インタラクティブとは、「対話」や「双方」を意味する単語です。近年、テクノロジーの発展により、ユーザーがストーリーを選べる「インタラクティブ・ドラマ」や観客を巻き込む「インタラクティブ・アート」など、様々な場面で「インタラクティブ」という単語が使用され始めています。
それはビジネスの世界でも例外ではありません。急速にデジタル化が進む今、インタラクティブな要素をマーケティング戦略に導入する重要性が増しています。海外のマーケティング担当者の62%が「インタラクティブコンテンツに取り組んでいる」と回答している調査結果もあり、もはやマーケティングにおいて「インタラクティブな要素」は無視できません。
インタラクティブなマーケティングを実施すれば、Webサイト上でユーザーと双方向のコミュニケーションを取り、課題やニーズを正確に理解したうえで価値ある情報を提供できます。コンバージョン率や離脱率の改善が見込めるでしょう。
本記事では、「インタラクティブ」の言葉の意味や基本的な使い方から、Webマーケティングの関連用語まで、わかりやすく解説していきます。
「インタラクティブ」の意味とは?
インタラクティブとは、「対話式」や「双方向」という意味の単語。ASCII.jpデジタル用語辞典によると、インタラクティブの意味は次の通りです。
オックスフォード辞典によると、英語の「interactive」の意味は以下のように解説されています。
人々が共同して、互いに影響を与え合うこと
that allows information to be passed continuously and in both directions between a computer and the person who uses it.
コンピューターとそれを使う人の間で、情報を連続的かつ双方向に受け渡すことができるもの
これら2つの意味を見ると、インタラクティブとは「人間同士もしくは人間とコンピューターが双方向にコミュニケーションを取る状態」だと分かります。なお国立国語研究所は、インタラクティブの同義語として「双方向的」「対話的」「相互作用的」を挙げています。
「インタラクティブ」の対義語
一方、インタラクティブの対義語は、「一方通行」や「ノンインタラクティブ」などです。weblio辞書はノンインタラクティブを次のように定義しています。
出典:weblio辞書
つまり、一方通行でメッセージや情報を発信するだけのコミュニケーションは「インタラクティブ」ではありません。ノンインタラクティブの代表例として、テレビCMや新聞広告、バナー広告などのアウトバウンドマーケティング手法が挙げられます。見方を変えれば、ユーザーと双方向にコミュニケーションを取れるものは「インタラクティブ」と言えるでしょう。
「インタラクティブ」の使い方
インタラクティブという単語が主に使用される分野は、下記の2つです。
- インタラクティブな機能
- インタラクティブなコミュニケーション
ここからは、それぞれの使い方の詳細を解説します。
インタラクティブな機能
インタラクティブ機能とは、Webページや動画などのコンテンツにインタラクティブな要素を追加する機能です。インタラクティブ機能を活用すれば、ユーザーと双方向にコミュニケーションを取り、ユーザーの興味関心に基づいた情報を提供できるため、コンバージョンやエンゲージメントの向上が見込めます。マーケティングにおけるインタラクティブの詳細は後述しますが、インタラクティブ機能はWebサイトやブログ記事、動画などあらゆるデジタルメディアの基本となっています。
インタラクティブなコミュニケーション
コミュニケーションには、「一方向的コミュニケーション」と「双方向的コミュニケーション」の2種類があります。一方向的コミュニケーションとは、相手のことを考えずに、自分の言いたいことだけを伝えるコミュニケーションです。分かりやすい例が、自分の話ばかりする人。ビジネスで言えば、テレビCMや飛び込み営業などが一方向的コミュニケーションに該当します。
それに対し双方向的(インタラクティブ)コミュニケーションとは、人やコンピューターが相互に情報・アイデアの交換をするコミュニケーションです。ユーザーからのフィードバックを受けられるため、ユーザーニーズの正確な把握やユーザーエクスペリエンスの向上を見込めます。
インタラクティブなコミュニケーションの例として、意見を交換し合う会話、ビジネスで言えばチャットボットを用いたオンラインカスタマーサービスや、SNSでの顧客と企業のやり取りなどが挙げられます。
急速に消費行動のデジタル化が加速する中、企業と消費者のコミュニケーションにおいても、こうしたインタラクティブなマーケティングの重要性が増しています。次章では、マーケティング領域の用語を解説していきましょう。
マーケティング領域の「インタラクティブ」関連用語
マーケティング領域で押さえておくべき「インタラクティブ」関連用語は下記のとおりです。
- インタラクティブマーケティング
- インタラクティブデザイン
- インタラクティブコンテンツ
- インタラクティブ動画
- インタラクティブ広告
ここからは、各用語の詳細を解説します。
インタラクティブマーケティング
インタラクティブマーケティングとは、顧客ひとり一人の「行動」を中心に置いたマーケティング手法です。顧客と双方向のコミュニケーションを取ることで、顧客のニーズや課題を把握したうえで最適なメッセージを届けられるため、コンバージョン率やエンゲージメント率の向上が見込めます。
DemandGenの調査によれば、BtoBマーケターの62%が「インタラクティブマーケティングを推進している」と回答しており、静的コンテンツよりも2倍以上のエンゲージメントを得られると判明。それではなぜ、インタラクティブマーケティングの重要性が高まっているのでしょうか?
