド「インセクトコレクション」の事例
関連記事:SNS広告経由でCVR2.15%をマーク!子供服の動画コマース
こちらは、昆虫をモチーフにした子ども服ブランド「INSECT COLLECTION」の事例です。
新規顧客獲得を目的として、SNS広告とECサイトの間にインタラクティブ動画を設置した結果、CVRは2.15%をマークしました。ネット広告からECサイトに流入したユーザーのCVRは通常1%未満と言われている中で、効果的な施策であると言えるでしょう。
インタラクティブ動画の閲覧中にハートマークが表示され、それをタップすると商品詳細と購入ページへのポップアップが出現する仕掛けが組み込まれています。
商品のすべてにポップアップタグを設置することで、ECサイトに行かずとも動画上で商品の詳細を確認できること、実際に子どもが服を着用しながら動き回る姿を動画で見られることで、テキストや画像よりも多くの視覚的な情報を伝えられました。ユーザーの購買意欲を高めたことにより、CVR上昇に成功しています。
・住宅メーカー「トヨタホーム東京」の事例
トヨタグループの住宅部門を担う総合住宅メーカー「トヨタホーム」は、Facebook広告などを通じてLPへの誘導は達成しているものの、「来場予約」や「資料請求」のCVにつながらない課題がありました。そこで新規顧客のCVRを上げるための施策として、Facebook広告のクッションページに「インタラクティブ動画LP」を設置しました。
関連記事:Facebook広告の「クッションページ」にインタラクティブ動画を活用!動画で魅力を訴求し、CVR&成約率向上へ
「ワンランク上の住まいづくり」をテーマにしたアンケート形式の動画になっており、「もし注文住宅を建てるなら、どんなお家にしたいですか? 」などマイホームに関する設問に回答しながら「トヨタホーム東京ならではの特徴」を知ってもらい、期待感を高めて「来場予約」や「資料請求」につなげる施策になっています。
インタラクティブ動画広告|広告からの遷移先LPに設置し、CVRが約5倍に
最後に、広告をクリックした後のLPに、インタラクティブ動画のコンテンツを設置する手法をご紹介します。
インタラクティブ動画は、動画を通じて商材の理解を促進し、資料請求や申し込みといったコンバージョンを促進します。文字と画像のみでは理解の難しい複雑な商材や、空間・雰囲気といったニュアンスの伝達が必要な商材のLPにマッチする広告です。
シェーンコーポレーションは、独自のカリキュラムと選抜された講師陣による英会話教室を展開しています。コロナを機に新たなターゲットとしてすえた子ども層の集客目的で、広告からの流入先となるWebサイトにインタラクティブ動画を設置しました。
関連記事:インタラクティブ動画接触者のCVRは非接触者の約5倍に!Webサイトからの「無料体験レッスン申込」を促進
インタラクティブ動画導入後3カ月の効果測定を行ったところ、インタラクティブ動画の接触者は非接触者に対し、CVR(無料体験の申込率)において約5倍となりました。
「子どもに英語を学ばせてみたい」と考えている保護者が関心のある項目をタップできる仕掛けや、シェーン英会話の特徴となる「楽しさ」を表現できるように実際の講師と子どもの接し方を動画で伝えるなど、インタラクティブ動画ならではの訴求です。安心して無料体験に申し込みできるよう工夫された内容となっています。
インタラクティブ広告でCVRを最大化するポイント
インタラクティブ広告を制作・配信したとしても、コンバージョンが達成できなければ広告の成果が最大化されることはありません。インタラクティブ広告でCVRを最大化するためのポイントは以下の3点です。
- KPIを設定し、費用対効果を考える
- 目的に合わせたツールやベンダーを選ぶ
- PDCAを回し続ける体制を構築する
それぞれについて解説します。
KPIを設定し、費用対効果を考える
インタラクティブ広告を設置後、クリック数やインプレッション数などの数字を追いかけているだけでは、インタラクティブ広告を通じてのコンバージョン率の改善はできません。インタラクティブ広告を導入する目的を明確にし、KPIを設定することでCVRの向上につなげられます。
