テレビ離れが進み、スマホでの動画視聴が日常化しつつある中、自社商品やサービスの認知向上のため、YouTubeへの動画広告出稿を検討している企業も多いのではないでしょうか。当記事では、YouTube広告を活用するメリットや、広告の種類、出し方の手順やコツを詳しく解説します。YouTube広告で成果を上げたいマーケティング担当の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
日本におけるYouTubeのユーザー数と利用時間
新型コロナウイルスの感染対策として巣ごもり生活が長期化した影響を受け、日本でもインターネットでの動画視聴が定着しました。ニールセンデジタル株式会社の2021年の調査によると「日本におけるトータルデジタル利用時間シェア」の1位はYouTubeになっています。利用時間シェアは36%となり、多くの人がYouTubeでの動画視聴に時間を費やしていることが読み取れるでしょう。
引用:ニールセンデジタル株式会社「Tops of 2021: Digital in Japan」
またニールセンデジタル株式会社の調査によると、2021年11月時点で日本におけるYouTubeのユーザー数は約6,700万人となり、約2人に1人の日本人が、YouTubeを視聴している割合となります。
引用:ニールセン デジタル「コンテンツ視聴率Monthly Totalレポート(2021年11月)」
このように、YouTubeが消費者のメインメディアとして君臨する中、これまでテレビCMなどのマスメディアに広告予算を投下していた大手企業も、YouTube広告を積極的に活用し始めているのです。
YouTube広告とは?活用のメリット
YouTube広告とは、動画再生中や動画一覧に広告を表示できる仕組みです。
YouTube広告を活用すると、以下のようなメリットがあります。
- ユーザーが多く、認知向上が見込める
- 細かいターゲティングが可能
- 費用対効果が高い
それぞれについて、解説していきます。
メリット1:ユーザーが多く、認知向上が見込める
先ほどの章でご説明した通りYouTubeはユーザー数が多く「認知拡大に効果的である」点が大きな活用メリットです。
Googleの調査によると、「YouTube広告を30秒以上視聴したユーザーは、ブランドのチャンネルにアクセス、または登録する可能性が23倍高くなる」という結果が出ています。
引用:Think with Google「マーケティング戦略」
広告運用に加えて自社でYouTubeチャンネル運営を行えば、認知向上や購買行動の促進に、より大きな効果が期待できます。企業のYouTubeチャンネル活用について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
関連記事:企業のYouTubeマーケティング3つの手法&チャンネル成功事例5選を解説!
メリット2:細かいターゲティングが可能
YouTube広告は、ユーザーの属性を細かくターゲティングできる点も大きな魅力です。
ターゲティング方法には、ユーザーの属性で絞り込む「オーディエンスターゲティング」と 掲載面で絞り込む「コンテンツターゲティング」の2種類があります。
オーディエンスターゲティング | ユーザーの属性で絞り込むターゲティング手法 年齢や性別、就業状況、子供の有無、ユーザーの興味関心など100以上の項目から絞り込む。例えば、特定のキーワードを検索したユーザーのみに広告を出すことも可能。 |
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コンテンツターゲティング | 広告を掲載する場所(面)で絞り込むターゲティング手法 特定のチャンネルや動画、指定したキーワードに関連する動画に広告を掲載。例えば、人気の美容チャンネルに、化粧品メーカーの動画広告を出す、などが可能。 |
これら2種類のターゲティングを掛け合わせることで、広告を届けたいユーザーへ、効果的にリーチできます。
メリット3:費用対効果が高い
YouTube広告は、課金形式が採用されています。そのためテレビCMと違って費用対効果が高く、低予算から始められる点・効果を測定しやすい点も特徴です。
YouTubeの課金形式は以下の3種類に分けられます。
クリック課金 (CPC) |
ユーザーの属性で絞り込むターゲティング手法 ユーザーが広告をクリックすると課金される方式。 広告に興味のないユーザーはクリックしないため、コストを押さえて出稿できる。 |