その背景には、パーソナライズ体験が考えられます。
出典:The value of getting personalization right—or wrong—is multiplying|Mckinsey
マッキンゼーの調査では、消費者の71%が「パーソナライズ体験を希望する」と回答しており、成長が早い企業はそうでない企業と比べて、収益の40%以上をパーソナライゼーションから得ています。インタラクティブマーケティングでは、顧客の行動や好みを起点にパーソナライズ体験を提供するため、エンゲージメントやコンバージョンの改善を見込めるわけです。
インタラクティブデザイン(インタラクションデザイン)
ネット環境やPCの発展により、デジタルコンテンツを通して、ユーザーが自分自身で必要な情報へアクセスすることが一般的になりました。利便性や操作性、魅力的な表現を備えたデザインが求められています。
インタラクティブデザインとは、ユーザーと商品・システムの相互作用をスムーズにするデザインのことで、一般的に「インタラクションデザイン」とも呼ばれます。また著名なインタラクティブデザイナーのJohn Kolko(ジョン)氏は、「インタラクションデザインとは、人と商品、システム、サービスとの間に対話を生み出すもの」と定義しています。
「対話を生み出すインタラクティブデザイン」は、どのように作成できるのでしょうか?
ロンドンのロイヤル カレッジ オブ アートのGillian Crampton Smith(ジリアン・クランプトン・スミス)教授と、シニアインタラクションデザイナーのKevin Silver(ケビン・シルバー)氏は、インタラクティブデザインは下記5つの要素で構成されると定義しています。
- 言葉:ボタンラベルなどのテキスト
- 視覚的表現:画像やアイコンなどのグラフィック
- 物体/空間:ノートパソコンやスマートフォンなどのユーザーが使う媒体
- 時間:動画やアニメーション、音声など時間とともに変化するメディア
- 行動:ユーザーによるWebサイト上での操作など
楽天銀行のAIチャットボットを例に、上の5つの要素を見ていきましょう。
- 言葉:「ログインについて」や「ログインできない」など質問を入力などのテキスト
- 視覚表現:送信アイコン
- 物体/空間:パソコンやスマートフォンなどのユーザー端末
- 時間:質問後にAIが表示するメッセージ
- 行動:ユーザーによる質問
出典:楽天銀行
顧客と最適なコミュニケーションを取って離脱率やコンバージョン率を改善するためには、使用端末や行動を理解したうえで、摩擦のないインタラクションデザインを設計する必要があります。
インタラクティブコンテンツ
インタラクティブコンテンツとは、ユーザー行動に合わせて表示内容が変化するコンテンツです。従来のブログ記事やイラストなどの静的コンテンツに対して、インタラクティブコンテンツではユーザーが能動的に情報収集や学習ができるため、離脱率やコンバージョン率の改善、サイト滞在時間の向上を見込めます。Inc.によれば、93%のマーケターが「顧客に情報を伝えるのにインタラクティブコンテンツは有効」と回答しています。
代表的なインタラクティブコンテンツとして、以下のようなものがあります。
◆計算機
計算機は、不動産や金融機関、保険会社のWebサイトでよく見られるインタラクティブコンテンツです。ローンの支払額や将来の資産運用額、商品サービスの見積もりなど、個人によって金額が大きく異なる業界で活用されます。
Outgrowの調査では、マーケターの51%が「検討段階における顧客にオンライン計算機は有効な施策」と回答。ユーザーがさまざまな商品・サービスを比較しやすくなり、各商品・サービスの費用を理解し、納得したうえで意思決定を行えるようになるためです。
SUUMOの支払額シミュレーターでは、ユーザーが希望物件価格や金利、頭金などを入力すると、月々の住宅ローン支払額が表示されます。計算機を導入すれば、ユーザーは簡単に必要金額や借入金額などを把握し、十分な情報を得たうえで購入や問い合わせなどのコンバージョン行動をとれるようになるのです。
◆診断コンテンツ