KPIは目的に応じて、広告のクリック数、カートへの投入数などCVRを細分化したものを設定します。KPIを設定することでコンバージョンへの達成度の指標となるほか、具体的なインタラクティブ広告の成果や改善点も把握できます。
目的に合わせたツールやベンダーを選ぶ
ユーザーとの双方向型コンテンツとなるインタラクティブ広告の制作には、ツールや設計が必要です。
たとえば、すでに配信している動画広告にインタラクティブな仕掛けを導入したいときには、専門的なスキルや予算が求められます。インタラクティブ広告は自社での制作が難しいため、ツールまたはベンダーでインタラクティブ広告制作をするのが一般的です。
ツールやベンダーそれぞれによって、特徴や対応できること、予算は異なります。自社の商材や目的に合わせたツールやベンダーを選ぶことで、CVRを最大化できるインタラクティブ広告制作につながるでしょう。
PDCAを回し続ける体制を構築する
インタラクティブ広告からのCVRを最大化するためには、企業が一方的に情報を押し付けるのではなく、ユーザーのニーズに合わせた情報を提供し、興味関心、理解を深めることが重要です。そのためには、ユーザーのリアルなアクションデータをもとに、施策や改善をするPDCAを回さなければいけません。
インタラクティブ広告を活用するメリットのひとつは、広告上のアクションデータから興味関心の矛先、いわゆる「ユーザーインサイト」を得られることです。
従来の広告は一方通行のため、コンバージョンに至る前のユーザーが、何を求め、何に関心があるのか知ることはできませんでした。双方向型のインタラクティブ広告であれば、タップ・クリックしたデータから、ユーザーの「インサイト」を得られます。これらを活用して、PDCAを回し、最適化していくことが大切です。
インタラクティブ広告運用のPDCAサイクルは、以下のPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4ステップを繰り返すことです。たとえば、各ステップでは以下のような行動を意識すると良いでしょう。
PDCAのステップ | ステップごとの行動 |
---|---|
Plan | ・目的に合わせたツールやベンダーを選択 ・自社での課題の明確化 ・広告視聴者のターゲット層の決定 ・具体的な目標設定 |
Do | ・広告の出稿方法の決定 ・広告コンテンツの作成 ・広告の出稿 ・広告予算の決定 ・広告予算の定期的な確認 |
Check | ・ユーザーの広告上のアクションデータ確認 ・広告出稿中と完了後に効果指標の確認 ・効果と目標との比較、達成度の確認 |
Action | ・Planで設定した目標達成時は「なぜ達成したか」を検討 ・目標未達の場合は「なぜ達成しなかったのか」を検討 ・ユーザーの広告上のアクション結果をふまえてターゲットの見直しとコンテンツの改善の実施 |
自社でユーザーのデータの収集や分析が難しい場合には、インタラクティブ広告の提供だけでなく、その後の分析や改善などのPDCAを併走して行える支援会社を選ぶのがおすすめです。
まとめ
広告からのCVRや質を最大化するには、企業が情報を押し付けるのではなく、ユーザーのニーズに合わせて情報を提供し、興味関心や理解を高めることが重要です。その手法のひとつとして、当記事ではインタラクティブ広告をご紹介しました。インタラクティブ広告では、ユーザーのアクションを元に一人ひとりのニーズに合った情報提供ができるため、離脱防止やCVR向上が期待できます。
またインタラクティブ広告はアクションデータからユーザーの本音が把握できるため、広告だけでなくマーケティング施策全体の改善にもつながります。新しい広告手法やマーケティング施策をお探しの方は、ぜひ検討してみてください。
執筆者
黒谷 純子
MIL株式会社 マーケティング
大学卒業後、編集プロダクション等を経て、人材サービス企業のマーケティング職に従事。2021年3月よりMIL株式会社に入社し、現在は自社サイトやMILblogの企画・ディレクション・執筆等を担当している。
Twitter : https://twitter.com/MIL29292841