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インプレッション課金(CPM) | 動画広告の表示回数に応じて課金される方式。 1,000回表示ごとに費用が発生し、他の課金形式に比べて低予算で出稿できる。 |
動画視聴課金(CPV) | 動画広告を30秒以上スキップせずに視聴されると課金される方式。 広告に興味のないユーザーへの課金が必要なく、無駄なコストを削減できる。 |
自社商品や動画広告の内容に合わせて、課金形式を選択しましょう。
YouTube広告6種類の特徴
YouTube広告の種類は以下の6種類です。
- スキップ可能な「インストリーム広告」
- スキップ不可の「インストリーム広告」
- インフィード広告
- バンパー広告
- アウトストリーム広告
- マストヘッド広告
それぞれの特徴について解説していきます。
スキップ可能な「インストリーム広告」
「スキップ可能なインストリーム広告」とは、動画の前後や途中に再生される動画広告です。再生から5秒経過すると、ユーザーは広告をスキップできます。広告動画の長さは最長6分までアップロード可能です。
引用:Google広告ヘルプ「動画広告フォーマットの概要」
<課金形式>
動画視聴課金、インプレッション課金、目標コンバージョン単価に基づいて料金が発生します。
<利用場面>
自社商品やサービスの紹介など、幅広い場面で使える広告です。最初の5秒でユーザーを引きつけ、それ以降も視聴したいと思える動画を作ることがポイントです。
スキップ不可の「インストリーム広告」
「スキップ不可のインストリーム広告」とは、ユーザーがスキップできない動画広告です。動画の再生前や再生途中に、15秒以内の動画広告を表示できます。
引用:Google広告ヘルプ「動画広告フォーマットの概要」
<課金形式>
目標インプレッション単価制が採用されており、広告の表示回数に応じて課金されます。
<利用場面>
スキップ不可のインストリーム広告は、視聴率の高さがメリットです。ただしユーザーはスキップできない状況を不快に感じやすいため、ストレスなく見てもらえるような動画を作ることポイントです。
検索結果やトップページに表示される「インフィード広告」
「インフィード広告」とはYouTubeの関連動画や検索結果、トップページに表示される動画広告です。動画の再生前や再生途中に表示される広告とは異なり、ユーザーがクリックすることで動画広告が再生されます。
引用:Google広告ヘルプ「動画広告フォーマットの概要」
<課金形式>
クリック課金を採用し、ユーザーがサムネイルをクリックした際に課金されます。
<利用場面>
インフィード広告は、ユーザーのクリックにより初めて表示されるものです。クリックしたユーザーは、商品やサービスへの関心が高い傾向にあります。そのため、CVを意識した動画広告にするのがポイントです。
6秒以内の「バンパー広告」
バンパー広告とは、動画の再生前や再生途中に表示される6秒以内の動画広告です。いわゆる「6秒動画」といわれ、ユーザーは広告をスキップできません。
引用:Google広告ヘルプ「動画広告フォーマットの概要」
<課金形式>
目標インプレッション単価制が採用されており、広告の表示回数に応じて課金されます。
<利用場面>
バンパー広告は、短くてインパクトのあるメッセージを
伝えられる点がメリットで、幅広い属性のユーザーにリーチする場合に役立ちます。伝えたい情報をコンパクトに絞りましょう。
YouTube以外の媒体に掲載「アウトストリーム広告」
アウトストリーム広告とは、音声なし(ミュート)の状態で再生される動画広告です。ユーザーがタップするとミュートが解除されます。アウトストリーム広告はYouTube上ではなく、Google広告と提携したサイトやアプリに表示されます。
引用:Google広告ヘルプ「動画広告フォーマットの概要」
<課金形式>
視認範囲のインプレッション単価(vCPM)に基づき、動画が2秒以上再生された場合に料金が発生します。
<利用場面>
YouTube以外の媒体で動画広告を流したい時におすすめです。多くのユーザーに認知してもらえる可能性が高く、広範囲に宣伝できます。
ファーストビューに表示「マストヘッド広告」
マストヘッド広告とは、YouTubeのホーム画面(ファーストビュー)に表示される動画広告です。最大30秒、音声なしで自動再生され、ミュートアイコンをクリックすると動画の音声が有効になります。自動再生が終了するとサムネイル表示になり、クリックすると再生ページに移動します。
引用:Google広告ヘルプ「動画広告フォーマットの概要」
<課金形式>
インプレッション課金で費用が発生します。予約ベースでの利用のため、見積もりはGoogle広告の担当者とご相談ください。
