Webサイトを訪問したユーザーをコンバージョンに導くための手段として注目されている「チャットボット」。「ミレニアル世代の60%がチャットボットを利用した経験がある」という調査データもあり、今後さらなる成長が見込まれています。
チャットボットを使えば、サイト訪問者ごとのニーズに合わせて「パーソナライズされた情報提供」を実現できるため、離脱を防ぐとともに商材への興味関心を高め、CVR向上が可能。特に商品ラインナップが多いサイトや、ユーザー1人1人の嗜好や課題に応じたサービスを提供しているサイトでの効果が期待できます。
当記事では、WebサイトのCVR改善を目指す企業に向けて、チャットボットを活用するメリット、注意点について詳しく紹介します。
目次
チャットボットとは?
「チャットボット」とは、人工知能(AI)と自然言語処理(NLP)を使用して、ユーザーがWebサービスやアプリと対話するのを支援する、ソフトウェアアプリケーションです。チャットボットは自動の個別対応が可能であり、人間が入力した文章を理解して適切な返答をしたり、個人のニーズに応じておすすめ商品を紹介したり、といったシーンで活用されています。
Webサイトの離脱防止やCVR改善、顧客体験向上など幅広く効果があるため、各社で活用が進んでいます。
チャットボットの種類
チャットボットには以下の3種類があります。
- シナリオ型
- AI型
- 複合型(シナリオ型+AI型)
「シナリオ型」とは、あらかじめユーザーが進むシナリオを想定し、それにそってチャットボットが対応する形式です。「シナリオ型」のチャットボットを利用する場合、ユーザーは自分で文章を作成するのではなく、与えられた質問の選択肢の中から適している項目を選ぶ形になります。「シナリオ型」を活用することで、複数の商品・サービスの中から自分のニーズに合致するものを見つけられるため、ユーザーに対する商品提案などに適しています。
特に複雑な前提条件などを踏まえて、最適な商品を紹介したいケースでは、チャットボットを通じて絞り込みをすると効率的に商品・サービスをおすすめできます。
(出典:【30秒で完了!パーソナルカラー診断】イエベ・ブルべ別、本当に似合うコスメ選び♪ | 美容の情報 | ワタシプラス/資生堂)
一方、「AI型」では、ユーザーがチャットボットに対して自由に質問を送ることができます。入力された質問のキーワードなどからチャットボットが質問の意図を柔軟に理解し、最適な回答を提供。人工知能によって自然な人間同士の会話に近いやりとりを実現できるため、問い合わせ対応などに適しています。
また、AI型とシナリオ型の両方を併せ持つ「複合型チャットボット」は、シナリオ型のように事前に定義されたルールに基づいてユーザーの要望に応えようとした後、対応できなかった場合にAIの学習機能を利用して文脈を理解し、柔軟な対応を行います。「複合型」は、チャットボットだけでも対応ができる簡単なケースと対人対応が必要になる複雑なケースが混在するWebサイトに適しています。
国内外でチャットボットの導入が進んでいる
チャットボットの市場は、国内外で大きく成長しています。
Fortune Business Insights の調査によれば、2019年の3億9620万米ドルから、2020年~2027年の間に19億5330万米ドルに成長すると予測されており、その背景にはコロナによるビジネス形態の変容があります。近年、オフラインからオンラインへと消費活動がシフトするとともに、商品のレコメンドや問い合わせ対応などオンライン接客のニーズが高まり、それらを自動化できるチャットボットの導入が加速したと考えられるでしょう。
(出典:Chatbot Market Size, Growth & Trends | Forecast [2020-2027] (fortunebusinessinsights.com))
チャットボットをWebサイトへ設置する目的とメリット
チャットボット導入の目的は、主に以下の3点です。
- コンバージョン率の向上
- 問い合わせ対応の業務効率化
- Webサイトやサービス・商品の改善
コンバージョン率の向上
チャットボットはWebサイトのコンバージョン率の向上に役立ちます。チャットボットは対話を通して個別のニーズを聞き出し、サイト訪問者ごとにパーソナライズされたユーザー体験を提供するためです。Juniper社は、チャットボットを通じた購買は2019年の73億ドルから2023年には1120億ドルに増加すると予測しており、会話型マーケティングにより顧客エンゲージメントを高める効果があると読み取れます。
