「紹介動画」とは、商品やサービス、店舗や施設、会社の理念やビジョンなどを、わかりやすく魅力的に紹介する動画です。この記事では、実際に紹介動画を制作している映像ディレクターが、紹介動画を活用するメリットや紹介動画の種類、魅力的な動画の作り方のポイントや制作のステップを詳しく解説します。
紹介動画を活用する3つのメリット
以下では、紹介動画を活用する3つのメリットをご紹介します。
- 情報量が多く、静止画や文字コンテンツより理解を深めやすい
- 購買・利用意欲の向上が期待できる
- 業務効率化につながる
メリット1)情報量が多く、静止画や文字コンテンツより理解を深めやすい
1つ目のメリットは、動画は情報量が多く、静止画や文字コンテンツより理解を深めやすい点です。
動画を見るときは、静止画や文字を見るときに比べて、視覚と聴覚を同時に使い、動くものを目で追うので、視聴者の脳を使う範囲が増えて、集中力が増します。視聴者は、静止画や文字コンテンツよりも、内容を深く理解することができます。
特に金融・通信・サービスなどの、実際に触れられない無形の商品や、理解の難しいサービスについて情報を届けたり、理念やビジョンといった抽象的なメッセージをわかりやすく伝えたりする場合に、効果を発揮します。
メリット2)購買・利用意欲の向上が期待できる
2つ目のメリットは、購買・利用意欲の向上が期待できる、という点です。
動画では、動くものを見せることができます。例えば、人が商品やサービスを使う様子や、店舗や施設で人が快適そうに過ごす様子などが一目瞭然になります。動くものは、静止画や文字よりもはるかに状態をイメージしやすいため、人の心を動かしやすくなります。
動画を視聴し、「気になる」「試してみようかな」と心が動くと、問い合わせや申し込み、購買や利用といった行動へとつながります。
メリット3)業務効率化&満足度向上につながる
3つ目のメリットは、業務効率化や顧客満足度アップにつながる、という点です。
動画が、人の代わりに基本的な内容を視聴者に伝えてくれます。これまでは営業担当者や窓口・受付などの担当者が担っていた、商品やサービスの概要、施設や店舗の紹介といった業務を、動画が担うことになり、業務の効率化につながります。
動画を通じて、商品やサービスについての基本的な内容を知ることで、視聴者の不安や疑問の解消になりますし、どの視聴者にも同じ内容を最適な方法で伝えることができるので、説明漏れを防ぐことができ、顧客満足度アップにもつながります。
紹介動画の種類
次に、紹介動画にはどのような種類があるのかについて、大きく分けて4種類をご紹介します。それぞれの制作ポイントも参考にしてみてください。
サービス紹介動画
1つ目は、サービス紹介動画です。無形のサービスを紹介し、サービスの利用を促進することが目的です。サービスの内容や利用の手順、サービスを使うメリットなどを紹介します。サービスに興味があり、利用を検討している人や、利用を開始した人がターゲットになります。
<目的>
・低額のサービスの場合⇒サービス申し込みを促す
・高額のサービスの場合⇒資料請求やトライアル、オンライン相談、来店予約など、次のアクションを促す
<訴求する内容>
・サービスの内容や利用方法などの基本的な情報
・サービス利用のメリット
・サービスを利用した結果、得られる未来像
動画を見る視聴者が共感して「自分のことだ」と自分ごと化し、行動するほどまでに心を動かすことがポイントです。そのためには、以下のような工夫をするとよいでしょう。
★ドラマのようなストーリー仕立てで、流れで見せる。
★アニメーションやCGで、具体的なイメージを伝える。
商品紹介動画
2つ目は、商品紹介動画です。有形の商品を紹介し、商品の購入につなげることが目的です。商品の内容や使い方の手順、商品を使うメリットなどを紹介します。商品に興味があり、購入を検討している人や、購入した人がターゲットになります。
<目的>
・低額の商品の場合⇒ECサイトなどへ誘導し、購入を促す
・高額の商品の場合⇒資料請求やオンライン相談、実物を試すための来店予約など、次のアクションを促す
<訴求する内容>
・他の商品にはない特徴
・便利な使い方
・商品を使用することのメリット
動画を見る視聴者の購買意欲を刺激し、購入行動をするほどまでに心を動かすことがポイントです。
そのためには、以下のような工夫をするとよいでしょう。
★商品の内容を詳しく伝え、他の商品にない特徴を強調する。
★寄り(アップ)で細かいディテールを見せ、引きでサイズ感を見せる。
★商品を使うことで物質的に便利になるだけでなく、心理的に潤いや喜びが生まれることを伝える。
サービス紹介動画・商品紹介動画の最新トレンド事例は、以下記事でご紹介しています。
関連記事:【最新トレンド】サービス紹介動画・商品紹介動画のユニーク事例10選!