<利用場面>
マストヘッド広告は、多くの人に商品やサービスを広めたい時に役立ちます。短期間で広い範囲にリーチしたい場合におすすめです。
YouTube広告を出す前の準備
YouTube広告の出稿にあたっては、準備が必要です。
まずは以下の2点を準備しましょう。
- Google広告に登録
- 広告用動画の制作
それぞれについて解説していきます。
Google広告に登録
まずは以下の手順で、Google広告へ登録します。
Google広告の登録には「宣伝したいWebサイト」「広告費の支払い」の設定が必要となります。
1.まずは「Google広告」の公式ページにアクセスして「今すぐ開始」をクリック。
2.メールアドレスとWebサイトのURLを入力して「続行」を選択。
3.最初のキャンペーンの作成を行います。作成後に変更可能ですので、予算とキーワード、テキスト広告の設定をしてください。
4.支払い方法の設定を行います。
5.住所と電話番号の入力を行います。
6.支払いタイプを「自動支払い」「手動支払い」の2種類から選択します。
7.アカウントの作成が完了しました。
広告用動画の制作
続いて、YouTube広告用の動画を制作します。広告の目的と広告のタイプを決めて、それに合わせた編集を行ってください。動画は画像を並べるスライドショー形式でも問題ありません。
ちなみに動画広告は「開始5秒が重要」です。ユーザーが再生した瞬間に「興味がない」と思われると、すぐにスキップされてしまうためです。最初の5秒でユーザーを惹きつけ、広告動画の視聴を続けてもらえるよう工夫を施しましょう。自社での動画制作が難しい場合には、制作会社へ依頼するのもおすすめです。
YouTube広告の出し方と手順の5ステップ
準備ができたところで、YouTube広告の出し方と手順を5ステップで解説していきます。
- 広告用の動画をYouTube上にアップロードする
- Google広告でキャンペーンを作成する
- 広告の詳細の設定をする
- 広告グループを作成し、ターゲットを設定する
- 動画広告の作成
ステップ1:広告用の動画をYouTube上にアップロードする
まずは広告用の動画をYouTube上にアップロードします。
YouTubeアカウントがない場合は、最初にチャンネルの作成を行いましょう。動画のアップロードは、YouTubeのWebページやスマホアプリから行えます。
ステップ2:Google広告でキャンペーンを作成する
「Google広告」にログインをしてキャンペーンを作成します。
2.達成したい目標とキャンペーンタイプを選択します。
(目標=販売促進、見込み顧客の獲得、ウェブサイトのトラフィック、商品やブランドの比較検討、ブランド認知度とリーチのいずれか)
3.「キャンペーンタイプを選択」で「動画」を選択
4.「キャンペーンのサブタイプの選択」でキャンペーンのサブタイプを選択。
なお、各サブタイプの特性は次のとおりです。広告掲載の目標に合ったものを選びましょう。
コンバージョンの促進 | 行動の促進を重視した広告とターゲティングで、商品の販売や見込み顧客の獲得を促進。 |
---|---|
カスタム動画キャンペーン | 各種広告タイプを使用し、設定をカスタマイズ。 |
動画リーチ キャンペーン | 指定の予算で最大限のリーチを実現。バンパー広告もしくはスキップ可能なインストリーム広告を使用して、またはこれらの広告タイプを組み合わせてより多くのユニーク ユーザーにリーチすること、またはスキップ不可のインストリーム広告を使用してリーチしたユーザーにメッセージを最後まで伝えることを目標として選択。 |
検討段階で働きかける | お客様の商品を検討してもらえるよう広告で働きかける。 |
アウトストリーム | スマートフォンとタブレットに特化した広告を表示する。 |
広告シーケンス | 複数の広告を決まった順序で表示して、ストーリーを伝える。 |
ショッピング | 商品を宣伝し、サイトでの買い物を促進。 |
ステップ3:広告の詳細の設定をする
続いて、広告の詳細の設定を行います。
広告動画の管理名を入力します。広告動画が複数ある場合は、管理しやすいキャンペーン名を設定しておきましょう。<入札戦略>
キャンペーンタイプにより変化します。企業の場合、ブランド認知が目的なので目標インプレッション単価がおすすめです。
<予算と日程>
「キャンペーンの合計」と「日別」の2種類あります。一般的には、広告配信期間の総費用を示す「キャンペーンの合計」がおすすめです。
<ネットワーク>
動画広告を掲載する場所を選択します。
<地域・言語>
動画広告を表示させたい地域と言語を選択します。
<コンテンツの除外>