(出典: チャットボット型マーケティングツール「SYNALIO」)
チャットボットとの個別対話によって自動的に各ユーザーに最適なアプローチが可能となり、販売サイクルの加速や顧客ロイヤリティの向上が見込めます。
個人の好みやパーソナライズが重視されるファッション、化粧品、ECサイトなどと特に相性が良いといえるでしょう。例えば化粧品販売のWebサイトにおいて、自分の肌や髪の色に合ったメイクを探しているユーザーに対し、最適なカラーバリエーションの商品の情報提供が可能です。更にその人に合わせたクーポンやキャンペーン情報の配信が可能で、離脱防止・回遊性の実現も期待できます。
問い合わせ対応の業務効率化
従来型の人による問い合わせ対応では、顧客の問い合わせ内容によっては複数回のやり取りが必要な場合もあり、従業員が対応に多大な時間をとられてしまいますが、チャットボットを導入すれば問い合わせ対応の自動化につながり、業務効率の向上が見込めます。
Gertner社の統計では、チャットボットを導入することで企業が電話やメールなどで対応する問い合わせのうち、70%が削減されたと発表されています。
(出典:株式会社コンシェルジュのプレスリリース)
また、チャットボットの導入はユーザーにとってもメリットがあります。同統計によると「人間が対応してくれるのを待つよりもチャットボットを利用する方がいい」と62%の消費者が回答しています。スピーディな対応はCVR改善にも重要で、ユーザーが商品に興味を持ったタイミングでチャットボットが商品提案を自動対応してくれれば、機会損失を防ぐ効果があります。
Webサイトやサービス・商品の改善
チャットボットを通じて各ユーザーの行動やニーズを把握することは、Webサイトやサービス・商品を改善するための重要な情報になります。
顧客一人一人の会話内での反応をデータとして記録することで、ユーザーが何に関心を持っているか、何がうまく機能していないかを明らかにできます。例えば分析を通して現状のユーザー属性を掴むことができれば、よりターゲットを絞ったマーケティングにシフトすることが可能です。その顧客に最適化したサービスを提供できるとともに、全体的な顧客の動向把握をしてさらなるCVR改善に向けた対策が立てやすくなります。
チャットボットでは補えないこと
チャットボットの導入は投資収益率(ROI)が高く、業務効率化と顧客満足度向上を同時に目指すことのできる投資です。しかし、すべてを自動化できるわけではないという点には注意が必要です。チャットボットの導入を検討する場合は、以下のポイントを踏まえて投資価値があるかを判断しましょう。
全ての問い合わせに対応できるわけではない
チャットボットは「テクノロジーを駆使した自然な会話」が特徴ですが、複雑な質問や抽象的な文章、クレームなどには対応しきれないケースもあります。
チャットボットは、前後の文脈や事前の情報を必要とせず、言葉のみで表現できる「ローコンテクスト」なコミュニケーションには適しています。一方で、前後の文脈や暗黙の共通認識、文化的背景、知識、カルチャーなど、言葉には表現していない「行間や背景を読み取る」ことを前提とした「ハイコンテクスト」なコミュニケーションは不得意です。
AI型であればシナリオ型よりも精度の高い応対ができるため、ユーザーの書いた文章に対しても自然に返事ができ、学習を重ねることで応対の精度は上がっていきます。しかし、質の低いサービスを利用してしまうと「学習」の速度が遅いこともあり、人間による対応が増えてしまう場合もあると覚えておきましょう。
シナリオ設定が必要
「シナリオ型」のチャットボットには「シナリオ設定」が必要です。
(出典:チャットボットならAI Messenger Chatbot(AIメッセンジャーチャットボット) )
シナリオ設定のためには、まずフローチャートを作成する必要があります。重要なのは、大きなカテゴリーから徐々に選択肢を狭めていき、最終的にユーザーに最適化されたアンサー(パーソナライズされた商品・サービスの紹介)にたどり着く構造です。質問の数が多かったり、不明瞭な質問が寄せられたりするケースでは、チャットボットは機能を最大限に発揮することができません。なるべく広範囲の需要に答えようとすると、シナリオからコツコツ設計することになるので、リリースまでに時間がかかってしまいます。