店舗・施設・物件紹介動画
3つ目は、店舗・施設・物件紹介動画です。店舗や施設、物件などのリアルな「空間」を紹介し、疑似体験してもらうことにより興味を持たせ、利用や購入につなげることです。店舗や施設、物件に興味があり、利用・購入を検討している人がターゲットになります。
<目的>
・オンライン相談や来店予約など、次のステップへの行動を促す
<訴求する内容>
・店舗や施設、物件の場所や環境、その場所を利用中の人などを映し出す
・「快適に過ごせる」「前向きな気持ちになれる」「くつろげる」「楽しめる」などのポジティブな雰囲気を訴求
動画を見る視聴者が「行ってみたい」「利用してみたい」「住んでみたい」と感じて、足を運ぶ行動をするほどまでに心を動かすことがポイントです。そのためには、以下のような工夫があるとよいでしょう。
★地図や、面積などの文字情報では伝わりにくい、広々とした空間や、利用できる共用スペースなども垣間見せる。
★最寄りの交通機関からのルートや周辺の様子・情報なども見せる。
★その空間を過ごす人に自分を重ねられるよう、施設だけでなく「人」を登場させる。
店舗・施設紹介動画の最新トレンド事例は、以下記事でご紹介しています。
関連記事:【2022年最新トレンド】施設・店舗紹介動画の事例10選!
会社紹介動画
4つ目は、会社紹介動画です。会社の取引先や顧客に向けて会社を紹介する目的の動画と、入社を希望する人に向けて、採用活動で会社を紹介する目的の動画の2種類があります。会社の理念やビジョン、沿革や歴史、事業内容や実績、経営者やスタッフなどを紹介します。
<目的>
・興味関心を高め、資料請求や問い合わせを促す
<訴求する内容>
・取引先や顧客⇒企業理念(ブランドメッセージ)や事業内容のほか、商品やサービスの強みを訴求
・求職者⇒企業理念、事業内容のほか、経営者メッセージ、社員の人柄や職務内容、入社後のキャリア
会社のことを知り、取引などのお付き合いをしたい、入社したいといった気持ちを高めるために、見る人をファン化させることがポイントです。そのためには、以下のような工夫があるとよいでしょう。
★取引先や顧客に向けてはフォーマルな見せ方、求職者に向けては、会社のカラーや社員の雰囲気がわかるようなセミフォーマルな見せ方にする。
★自社の規模によって、温度感(熱量)を調節する。大手企業であれば、洗練されたクールなイメージ、中小企業やスタートアップ、ベンチャー企業であればホットなやる気のあるイメージでまとめる。
★専門用語を極力使わず、分かりやすさを優先する。
紹介動画 制作の5ステップ&ポイント
次に、紹介動画の制作方法と、制作におけるポイントをご紹介します。
制作には5ステップあり、動画制作会社へ制作を依頼する場合、4ステップ目の「実制作」のパートは制作会社メインの作業となります。それ以外は、制作を依頼する人と制作会社の共同作業です。動画の内容によっては、動画の公開後も定期的に動画内容を更新する必要があり、制作会社と長いお付き合いになるケースもあります。長期的な視点も踏まえて、制作を検討しましょう。
1:活用目的・ターゲットを決める
まず、動画の活用目的やターゲットを決めます。きちんと軸を定めることで、具体的な動画制作に入ったときに、例えば良さそうな動画内容の案が複数あった場合でも、達成したい目的に沿って判断することができます。ここでのポイントは以下の2つです。
- ターゲットを絞り込み、「ターゲット外には響かなくてよい」というくらいの覚悟をする。
- 動画のKPI(Key Performance Indicator)を設定する。
「すべての世代やカルチャーに響く動画」はありません。例えば、「誰でも老後の資産の心配はするだろう」と考えても、老後の資産の心配を全くしない人も存在します。具体的に年齢や性別をイメージした方が、それに近い人にも結果として響くものになります。特に、「20代女性向けの商品」などと、ターゲットを狭く絞って作っている紹介動画の場合は、ターゲットが明確ですので、万人受けを狙う必要はありません。
