コロナ禍以降、BtoB企業でのウェビナー開催は増加し、効果を実感しつつある企業が増えています。株式会社キャスターの調査によると、ウェビナー運営経験者の84%が「ウェビナーの効果を実感している」と回答しました。
一方で「社内に熟練しているスタッフがまだまだ少ない」「段取りが悪く時間が大幅におしてしまう」といった回答も。ウェビナー運営に不慣れであっても段取り良く進行するためには、台本を用意すると安心でしょう。
この記事では、BtoB企業でウェビナー運営を行っているご担当者に向けて、ウェビナー台本やスムーズな司会進行のポイントを解説します。また、台本にそのまま使える文章テンプレートもご紹介しますので、ウェビナーの台本づくりをお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ウェビナーに台本が必要な理由
ウェビナーはオンライン上で開催するセミナーであり、コロナ禍をきっかけに、新規のリード獲得やナーチャリングのための施策として急速に普及しました。
株式会社シャノンの調査では「ウェビナーへ自発的に参加した人」が2020年は全参加者の3割だったのに対し、2021年には5割以上に増加。また、2020年と比べて2021年にウェビナーの視聴頻度が高まったと回答した人は7割いました。
出典:株式会社シャノン「企業の情報収集とウェビナーの参加状況に関するアンケート」
参加者がウェビナー視聴に慣れつつある状況で、開催企業側にはトラブルのないスムーズな進行が求められます。
ウェビナーの進行をつかさどる司会の役割は、登壇者と参加者がセミナーに集中できる環境を作り、時間通りに進行させることです。具体的には次のようなものがあります。
- プログラム通りの進行
- 各種案内(注意点、登壇者紹介、アンケートや次回ウェビナーの案内など)
- タイムキーパー
- 質疑応答の仕切り
- トラブル対応
登壇者が司会を兼ねるケースもあり、こういった多くのことをスムーズに進行させるためには、進捗を確認できる台本が必要となります。
また、ウェビナー参加者は対面のセミナーと違って離脱しやすく、スムーズな進行ではない場合ウェビナーから離脱してしまうおそれもあります。参加者が離脱する原因を減らすためにも、台本に沿ってスムーズな進行を目指しましょう。
ウェビナーの台本を用意するメリット・デメリット
台本を用意した上でウェビナーを開催するメリット・デメリットについて、ご紹介します。
メリット
ウェビナーの台本を用意するメリットは、おもに2つあります。
- あらかじめ発言内容を用意することで、参加者にわかりやすく伝えられる
- 登壇者情報や企業・商品情報など、伝えたい内容を漏れなく正確に伝えられる
台本があると、発言内容が整理されているため、過不足なく伝えられます。また、登壇者のプロフィールや、ウェビナーで紹介したい企業情報・商品情報は正確に伝える必要があるため、台本に記載して司会進行に臨むと、正確な情報を漏れなく伝えることができます。
デメリット
ウェビナーの台本を用意するデメリットは、次の2つがあります。
- 一字一句セリフを決めてしまうと、かえって進行がスムーズでなくなる
- 台本作成に時間がかかる
ウェビナー台本を読み上げることに集中してしまうと、棒読みで参加者の興をそぐものになったり、ハプニングが発生した場合にとっさの対応がしにくくなったりします。また、開催のたびにセリフを考える必要があり、台本作りに時間がかかりがちです。
デメリットを生じさせないためには、話すべきポイントを端的に記述した台本を作りましょう。テンプレート化しやすい台本にすることで、次回以降のウェビナーにも活用できるため、次回以降の台本作成にかかる時間も短縮できます。
ウェビナーの一般的な構成
台本を考える前に、ウェビナーは一般的にどのような構成で進行するのかを見ていきましょう。
オープニング
ウェビナーの冒頭では、次のような案内を行います。
・自己紹介
・注意事項説明
・本日のテーマ説明
・開催企業・登壇者名・プロフィールの紹介
・プログラム紹介
・アンケートの案内
自己紹介では、司会者の自己紹介のほか、開催企業の紹介を行います。ウェビナーへの理解を深め、ウェビナー後のナーチャリングにつなげていくため、事業内容や商品・サービスなどの企業概要を伝えるとよいでしょう。ただし、潜在層の参加が多く見込まれるウェビナーでは、まだ企業や商材への関心が薄いため、PRが強くなり過ぎないように注意が必要です。
ウェビナー中
本編は以下のような構成になっています。
・質疑応答
・アンケートの案内
・休憩(90分超など長いウェビナーの場合)
質疑応答のスタイルは、企業によってさまざまです。例えば登壇者が話している最中に随時チャットに質問を入力してもらい都度回答するスタイルや、講演終了後にまとまった時間をとって質疑応答するスタイルなどがあります。
