【2024年版】店舗DXの事例10選!小売・飲食・アパレル・金融他まとめ

店舗DX

店舗DXとは「店舗型のビジネスにおける、デジタルトランスフォーメーション」です。当記事では、小売、飲食、アパレル・金融業界等における店舗DX事例のご紹介とともに、店舗DXの最新トレンドやメリットについてご紹介していきます。
動画×DX入門ガイド

店舗DXとは?

店舗DXとは、店舗型ビジネスにおけるデジタルトランスフォーメーションであり、オンライン(デジタル)とオフライン(リアル店舗)を融合した、新しい顧客体験を創出する取り組みを指します。

新型コロナウイルスの感染防止策として「非接触」の接客ニーズが高まり、日本においても、店舗DXが急速に進みました。またスマホやキャッシュレス決済の普及、ECサイトとの競争激化により、店舗だけの売上では生き残れない時代へと変化したことも、店舗DXが注目される背景にあります。

店舗DXのメリット

店舗DXの実現で得られるメリットとしては、以下の3つがあります。

メリット1:顧客満足度の向上

顧客のニーズに沿ってデジタル技術を活用することにより、満足度を向上させ、購買意欲の向上、口コミ、新規顧客の獲得といった副次効果も期待できます。

メリット2:人材コストの削減

デジタル化により店舗運用の省力化や無人化が可能となり、人件費の削減や慢性的な人材不足の解消につながります。

メリット3:効率化によるサービス品質の向上

AIやITツールなどを利用して単純作業を自動化・簡略化することで業務効率化を実現。創出した時間を質の高いサービス提供に充てることができます。

2種類の店舗DXとは?

店舗DXは、大きく分けて以下の2種類があります。

①来店したお客様に対する「店舗運用」のデジタル化

:アプリ、キャッシュレス決済、セルフレジなどにより、店舗における効率化を実現します。

②来店不要な「店舗体験」のデジタル化

:オンライン接客、動画、バーチャル店舗などを通じて、店舗の疑似体験を提供します。

「店舗運用」のデジタル化事例5選

以下では来店したお客様に対する「店舗運用」のデジタル化について、5社の事例をご紹介します。

  • イオンリテール(小売)
  • スターバックス(飲食)
  • ディッシャーズ(飲食)
  • ユニクロ(アパレル)
  • ノジマ(家電)

事例:イオンリテール(小売)

AEONの店舗DX
引用:PR TIMES

イオンリテール株式会社は「イオン」や「イオンスタイル」など、全国約400店舗を展開している総合小売業です。

セルフレジ等の導入によりレジの選択肢を広げ、利便性を高めてきましたが、2020年3月より「どこでもレジ レジゴー」を展開し、“レジに並ばない”新しいお買い物スタイルとして、店舗DXを推進しています。

「レジゴー」とは、イオンが貸し出す専用のスマートフォンを使って、買い物客自身が商品のバーコードをスキャンして読み取り、そのまま専用レジで会計できるサービスです。レジに並ぶ必要がなくなり、レジの待ち時間を短縮できるため、顧客満足度の向上が期待できます。またイオンリテール側としては、レジの負担軽減や人員削減を実現し、店舗運用の効率化を進めることができます。

イオンリテールは「今後はレコメンド機能を追加することで、お買物中のお客さまへのメニュー提案やお買得商品の案内のほか、専用アプリの開発により、さらなるお買物の楽しさと利便性向上に繋げてまいります」と今後の展開を発表しています。

事例:スターバックス(飲食)

スターバックスの店舗DX
引用:スターバックス

スターバックスは、世界中で33,000店を展開するコーヒーチェーン店です。「居心地の良さを感じる店舗体験」で人気を博していますが、近年ではリアルな店舗体験に加えて、アプリやSNSなどを活用した店舗DXによる顧客体験の向上にも注力しています。