診断コンテンツとは、ユーザーの回答内容をもとに特定の診断結果を表示するコンテンツのこと。診断コンテンツを使えば、ユーザーの潜在的な好みや悩みを顕在化させながら、各個人に応じた最適な商品・サービスを紹介できます。ラインナップが多く、個人によって最適な商品・サービスが異なる企業に向いており、アパレルや化粧品、銀行などさまざまな業界で活用されています。
出典:肌診断|Obagi
Obagiの肌診断では、ユーザーは肌の悩みと年齢を選択することで、多くの商品の中から必要な肌ケアとおすすめの商品が紹介されます。ユーザーは自身の悩みにあった商品を即座に発見できるため、離脱率改善やコンバージョン率の改善を見込めるわけです。
関連記事:診断コンテンツの作り方を徹底解説!企画・ロジック・事例3選をご紹介!
◆クイズ型コンテンツ
クイズ型コンテンツとは、質問と回答のセットで構成されるコンテンツのこと。ユーザーの回答に対して正解を表示するほか、回答内容をもとに適切な商品サービスを紹介することも可能です。クイズ型コンテンツを使えば、ユーザーに楽しんでもらいながら、購買意欲の醸成や自社商品についての理解を深めやすく、クイズ型コンテンツから商品ページやLPなどへ誘導するのが一般的です。
また、クイズ型コンテンツや上の章でご紹介した診断コンテンツ型は、エンターテイメント性が高く気軽に参加できることから、SNSでの大きな拡散やファン化といった効果も期待できます。
グローバルでloTプラットフォームを提供するBolt loTは、急速に発展しているloT技術について多くの人々に理解してもらい、潜在顧客との接点を作る目的で、loT技術に関するクイズ型コンテンツを配信。その結果、10万人以上の訪問者を生み出し、4万7千件以上のコンバージョンの獲得に成功しています。
また日本企業でも、消費者との気軽な双方向コミュニケーション手法として、クイズが用いられています。花王の場合、自社商品を効果的かつ安全に活用してもらうため、クイズ形式で商品の正しい使い方を紹介。双方向コミュニケーションがとれるクイズ形式にすることで、自発的な情報収集を促し、理解促進する狙いがあると思われます。
出典:Kao Plaza
◆チャットボット
多くの企業が導入しているチャットボットも、インタラクティブコンテンツの一種です。おもにWebサイトにおけるカスタマーサポートや各種手続きのサポート、ヘルスケアなどで使用されています。Juniper社は、チャットボットを通した購買は、2019年の73億ドルから2023年には1120億ドルまで伸びると予測しています。
出典:サカイ引越センター
サカイ引越センターは公式サイトにチャットボットを設置。ユーザーはチャットボットを通して、スムーズに知りたい情報を得られます。このようにチャットボットを導入すれば、ユーザーひとり一人に適した体験を提供できるため、コンバージョン率の向上を見込めるでしょう。
関連記事:チャットボットをWebサイトに設置するメリットは?効果を出すポイントとおすすめツール3選を紹介
◆インタラクティブ・インフォグラフィック
インタラクティブ・インフォグラフィックとは、ユーザーの操作に合わせて表示する数値データを変化させるコンテンツのこと。複雑でわかりにくいデータを魅力的に表現できるため、BtoB企業の調査結果に使用されることが多いです。実際にDemandGenの調査では、BtoBマーケターの85%が「インタラクティブ・インフォグラフィックを活用している」と回答しています。
農林水産省は、都道府県別の野菜収穫量をインタラクティブ・インフォグラフィックで表現。画面右で調査したい野菜の種類と収穫年を切り替えられます。また、ユーザーが能動的に情報を閲覧することによる理解促進に加え、SNSでの拡散や複数のデータセットを作成する手間の削減なども期待できます。調査結果の閲覧数が少なかったり、複雑なデータを分かりやすく表現したかったりする場合は、インタラクティブ・インフォグラフィックがおすすめです。
インタラクティブ動画
インタラクティブ動画とは、ユーザーがタップして興味関心のある映像を視聴できる動画です。ユーザーの能動的な参加によるコンバージョン率やエンゲージメント率の向上、商品理解の促進や社員教育などの目的で使用されます。