質疑応答では、質問が全く出ない場合とたくさん出た場合を想定しておくと安心です。例えば質問が全く出ない場合は司会者からの質問を用意しておく、たくさん出た場合は何を優先して回答するか選別基準を決めておく、などの対応が想定できます。
エンディング
ウェビナーの最後は、次のような案内を行います。
・アンケート依頼
・次回ウェビナーの告知
ウェビナーには途中参加・途中退出する人もいるため、アンケートについてはエンディングだけでなく、オープニングやウェビナー中など複数回告知することで回答率を高めましょう。回答特典もしっかり伝えるのがコツです。
また、次回のウェビナーは可能な限り企画しておき、参加者に直接告知しましょう。ウェビナーは計画的なナーチャリングに効果的ですから、例えば今回が「潜在層向けの業務課題解決などのウェビナー」なら次回は「顕在層向けの事例ウェビナー」といった具合に、想定するウェビナー参加者にとって少し先のフェーズを見据えた内容を企画するのがおすすめと言えます。
関連記事:ウェビナー企画の立て方&成果につなげる3つのポイントとは?効果測定や企画改善の方法もご紹介
関連記事:ウェビナーアンケートの作り方&項目例を解説!回答率を高める5つのコツも合わせて紹介
ウェビナーの台本に必要な項目と文章テンプレート
ウェビナーの構成に合わせた、台本に必要な項目と文章例をご紹介します。「〇〇」に言葉を入れてそのままお使いいただけますので、ぜひご活用ください。
オープニングの台本例
オープニングでの台本に必要な項目と文章例をご紹介します。
挨拶 | 本日は、お忙しい中オンラインセミナーにご参加いただき、誠にありがとうございます。 |
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自己紹介(司会者) | 本日司会を務めさせていただく〇〇株式会社の〇〇です。 |
ウェビナーの注意事項 | セミナーに先立ちまして、注意事項を〇点申し上げます。 録画や録音はお控えいただきますようお願いいたします。 講演中はミュートの徹底をお願いいたします。 |
質疑応答について | 講演内容についてのご質問は、質疑応答の時間にチャットにご入力ください。時間のある限り回答いたします。 |
お困りの場合 | もし、講演中に映像が切断された場合は、同じURLやIDに再度アクセスしてください。 それでもご入室できない場合は、弊社の電話番号〇〇・担当〇〇までお電話ください。 |
テーマの概略説明 | 本日のセミナーは、〇〇〇〇をテーマに、弊社の〇〇より講演いたします。 |
自己紹介(開催企業) | 弊社は〇〇年に設立し、〇〇の分野で〇〇サービスを提供しております。 |
登壇者紹介(氏名・企業名・役職名ほか) | 〇〇は、株式会社〇〇で〇〇を務めております。 ※登壇者プロフィールを読み上げ |
プログラム紹介 | 第1部 〇時~〇時 休憩 5分 第2部 〇時~〇時 質疑応答 10分 終了時刻は〇時〇分頃の予定です。 |
アンケートの案内 | 本セミナー終了後にアンケートをお願いします。 ご回答いただいた方には、〇〇(本日のセミナー資料など)をお送りいたします。 ぜひよろしくお願いいたします。 |
ウェビナー本編中の台本例
ウェビナー中の台本に必要な項目と文章例をご紹介します。
質疑応答 | ただいまより、質疑応答のお時間といたします。 質問内容はチャット欄にご入力ください。 |
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質疑応答で質問が出ない場合 | 皆さまに質問を考えていただいている間に、私から先にお話しさせていただきます。 ⇒他のセミナーでもよく聞かれる「誰もが聞きたいと思うであろう質問」を代理で聞く ⇒Yes/Noで終わらない、講演内容の復習となるような質問を投げかける |
質問が複数ある場合(選別と読み上げ) | ただ今いただいた質問は、〇〇です。 〇〇さん、いかがでしょうか。 |
質疑応答の締め | たくさんご質問をいただいたのですが、お時間となりましたので、こちらのご質問で最後とさせていただきます。 ※時間が足りなかった場合などは「後ほど個別に回答をメールにてお送りします」などフォローコメント。 |
休憩(90分超など長いウェビナーや複数社のカンファレンスの場合) | ここで、〇分間の休憩とさせていただきます。 〇時〇分より第〇部を再開しますので、それまでにお戻りいただけますようお願いいたします |
エンディングの台本例
エンディングパートに必要な項目と文章例をご紹介します。
アンケート依頼 | セミナー終了後に、アンケートへのリンクをお送りします。 ご回答いただいた方には、〇〇(当日の資料など)をお送りしますので、 ぜひ宜しくお願いいたします。 |
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次回ウェビナーの告知 | 〇月〇日に、〇〇〇〇をテーマとしたオンラインセミナーを予定しております。 〇〇を課題と感じている方に、お役に立つ内容となっておりますので、ご参加をお待ちしております。 |