スターバックスは、コロナ禍においてニーズの高まった非接触サービスの実現や、顧客アンケートで指摘の多かった「レジでの待ち時間が長い」というペインポイントの解消を目指し、2020年12月から「Mobile Order & Pay」のサービスを開始しました。

Mobile Order & Payとは、スマホアプリから事前にオーダーと決済ができ、レジに並ぶことなく、指定の店舗で商品を受け取れるサービスです。商品の用意ができるとスマホアプリへプッシュ通知が届き、モバイルオーダー専用のカウンターで商品が受け取れるため、レジに並ぶ必要がありません。

注文データの分析によると、Mobile Order & Payを利用する顧客は、通常の顧客と比べてドリンクをカスタマイズする確率が高いことや、来店頻度の増加が明らかになっており、利便性の向上が体験価値の向上にもつながっていると分かります。

事例:ディッシャーズ(飲食)

ディッシャーズの店舗DX
引用:Bae

ディッシャーズとは、株式会社アレフが日本全国に展開するハンバーグレストラン「びっくりドンキー」の新業態の店舗です。店舗における運用のデジタル化を徹底し、出店費や運営費を抑えながらの出店を実現しています。

ディッシャーズでは、各席に置かれたタブレット端末からオーダーし、食べ終わった後は伝票のQRコードをセルフレジにかざして決済します。デジタル運用を強化したことにより、スタッフが担当するのは、調理・配膳のみとなっています。ディッシャーズ側のメリットとしては、注文ミスによるフードロスの削減、人件費削減、端末操作研修の削減、会計速度の向上などがあります。

端末上でメニューを自由にカスタマイズできることも、ディッシャーズの魅力です。自分好みにカスタマイズし、カロリーや値段の調整が可能になっています。従来の飲食店では得られない新しい店舗体験ができることで口コミやSNS上で話題になり、来店のきっかけにもつながっているようです。

事例:ファーストリテイリング(アパレル)

ユニクロの店舗DX
引用:株式会社 ファーストリテイリング

株式会社ファーストリテイリングは、ユニクロやGUなどのアパレルブランドをグローバルで展開している、アパレル企業です。柳井正会長兼社長は、2020年8月期の決算会見の中で「デジタル、ロボティクス、全自動化、という考え方を軸に、事業のプロセスを大胆に変えていく」と発表しています。この言葉の通り、ユニクロは店舗DXにおける先進的企業であり、店舗において様々なデジタル施策を展開しています。

例えば、2020年6月にオープンした「ユニクロ 原宿店」内には、人間とAIを融合した着こなし発見アプリ「StyleHint」を体験できるスペースがあり、店内の壁面を埋め尽くす240台のディスプレイには、インフルエンサーやモデルの投稿写真が並んでいます。多くの「着こなし」から、「トレンド」を体感したり、自分に合った着こなしを発見できる仕掛けとなっており、気になった商品は店内でそのまま購入することができます。

また、ファーストリテイリングでは、レジ横のスペースに商品が入ったカゴを置くだけで一括して商品登録ができる「セルフレジ」を導入しています。商品に埋め込まれたICタグから一括して情報を読み込む仕組みのため、従来のセルフレジで行っていた「1点ごとのバーコードの読み取り作業」が不要となり、顧客の手間や不満を解消することができます。店舗側としては、レジスタッフの人件費削減につながります。

事例:ノジマ(家電)

ノジマの店舗DX
引用:株式会社ノジマ

株式会社ノジマは、2019年10月より、パナソニックの「電子棚札システム」を全184店舗(※2019年10月18日時点)に導入しました。電子棚札の全店舗への導入完了は、日本初の事例であり、他社に先駆けた取り組みとなっています。

「電子棚札システム」は、価格の一括更新やセール・商品情報の提示などにより、店舗の業務効率化を実現します。POSデータと価格表示を連携させることで、店頭の棚札の価格表示を正確かつスピーディーに更新できるため、ミス軽減にもつながります。実際に、2019年10月1日の消費税率10%への増税時には、システムで一括更新を行い、店舗における切替作業時間はほぼ0時間だったとのことです。