動画のKPIを設定することもポイントです。動画を見た後、何人にどんな行動をとってほしいのか、数値化して決めておくと、動画導入の効果が把握しやすくなります。
2:配信媒体を決める
2ステップ目では、配信媒体を決めます。
主な配信媒体には、動画配信アプリ(YouTubeなど)、SNS(TwitterやLINEなど)、動画広告媒体(GDNやYDNなど)があります。配信媒体は多様化しており、媒体の視聴者もさまざまです。自社の情報を受け取りたいターゲットと出会えるメディアを選ぶことが重要です。
ここでのポイントはこちらです。
- 活用シーンを想定して、動画を横型か縦型で作るかを決める。
例えば、動画は自社のWebページや広告、メルマガやSNS上で見てもらう、展示会や店舗のスクリーンで再生する、などのシーンが想定されます。これらの主なデバイスがPCであるならば横型で、スマホであるならば縦型で動画を作る必要があります。
3:構成を作成する
3ステップ目では、動画の構成を作成します。
1ステップ目で整理した、動画の目的やターゲット、訴求したい内容に沿って、盛り込みたい情報を洗い出します。例えば、商品やサービスの紹介動画であれば、商品の基本情報や使い方、メリット、利用者の声、アンケート結果など、商品やサービスについての膨大な情報の中から、動画の視聴者が知りたいであろう情報を選別します。それらを並べてみて、どんな見せ方なら効果的に伝わるかを検討し、構成を決定します。
ここでのポイントはこちらです。
- 視聴者が知りたいであろう情報を選んだら精査し、最も訴求したい要素を選びぬく。
一つの動画にたくさんの要素を盛り込みすぎると訴求したいポイントが分散し、メッセージが弱くなります。ここでしっかりと要素を選びぬくことが大切です。
4:実制作(台本・絵コンテ作成、撮影、アニメ―ション、録音、編集)
4ステップ目では、動画を実際に制作します。
3ステップ目で作成した構成に基づいて台本を作成し、画面のイメージを絵コンテの形で描きます。これらを設計図として、動画制作が始まります。
このステップは動画制作会社が中心となり、制作の依頼者と確認を取りながら進めていきます。制作の依頼者には、以下のようなポイントで確認を求められることがあります。
- 撮影やナレーション収録の立ち合い
- アニメーションの場合の、トンマナ(トーンやマナー、つまりデザインの手法やルール)の確認
制作の依頼者と制作会社で内容を確認し、動画の完成となります。
5:効果を測定し、改善につなげる
5ステップ目では、動画公開後の効果を測定し、改善につなげます。動画は、公開してからが本当のスタートです。1ステップ目で明文化した目的が達成されているのかを分析し、その結果を踏まえて、さらに効果的な動画へと改善していきましょう。
動画の総再生回数や視聴状況(配信媒体や視聴者が使用したデバイス、最も閲覧された箇所、離脱があった箇所など)を測定して数値化します。測定には、Googleアナリティクスなどの解析ツールを使うほか、動画の作成から効果測定まで可能な動画マーケティングツールを使う方法があります。
紹介動画の最新トレンドは「インタラクティブ動画(触れる動画)」
ここまで「紹介動画」についてご紹介してきましたが、近年は動画を活用する企業が増えてきており、同業他社との差別化を図りづらいという声も増えてきています。
そのような中、注目を集めているのが「インタラクティブ動画」を使った紹介動画です。以下では「インタラクティブ動画」を使った紹介動画の成功事例についてご紹介します。
インタラクティブ動画(触れる動画)とは?