従来の動画が持つ「全員に同じ情報を発信するため、顧客が知りたい情報にすぐにたどり着けず離脱されてしまう」「動画からコンバージョンにつながりにくい」というデメリットを解消できるため、多くのマーケターの注目を集めています。
Interactive4videoは、インタラクティブ動画は通常動画と比較して、エンゲージメントとコンバージョン率が3~4倍向上するとの調査結果を発表しました。
新生銀行は、資産運用顧客の新規獲得を促進するために、オンライン上で金融商品の理解を促進するインタラクティブ動画を導入。ユーザーはサイト上の動画を視聴しながら、自身に合ったメニューを選択することで、必要な情報をすぐに得て、商品購入ができる仕組みになっています。また、金融商品ならではの難解な言葉は、クリックすると解説のポップアップが表示されるため、店頭と同じように不明点を解消しながら、自分に合った商品を選ぶことが可能です。運用開始から半年で、Web経由からの相談予約数や販売金額の向上を実現しています。
※下の画面をタップ・クリックするとインタラクティブ動画が始まります。ぜひ“触って”体験してみてください。
インタラクティブ動画について詳しくは、他の事例も交えながら、以下の記事で詳しく解説しています。合わせてお読みください。
関連記事:インタラクティブ動画とは?触れる動画の事例、メリット、作り方を完全解説!
インタラクティブ広告
インタラクティブ広告とは、ユーザーのアクションに応じて提供する情報を変える広告です。ユーザーの興味関心をひきつけ、楽しんでもらいながら情報を提供できるため、高いコンバージョン率を見込めます。
出典:Playable ads rise above other formats in mobile advertising: study|Campaign
よく使われるインタラクティブ広告は、広告を通してゲームやアプリを楽しめる「プレイアブル広告」でしょう。Campaign Asia-Pacificによれば、プレイアブル広告は他の広告フォーマットと比較して、CPI(Cost Per Install:1インストール当たりの広告費)が最も低いという特徴があります。
ユーザーにゲームをプレイしてもらいながら広告を提供できるため、ゲームやエンターテインメント、教育業界などがコンバージョン率やエンゲージメント率の向上を目的に活用しています。
また、トヨタホーム東京の例のように、Facebook広告のクッションページにインタラクティブ動画を設置する手法もあります。アンケート形式のインタラクティブ動画を通すことで、ユーザーはトヨタホーム東京の特徴について理解を深めたうえで、「来場予約」もしくは「資料請求」ページへ遷移する流れになっており、コンバージョン率の向上が期待できます。
関連記事:Facebook広告の「クッションページ」にインタラクティブ動画を活用!動画で魅力を訴求し、CVR&成約率向上へ。
まとめ
インタラクティブとは、「対話」や「双方向」という意味の単語です。現在の消費者は多くの時間をオンライン上で費やすからこそ、デジタルマーケティングにおいては一方向でなく、顧客と適切なコミュニケーションを取らなければいけません。
Webサイトやコンテンツにインタラクティブ要素を追加すれば、ユーザーとコミュニケーションを取りながらニーズや課題を把握し、ひとり一人に適した情報や商品の紹介が可能になります。結果的に、コンバージョン率やエンゲージメント率の向上を見込めるわけです。
最適なコミュニケーションを通じて顧客に選ばれるブランドを構築し、よりコンバージョン獲得を強化するためにも、マーケティングにインタラクティブな要素を取り入れてみてはいかがでしょうか。
執筆者
黒谷 純子
MIL株式会社 マーケティング
大学卒業後、編集プロダクション等を経て、人材サービス企業のマーケティング職に従事。2021年3月よりMIL株式会社に入社し、現在は自社サイトやMILblogの企画・ディレクション・執筆等を担当している。
Twitter : https://twitter.com/MIL29292841