締めの挨拶 | 以上をもちまして、セミナーを終了いたします。 お忙しい中ご視聴くださいまして、誠にありがとうございました。 |
ウェビナーをスムーズに司会進行するためのポイント5つ
ウェビナーをスムーズに司会進行するために、台本の作成以外にも工夫できることがあります。そのポイントを5つご紹介します。
- 登壇者と別に司会者を用意する
- 事前準備を行う
- 司会者も講演をしっかり聴く
- 開始前スライドを活用する
- 双方向コミュニケーション機能を活用する
1. 登壇者と別に司会者を用意する
自社社員が登壇者として講演を行う場合は司会者を兼務しがちですが、役割を分けた方がスムーズな進行になります。この場合は、次のように役割分担をするのもよいでしょう。
★登壇者=ウェビナー中(講演)の進行
司会者は、講演後に感想を述べて場の雰囲気をやわらげたり、質疑応答で司会者からも質問ができるように、きちんと講演内容を聞きましょう。質疑応答の際は、「参加者からの質問」「登壇者の回答」をしっかり聞きとる、登壇者や参加者など司会者以外の人が話している間はミュートにするといった点も留意しましょう。
2.事前準備を行う
司会者は、ウェビナーツールの機能を理解し使い方に習熟しておきます。参加者から操作方法を質問された場合にもすぐ答えられるように、参加者側の画面も確認しておきましょう。
さらに、社内の人の協力を得ながら本番前のリハーサルを行うと安心です。流れを頭に入れ、実際に台本を見ながら司会進行する練習もしておくとよいでしょう。
関連記事:Zoomウェビナーの開催方法と参加方法をご紹介!ウェビナーの費用対効果を最大化する方法も解説【画像付】
3.トラブル発生時の対応を準備しておく
ウェビナーではインターネット環境を利用するため、回線や接続でのトラブルが発生する場合があります。
トラブル発生時に全員へ向けてアナウンスを行うのは司会者の役割ですから、トラブル発生時を想定した準備をしておくとよいでしょう。例えば次のような準備があります。
- 登壇者の映像や音声が途切れてしまった場合に備え、トラブル解消を行う旨を記したスライド/文章を準備しておく。
- 音声に問題がない場合は司会者が話して場をつなぐことができるため、話す内容を準備しておく。(例:登壇者への質問、これまでの講演内容で印象に残った話、アンケートの依頼、次回ウェビナーの告知など)
- トラブル解消に時間がかかった場合や登壇者のデモンストレーションが長引いた場合に、どこで時間調整するか決めておく。
4. 開始前スライドを活用する
ウェビナー開始前や休憩時間中には、スライドを活用しましょう。参加者が入室したらまず目にするスライドを作成し、プログラムや登壇者情報などを表示しておきます。また、休憩時間中にスライドを表示すれば、講演再開時間やアンケートのリマインドもできるので、司会進行をサポートしてくれる存在となります。以下の記事で、スライドの作り方と無料テンプレートをご提供していますので、ぜひご活用ください。
関連記事:ウェビナー用スライドの作り方!開始前・休憩中の場面別に解説【テンプレート付】
5.双方向コミュニケーション機能を活用する
ウェビナーツールには、参加者とコミュニケーションを取るための機能が備わっています。チャット(参加者が質問などをテキスト入力して送信する機能)やアンケート(講演終了画面にアンケートへのボタンが表示される機能)のほかには、次のような機能があります。
・Q&A
・ブレイクアウトルーム
例えば、講演中に投票やクイズ機能で簡単な質問を投げかけ、参加者からの回答をアイスブレイクトークに使用します。参加者の顔が見えないウェビナーで、参加者の反応を確認しながら進行できます。
開催者と参加者の双方向なウェビナーを実現するコツについては、次の記事をご参照ください。
関連記事:双方向なウェビナーを実現する5つの方法!アーカイブでの双方向コミュニケーション手法も紹介
関連記事:【2023年】ウェビナーツール・プラットフォーム7選を無料から有料まで徹底比較!比較表つき
まとめ
当記事では、ウェビナーをスムーズに司会進行するために必要となる台本の項目について解説しました。台本があることで参加者にわかりやすく伝えられ、正確に伝えるべき登壇者情報や商品の情報などを漏れなく伝えられるメリットがあります。
ただ、一字一句が決まった台本にすると棒読みになってしまいますから、必要なポイントを押さえた台本にすることが大切です。また、ご紹介した「スムーズに司会進行するためのポイント5つ」もぜひ役立ててみてください。
執筆者
瀧口 愛
MIL株式会社 マーケティング
Web制作会社でサイト構築に従事後、MIL株式会社へ入社し、マーケティングチームに所属。ウェビナーや展示会実施の基盤を構築し、毎月のウェビナーやオフラインイベントの企画・運営全般を担当している。その他、メルマガ配信やマーケ全体の施策効果分析など、フィールドマーケティング領域全般を担う。