インタラクティブ動画(触れる動画)とは、タップ/クリックできるなど「視聴者が触れる仕掛けを組み込んだ次世代型動画」のことです。従来「視聴のみ」で終わっていた動画の中に「仕掛け」があることで、今までにない視聴体験ができるようになります。インタラクティブ動画は双方向コミュニケーションが実現でき、「コンバージョンにつながりやすい」「疑似体験できる」などの特徴があり、紹介動画の目的と大変マッチしています。
特にカード会社、生命保険会社、銀行など、複雑で理解が難しいサービス・商品の紹介動画や、店舗・施設・物件・会社など空間を紹介する動画との相性が良く、ランディングページをはじめ、SNS・広告・メルマガ等で活用が進んでいます。
関連記事:インタラクティブ動画とは?触れる動画の事例、メリット、作り方を完全解説!
サービス紹介動画事例:紹介動画で、CVが120%上昇!(三井住友カード株式会社)
個人事業主の方向けビジネスカード「三井住友ビジネスカード for Owners」のLPにおいて、テキストだけでは訴求しづらいカードの特長を分かりやすく伝え、CV数を上昇させるための施策としてインタラクティブ動画(触れる動画)の埋め込みを行ったところ、CV数が120%上昇するという結果が出ました。
<動画設置後の効果>
- CV数:120%UP
- ページ平均閲覧時間:62秒
- インタラクション率(タップ・クリックの率):6.73%
- 視聴完了率:5.18%
実際の動画
ぜひタップ・クリックしながら視聴してみてください。
動画の成功ポイント
【ポイント1】見たい部分を視聴者が選択できる!(=適切な再生時間)
インタラクティブ動画の「ストーリー分岐機能」を用いて、視聴者自身が見たいパートを選べるつくりになっています。
⇒選択肢1:受注機会増加
⇒選択肢2:会社経理支援
⇒選択肢3:スマートな出張体験
これにより、視聴者は関心のあるパートをすぐに視聴できるので、無駄な待機時間がなく、離脱を防ぐことができます。通常の動画の場合、仮に3分の動画だとしたら、知りたい情報が動画のどの時点から始まるのかわからず、情報を待ちきれずに離脱してしまうことが多いのではないでしょうか。
【ポイント2】タップ・クリックすると詳細情報が表示される!(=理解促進)
分岐後の動画では、動画内のクレジットカードに、タップできるマークが付いており、マークをタップ・クリックするとポップアップ画面が表示されて、簡潔にまとめた説明文が表示されます。
【ポイント3】動画から申し込みページへ直接遷移できる!
動画内のリンクをタップ・クリックすると、三井住友カードのお申込みページへそのまま遷移できます。動画をいったん閉じてから申込ページへ移る手間が省け、カードへの興味が高まった状態で、ネクストアクションへつなげることができています。
【ポイント4】視聴者の興味・関心をデータで把握できる!
インタラクティブ動画では、視聴者の興味関心をデータとして取得することが可能です。当事例では、個人事業主やスタートアップ経営者は「会社経理支援」について一番興味を持っている事がわかりました。この結果を元に、次の動画クリエイティブにつなげることができます。
まとめ
「紹介動画」とは、商品やサービス、店舗や施設、会社の魅力を、わかりやすく魅力的に紹介する動画です。動画を活用することで、問い合わせ・予約・購入など、次のアクションを促進することが目的です。動画の効果を高め、他社との差別化を狙うなら、トレンドの「インタラクティブ動画」を制作してみてはいかがでしょうか?ぜひご検討ください。
執筆者
飯島 豊
MIL株式会社 クリエイティブグループ ディレクター
1976年生まれ、栃木県出身。プロダクションにて映像ディレクター、舞台美術デザイナー、Webディレクターを経て、2021年4月よりMIL株式会社に入社。主に企画、ディレクションを担当している。