ブランドに適したコンテンツに広告が表示されるように、広告枠のタイプを選択できます。
<関連動画>
動画広告に関連する動画を追加します。動画広告が再生された際、関連動画としてチャンネルの他の動画を表示できます。
<その他の設定>
● デバイス
● フリークエンシーキャップ
● 広告のスケジュール
● 第三者による測定
などを設定できます。
ステップ4:広告グループを作成し、ターゲットを設定する
広告のグループを作成してターゲットを設定します。
広告のグループ名を入力します。<ユーザー>
リーチするユーザーの属性を選択します。属性は、以下より選択できます。
● 性別
● 年齢
● 子供の有無
● 世帯年収
<コンテンツ>
広告動画を配信する場所をターゲティングします。
● キーワード:任意のキーワードに関する動画に対して広告を表示
● トピック:特定のテーマに関するコンテンツに広告を表示
● プレースメント:広告を配信する動画やチャンネル、Webサイトを指定
ステップ5:動画広告の作成
最後に動画広告として配信するYouTube動画を指定します。こちらの画面では、以下の項目を設定します。
● 表示URL:広告下に表示されるWebページ
● 行動を促すフレーズ:広告下のボタンにフレーズを挿入
● コンパニオンバナー(パソコンのみ):「チャンネルバナーを使用して自動生成する」を推奨
その後は、YouTube側で広告の審査があり、完了までに数分〜数時間かかります。ステータスが「有効」になれば、広告が開始されます。
YouTube広告を効果的に出すためのポイント3点
最後に、YouTube広告で成果を出すためのポイントを紹介します。成果につながりやすいポイントは以下の3点です。
- 広告の目的を明確にする
- 動画クリエイティブにこだわる
- 効果測定、運用データの分析を行う
それぞれについて、解説していきます。
ポイント1:広告の目的を明確にする
YouTube広告を出す際は、まず広告の目的を明確にすることが大切です。商品の購入につなげたいのか、自社サービスの認知度を上げたいのか、明確にしなければ戦略は立てられません。
目的を明確にすれば、ペルソナを細かく設定でき、動画クリエイティブやターゲティングを緻密に練ることができます。特にYouTube広告のターゲティングは、100以上の細かい項目からユーザーを絞れる点がメリットです。目的が明確であるほど、ターゲティング機能を効果的に活用できるでしょう。
ポイント2:動画クリエイティブにこだわる
動画広告は、冒頭5秒以内でいかにユーザーの興味を惹けるかが勝負です。高品質なクリエイティブでなければ、すぐに離脱されてしまうでしょう。ユーザーに興味を持たせ、最後まで視聴したくなる仕掛けを盛り込みます。
ただし強すぎる訴求内容やコンプレックスを指摘するような内容は、ユーザーを不快にする場合がありますので注意が必要です。また大前提として、動画広告には審査がありますので「Googleポリシー:動画広告の要件」に違反しないように配慮してください。
ポイント3:効果測定、運用データの分析を行う
YouTube広告の効果を高めるためには、効果測定と運用データの分析が必要不可欠です。よって、動画広告を出した後は、定期的に効果測定を行いましょう。
YouTubeアナリティクスを活用すれば、動画広告のクリック率や視聴維持率などのデータを閲覧できます。データから動画の改善点を見つけ出し、分析を元にクリエイティブをブラッシュアップしていくことが必須になります。特に動画広告では最初の5秒が重要といわれていますので、視聴維持率のデータは必ずチェックしてください。
YouTubeアナリティクスの活用法について詳しくは、以下の記事でご紹介しています。
関連記事:YouTubeアナリティクスの見方&5つの注目指標をわかりやすく解説!
まとめ
YouTube広告を活用すれば、自社商品やサービスを効率的に宣伝できます。多くのユーザーを抱え、ターゲティングに優れたYouTube広告をうまく活用し、認知拡大やサイトへの集客へとつなげましょう。
執筆者
岡本 祐樹
MIL株式会社 インサイドセールス マネージャー
京都大学大学院を中退した翌月にITベンチャー企業に早期就職。SaaSのグループ会社にて大手企業の新規開拓営業を経験した後、IS代行のグループ会社に異動しコンサルティングに従事。動画編集フリーランスとして独立後、インタラクティブ動画マーケティングに可能性を感じ、2021年にMIL株式会社へ入社。ISの立ち上げをミッションに、既存顧客のデータからターゲティングとアプローチを繰り返し、日々多くのお客様の課題解決に伴走している。定期的にウェビナーにも登壇。