ノジマは、従来、店舗スタッフが手で行っていた膨大な作業時間を短縮し、店頭での接客対応に時間を充て、顧客満足度を高めることを目指しています。

「店舗体験」のデジタル化事例5選

続いて、オンライン接客やアプリ、動画を活用した「店舗体験」のデジタル化について、5社の事例をご紹介します。

  • 三越伊勢丹(百貨店)
  • オルビス(化粧品)
  • 三菱地所レジデンス(不動産)
  • 新生銀行(金融)
  • リビエラ東京(結婚式場)

事例:三越伊勢丹(百貨店)

三越伊勢丹のオンライン接客事例(VR)
引用:株式会社三越伊勢丹ホールディングス

株式会社三越伊勢丹ホールディングスは、IT・店舗・人の力を活用した「新時代の百貨店」を目指し、時代の変化に合わせて店舗DXを推進し、新しい顧客体験を提供しています。

これまで、リモートショッピングアプリの提供やライブコマースなど、多様な取り組みを行っていましたが、2021年3月からは、VRを活用したスマートフォン向けアプリ 「REV WORLDS」の提供を開始しました。「REV WORLDS」のアプリ内で、チャットによる接客、ビデオ動画接客、そしてリモート決済まで、すべて完結します。

自宅にいながら、場所や時間にとらわれずに三越伊勢丹での買い物を楽しむことができるという、新しい「店舗体験」の提供です。ユーザーはアバターを操作しながら仮想伊勢丹新宿店の店内を見て回り、販売員との会話の中で、欲しいと思った商品はそのまま「専用カート」に入れることもできます。

三越伊勢丹ホールディングスは、「REV WORLDS」の導入により、デパートに馴染みがない若い世代の取り込みや、顧客の心に残る体験の提供を目指しています。

事例:オルビス(化粧品)

オルビスの店舗DX
引用:オルビス株式会社

オルビス株式会社は、化粧品やスキンケア商品を提供するビューティーブランドです。コロナ禍で生まれた「化粧品やお肌の相談をしたいけど、お店には行きにくい」という顧客ニーズに合わせて、チャットサービスや、オンラインZoomカウンセリングを展開するなど、さまざまな手法で店舗DXを推進してきました。

2021年12月からは「ORBISアプリ」の提供を開始。アプリ上でAIによるパーソナル分析を行い、パーソナルカラーや似合う眉、未来の肌状態を予測し、今必要なケアやお手入れアイテムなどを提案します。スマホで撮影した自分の顔写真から肌を分析し、5年後、10年後、20年後の肌状態をシミュレーション。眉の形、メイクカラーなど、一人ひとりに合わせてアドバイスします。

オルビスは、これまで店舗でビューティーアドバイザーが担っていた「お客様一人ひとりに合わせたパーソナルなカウンセリング」をAIで代替し、顧客のニーズを満たすと同時に、販売機会の増加につなげることに成功しています。

事例:三菱地所レジデンス(不動産)

三菱地所の店舗DX
引用:三菱地所レジデンス株式会社

従来、対面接客を基本としていた不動産業界においても、コロナを機にオンライン接客へと切り替える企業が増えており、店舗DXが加速しています。

三菱地所レジデンス株式会社では、2020年3月から、都心エリアで提供するすべての新築分譲マンション販売において、「ベルフェイス」を使用したオンライン接客の提供を開始しました。

また「VRモデルルーム」では、実際にモデルルームを内見しているかのように、バーチャルで気軽に部屋を内覧できます。また「VRモデルルーム」を体感してもらいながら、販売担当者がオンライン上で資料を使った説明を行うことで、双方向のコミュニケーションを実現しています。

事例:新生銀行(金融)