チャットボット設置の手順&効果を出すポイント
チャットボットはただ設置するだけでは期待したほどの大きな効果が得られないというケースもあります。ここではチャットボット導入の手順と注意すべきポイントを5つのステップに沿ってご紹介します。
- 導入目的を明確にする
- 必要な機能を洗い出し、ツールを選定する
- シナリオを設定する
- チャットボットツールのタグをサイトに埋め込む
- データに基づき、PDCAサイクルを回す
導入目的を明確にする
チャットボット導入で大きな効果を生むためにまず重要なのは、「導入目的を明確にすること」です。
- コンバージョン率の向上
- 問い合わせ対応の業務効率化
- Webサイトやサービス・商品の改善
上記のような基本的な方向性の維持に加え、中長期的にみてどのくらいの効果を見込んでいるか、数値的な目標を設定することも大切です。まずは、Webサイトが現状を正しく理解し、チャットボットを通じてどのように改善していきたいかを明確にしましょう。
必要な機能を洗い出し、ツールを選定する
チャットボット導入のためには、目的に応じて適した種類を選ぶ必要があります。
- 決まった質問への対応→選択形式チャットボット
- ユーザーの自由入力の質問に対応→AI型チャットボット
- 自動対応が不可能な場合は有人対応→AI型チャットボット+有人対応
さらに、チャットボット導入の際は「自社にとって必要な機能」に注目しながらチャットボットベンターを選択するのがおすすめです。
- 管理画面の操作性は満足か?
- 無料トライアルはあるか?
- 多言語機能があるか?
- サポート内容に何が含まれるか?
- 外部ツールとのAPI連携が可能か?
- 費用対効果が高いか?
Gooの調査によれば、チャットボットを導入した企業の半数以上が「コストや使いにくさを理由にチャットボットベンダーを途中で変更」しており、導入前にベンダーの特徴を理解しておく必要があるとわかります。
しかし、CVR率向上などを目指す場合にはチャットボットの対応だけでは不十分なこともあります。例えば、チャットボットは基本的に「テキストコミュニケーション」になりますが、テキストのやりとりだけでは理解の難しい商材を扱うWebサイトの場合、動画など他の表現と組み合わせて使用するのが効果的です。
例えば、決済代行サービスのWebサイトで「他社比較のコンテンツ」を表形式から動画に差し替えた結果、CVRが260%向上した例があります。同様に、チャットボットに動画を活用すれば、ユーザーの理解促進が期待できるでしょう。特に、ソフトウェアや製品、複雑な金融サービスなどにおいては、チャットボットで動画コンテンツを案内することで、より分かりやすく情報を届けられます。チャットボットに動画を活用したい場合は、機能の有無も確認しておきましょう。
また、チャットボットと同様の「双方向コミュニケーション機能」と「わかりやすい映像表現」の両方を兼ね備えた「インタラクティブ動画」の導入も有効です。視聴者のタップ・クリックに合わせて最適な情報を動画で分かりやすく伝え、動画内から関連ページへと直接遷移するため、CVR向上に有効です。
「チャットボットの導入」を目的とするのではなく、自社の目的を果たすために最適な手段・ツールを検討しましょう。
シナリオを設定する
シナリオ設定はチャットボット導入における最も重要な工程の1つです。シナリオが丁寧に作りこまれていれば、ユーザーが求めている商品・サービスを的確におすすめすることができます。ただし、チャットボットのシナリオ設定には項目数の制限があります。あらかじめ確認しておきましょう。
チャットボットツールのタグをサイトに埋め込む
シナリオが完成したら、チャットボットをサイトに埋め込む作業にうつります。シナリオ設定が完了したら、Webサイトに設置して実際に作動させます。必要であればテスト環境などで作動確認を行い、問題がなければユーザーが利用できる環境でチャットボットの運用を開始します。
データに基づき、PDCAサイクルを回す
運用を開始したら、チャットボットがユーザーにとって理想的な形で作動しているかを確認。導入目的に応じて、チャットボット導入前と導入後でどのような変化が生まれたかを数値に基づいて分析します。効果が十分でない場合には、原因を探りさらなる改善を目指しましょう。
