次世代の動画マーケティングとして、各業界での活用が増えている「インタラクティブ動画」。視聴者に画面をタップさせる、ストーリーを分岐させるなど、従来の動画とは異なる機能があり、効果的なインタラクティブ動画を制作するにはいくつかのポイントがあります。
今回はMIL株式会社 クリエイティブグループ プロデューサーの末積 典和が、独自のノウハウを交えながら、インタラクティブ動画の作り方について詳しく解説します。
インタラクティブ動画の導入を検討している企業のご担当者様や、
これからインタラクティブ動画の制作を始めたいと考えている制作会社の皆さま、ぜひご覧ください。
目次
インタラクティブ動画の特徴
インタラクティブ動画最大の特徴は「視聴者と双方向のコミュニケーションを行える」点です。通常の動画であれば「一方的に視聴者に動画を視聴させる」形式ですが、インタラクティブ動画では視聴者が画面をタップして、ストーリーを選択したりクイズに回答をしたりと、自身の関心に合った情報を能動的に取得することができます。
そのため、インタラクティブ動画の制作者には「視聴者にタップボタンを分かりやすく認識させ、より自然にタップしてもらうにはどうしたらいいか?」というUIUXの視点や、Webデザインを踏まえた制作が求められます。視聴体験をデザインするという観点は、通常の動画制作にはない新しい考え方であり、重要なポイントとなります。
インタラクティブ動画制作の流れ
インタラクティブ動画の平均的な制作期間は約2ヶ月で、下図のようなステップに分かれています。
私たちMILではプラットフォームの提供にとどまらず、企画・設計段階から、制作、運用に至るまで、ご要望に応じて必要なサポートをご提供しています。
以下では、各ステップの詳細と注意点について、詳しく解説していきます。
【STEP1】与件整理
まず、動画の目的・KPIやターゲット、スケジュール、予算など、詳細も含めてしっかりと整理しましょう。以下のようなチェックリストを元に情報を整理しておくと、制作全体がスムーズに進みます。漠然としたイメージではなく、言語化してドキュメントに残し、関係者で共有することが大切です。
【STEP2】構成
動画は仕込みが8割と言われており、「全体の設計」は動画の成果を左右する最も大切なパートになります。ここで重要なのは、インタラクティブ機能(ポップアップ、ストーリー分岐等)を理解し、その機能を最大に活かした企画を考えることです。
MILのサービスを導入いただく場合、ご要望に応じて、私たちクリエイティブグループが構成部分を担当し、その後の制作は、制作パートナーである「MIL CREATE PARTNERS」と連携させていただきます。
【STEP3】台本・絵コンテ・遷移図
構成を元に、制作担当者が台本・絵コンテ・遷移図へ落とし込みます。
台本
通常の動画との大きな違いは、ナレーションとポップアップの役割分担が必要であることです。動画の長さも踏まえつつ、全員に必ず伝えたいことはナレーションに、希望者のみの閲覧でよい情報はポップアップに入れる、など工夫しましょう。
絵コンテ
可能であれば、絵コンテの段階でタップボタンのレイアウトを明確にしておくことをおすすめします。あらかじめレイアウトが決まっていれば、タップ位置を指差すカットを撮ったり、「左上のボタンをタップしてみてください」など明確な位置をナレーションで示せたりと、タップを促進することができます。
遷移図
インタラクティブ動画では、複数の動画をつなぎ合わせて1本の動画にするため「遷移図」が必要になります。特にストーリーを視聴者が選択する「ストーリー動画」の場合は、遷移図はマストです。
以下は、三井住友カード様のインタラクティブ動画の「遷移図」です。12本の動画をつなぎ合わせてストーリーを描き、最終的に3種類のカードへと導いていることが、ご理解いただけるかと思います。
【STEP4】撮影
撮影時にも、インタラクティブ動画独自の注意点があります。機能別にポイントをお伝えしていきます。
ストーリー動画の撮影
インタラクティブ動画のストーリー動画では「選択肢の場面に対応するカット」の撮影が必要になります。撮影しておかないと、編集時に素材が足りなくなるので注意が必要です。
スイッチング機能を使う動画の撮影
スイッチング機能を使うと、二つの動画をタップにより切り替えられ、二面性を活用した動画を制作することができます。
二つの世界をどうリンクさせるかがポイントになりますが、同じポジション(同ポジ)やシンメトリーなど構図を工夫して撮影することで、二画面を合わせた時に、一つのストーリーを作り出すことができます。
以下のフュールメディア様の例では、スケーターとスノーボーダーの2つの世界が、タップを機に交錯していきます。