 
※下の画面をタップ・クリックするとインタラクティブ動画が始まります。ぜひ“触って”体験してみてください。

株式会社新生銀行では、新型コロナウイルス等の影響で店舗へ来店しにくい顧客に対して、インターネットチャネルでのサービス提供を拡充するため2021年よりインタラクティブ動画マーケティングMIL(触れる動画)を導入しました。

インタラクティブ動画はWebサイト上に設置。インタラクティブ動画はWebサイト上に設置。従来、長文のテキストで説明していた内容を動画化しました。顧客が自身の選択(タップ)から診断形式で、運用意向に近い金融商品を選ぶことができる内容になっています。

動画内では店舗の営業スタッフが実際の接客と同じテンポで説明。対面接客で資料を見せながら視覚的に説明している部分には、動画ではグラフとアニメーションで分かりやすく表現する工夫を加えたり、右下に表示される「ポップアップボタン」をタップするとより詳細な情報が表示されたりと、インタラクティブ動画ならではの機能を使って、顧客の理解を促進しています。

オンラインでのビデオ相談や電話相談とは違い、「インタラクティブ動画」ならオンラインで商品の説明をする営業スタッフの役割を置き換えることができる点が大きなメリットです。導入後、支店のない県の顧客からの商品申込等があるなど、従来のアプローチとは違う、新しい顧客層との出会いが生まれています。

事例:リビエラ東京(結婚式場)

 
※下の画面をタップ・クリックするとインタラクティブ動画が始まります。ぜひ“触って”体験してみてください。

結婚式場を運営する株式会社リビエラでは、コロナ禍における店舗DXの手法として、インタラクティブ動画(触れる動画)を活用しています。

動画には、実際のウェディングプランナーが登場し、結婚式場内の各施設を説明していきます。左上に表示される画面をタップするとプランナーから会場の画面に切り替わったり、ハートマークの点滅される箇所をタップすると詳細情報が表示されたりと、ユーザー自身が気になる情報をすぐに取得できるようなつくりになっています。

動画内で料金プランの紹介やフェア予約、問い合わせまで完結できるようなっており、ユーザーは非対面の見学においても、対面の見学会と同様に、知りたい情報を簡単に得ることができます。

従来、ウェディングプランナーが対応していた案内業務を動画が担うことで、業務効率化や人件費の削減につながります。またインタラクティブ動画では「動画全体を通した総タッチ数」や「どの場所が何回タッチされたか」など詳細データが取得できるため、ユーザーの興味関心をマーケティングに活かすこともできます。

店舗DXの最新トレンド「インタラクティブ動画」とは?

インタラクティブ動画
「インタラクティブ動画」とは、従来、視聴のみで終わっていた動画の中に「視聴者が触れる仕掛けを組み込んだ動画」のことです。

インタラクティブ動画は、接触回数や視聴時間など視聴者のエンゲージメントを高め、コンバージョンにつながりやすいという特徴があり、海外では既に数多くの企業が活用しています。日本でも「対面チャネルのDX化」「LPやSNS広告などの成果向上」「動画コマース」「採用」などの目的で、様々な業界で導入が進んでいます。

関連記事:インタラクティブ動画とは?触れる動画の事例、メリット、作り方を完全解説!

まとめ

店舗DXは、企業側にメリットがあるだけでなく、顧客満足度の向上にもつながります。アフターコロナの時代においても、デジタルとリアルの融合が、ビジネス戦略の肝になってくるかと思います。目的に合わせた店舗DXの手法をぜひご検討ください。
動画×DX入門ガイド

執筆者
桑田 将臣

MIL株式会社 セールスグループ マネージャー

WEB系ベンチャー企業にて新規事業の立ち上げ・セールスなどを経験後、PR会社にてデジタルプロモーションの企画提案を担当。2019年3月よりMIL株式会社に入社し、現在はセールスグループの各部門を統括している。

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