具体例としては、チャットボットのデータを基にユーザーが必要としているコンテンツを予測し、質問の多いページや離脱の多いページに、分かりやすく解説した動画を掲載するなど、改善のアクションをとることができます。
数値をもとにPDCAサイクルを回し、より有効にチャットボットを利用しましょう。
マーケティング支援に特化!おすすめのチャットボットツール3選
チャットボットを導入する場合、利用の目的にチャットボットツールを選択することが大切です。ここでは、コンバージョン率の向上など「マーケティング目的」でチャットボットを利用したい場合におすすめのチャットボットツール3選を紹介します。
BOTCHAN
(出典:BOTCHAN)
「BOTCHAN」は、消費者および企業のLTV最大化を、ブランド体験向上を通じて実現。コンバージョン率の向上に強みを持つチャットボットツールです。課題に合わせて以下6つのプロダクトがあり、ユーザーが離脱することなくコンバージョンに到達する仕組みを構築します。
- BOTCHAN Payment(単品リピート通販向け)
- BOTCHAN EFO Premium(進化したチャットフォームで離脱軽減)
- BOTCHAN Engagement(LINEとチャットフォーム連携)
- BOTCHAN Keeper(継続支援チャットフォーム)
- BOTCHAN AI(迅速なAIで不安を解消)
オリジナリティあるプロセスによりユーザーの途中離脱を防ぎ、コンバージョン率やLTVを最大化します。
sinclo
(出典:sinclo)
「sinclo」は、コンバージョン率・直帰率・離脱率などに課題を抱える企業に対して、ユーザーが使いやすいチャットボットツールを通じてソリューションを提供。「簡単でわかりやすい」をモットーに接客を効率化し、コンバージョン率向上に貢献しします。
コードを使わずにチャットボットツールを導入できるという強みがあり、複雑なプログラミングを避けて気軽にチャットボットツールを導入したい企業に適しています。訪問者のWebサイト上での行動を把握できるため、マーケティングデータとして活用することも可能です。
SYNALIO
(出典:SYNALIO)
「SYNALIO」は、「会話データ×行動データ」という独自アプローチによるパーソナライズされたコミュニケーションに特化したチャットボットツールです。ツールを利用した全ユーザーの行動をデータとして取得でき、分析を通して最適なコミュニケーションを提供します。行動データの他に「ツール内でやりとりされた会話」もデータとして分析できるため、より精度の高いマーケティング効果が期待できます。
行動データだけでは知りえない「ユーザーのリアルな状況」を会話データ活用によってキャッチすることができるため、より個人に最適化したマーケティングを実現します。データ分析をして精度の高いユーザーの傾向が掴めれば、ユーザーが抱えている課題に寄り添ったアプローチが可能になり、効率的にCVRを改善できます。例えば、化粧品販売のWebサイトで「乾燥肌」に関する会話が多く交わされていることがわかれば、乾燥肌用の化粧品を探しているユーザーに刺さるようなプロモーションをランディングページに設置するなどの対策を講じられます。
まとめ
チャットボットの導入は、急速なデジタルシフトに後押しされ、より一層注目を集めています。チャットボットをサイトに設置すれば、サイト訪問者を待たせることなく、個人のニーズに合わせた最適な情報提供ができます。パーソナライズされたサイト体験は、文章や写真だけで構成されたWebサイトに比べて魅力的であるため、離脱を防ぎCVR改善が期待できます。
一方、課題を解決するためには、チャットボットの利用だけでは不十分なこともあります。特に複雑な商品説明が必要なケースでは、文章だけではなく、たとえば動画などの表現方法を併用することでユーザーの離脱を防ぎ、CVRの向上につながると考えられます。
チャットボットと他のツール・表現方法の併用も検討しつつ、ユーザーが必要な情報をストレスなく入手でき、購入までたどり着きやすいWebサイトの構築を目指しましょう。
執筆者
黒谷 純子
MIL株式会社 マーケティング
大学卒業後、編集プロダクション等を経て、人材サービス企業のマーケティング職に従事。2021年3月よりMIL株式会社に入社し、現在は自社サイトやMILblogの企画・ディレクション・執筆等を担当している。
Twitter : https://twitter.com/MIL29292841