ポップアップ機能を使う動画の撮影
ポップアップ機能を使えば、動画上に画像やテキストを表示させることができます。MILでは「軌跡タグ(動いているものに対してタップできる)」という機能もあり、この機能を活かすためには、後でスローに編集することを意識して撮影する必要があります。
たとえば、アパレルの動画撮影であれば、通常は正面、横、後ろなど、色々な角度から服を魅力的に見せることが重要であるため、すばやく角度を切り替えて撮影しますが、インタラクティブ動画においてはタップしてもらうことが重要なので、スローのほうが適しています。
以下のインセクトコレクション様の事例でも、スローに編集することを意識して撮影しました。
【STEP5】編集
編集においては、ナレーション・音楽・テロップ・画像など、通常の動画と同様の作業となります。
唯一異なる点はレイアウトです。中でも「タップボタン」のデザインが最も重要です。
レイアウト
ユーザーが自然にタップできるインターフェースかどうか?つまりインタラクティブ動画に合った「UIデザイン」が、動画の成果を左右するポイントとなります。ユーザーの操作性を考えながら、タップボタンの色・形・大きさ・配置を検討しましょう。
MILでは、累計インタラクティブ動画本数6,000本以上のナレッジを体系化した「インタラクティブ動画デザインのためのガイドライン」を作り、広く一般に公開しています。フォントや配色、手法など、具体的なノウハウを紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
【STEP6】インタラクティブ編集
遷移図にある動画素材がすべて揃ったら、いよいよ、1本のインタラクティブ動画につなげるための編集作業に入ります。
MILの管理画面はPowerPointを操作するような感覚で、誰でも簡単に操作できる仕様になっています。素材さえ揃っていれば、絵コンテを元にインタラクティブ化するだけなので、編集作業自体はスムーズに進められます。
管理画面や操作方法について詳しくは、以下をご確認ください(インタラクティブ動画になっています)。
【STEP7】ユーザーテスト/試写
インタラクティブ動画ではWebサイトと同様に、リンクのチェックが必要です。
タップしたら次のストーリーに進むか、ポップアップが出るか、リンク切れが起きていないか、ポップアップの情報は合っているかなど、埋め込み用のタグが正しく実装されているかなど、入念に確認しましょう。
通常の動画には「ユーザーテスト」という概念はありませんが、インタラクティブ動画では、制作に関わっていない第三者に協力してもらい、ユーザーテストを行うことを推奨します。意図通りに動画が視聴されるのかを公開前に確認できれば、配信時のエラーを防ぐことができます。
【STEP8】納品
関係者への試写を行い、最終確認を経て、納品となります。
【STEP9】効果測定・分析・改善
従来の動画は「納品したら終わり」でしたが、インタラクティブ動画では納品を出発地点として、より良い視聴体験を追求し、改善し続けることができます。「動画を運用する」という視点が、通常の動画と大きく異なる点です。
MILでは、動画レポートから視聴動向を50以上の項目で分析し、管理画面から素早く編集・改善することができます。ご要望に応じて、カスタマーサクセスチームが効果測定・分析・運用のサポートを行わせていただくプランもございますので、ぜひご相談ください。
まとめ
インタラクティブ動画の作り方について、通常動画との違いを交えながらご説明しましたが、いかがでしたでしょうか?
インタラクティブ動画の導入を検討している企業ご担当者様
MILでは、「クリエイティブグループ」と「UXデザインチーム」がタッグを組み、最適なクリエイティブを提供いたします。社内に制作リソースがない場合にも、企画・構成から制作、運用に至るまで、安心してお任せください。
執筆者
末積 典和
MIL株式会社 クリエイティブグループ プロデューサー
1979年生まれ、福岡県出身。1児の父、趣味はキャンプ・アクアリウム・ゴルフ。大学卒業後、テレビ番組制作会社でドキュメンタリー番組を中心に現場経験を積み、その後、WEBコンサルティング会社で動画コンテンツの企画立案、ディレクションに従事。2014年に独立、株式会社アドスペックを設立。映像制作プロダクションとして、WEB動画コンテンツ制作を中心に事業を展開。インタラクティブ動画編集プラットフォーム「MIL」を用いた動画事業に注力し、業種・業態に適したインタラクティブ動画の企画立案からディレクション、制作業務を行う。2021年3月よりMILに入社。プロデュサーとしてクリエイティブを統括している。