動画マーケティングのKPIとは?設定の手順や効果測定ツールをご紹介!

動画マーケティングKPI

近年、動画広告の市場規模は拡大し続けており、2022年には5497億円、2025年には1兆465億円に達すると予想されています。動画広告以外にも、WebサイトやSNSでの活用など、企業による動画マーケティングへの取り組みは珍しいものではなくなりました。一方で、多くの企業が自社の動画マーケティングの費用対効果について、明確化できていないという現状もあります。

動画マーケティングを売上げ拡大につなげるためには、適切なKPIの設定が不可欠です。当記事では、動画マーケティングにおける各種KPIの概要を解説した上で、分析に必要なツールを紹介します。「自社の動画マーケティング施策で効果が出ているかわからない……」「これから取り組む動画施策を成功につなげたい……」とお考えの企業様は、ぜひお役立てください。
動画マーケティング入門ガイド
  

動画マーケティングとは?


動画マーケティングとは、実写動画やアニメーションを自社製品・サービスのプロモーションなどに活用する施策を指します。ビデオ広告やライブビデオ、スポンサードビデオ、テレビなども動画マーケティングの一種です。動画は、視聴者の五感複数に訴えかけることが可能。「読み」だけのテキストや「聞くだけ」の音声よりも短時間で記憶に残りやすいといわれています。

スマートフォンや5Gの普及により、動画を視聴する視聴者数は大幅に増えました。それに加え、新型コロナウイルスの感染拡大に端を発する「巣篭もり需要」も要因となり、動画視聴者数はさらに増加。スマートフォンの急速な普及に加え、2020年より5G(第5世代移動通信システム)が一般ユーザーにも普及し、より高解像度な動画を各自のデバイスで気軽に視聴できる環境が整いました。

消費行動のデジタルシフトに伴い、企業もマス広告からデジタル広告へと出稿先をシフトし、2020年以降、動画広告の市場規模は拡大の一途を辿っています。
サイバーエージェント「動画広告市場推計・予測」

(引用:株式会社サイバーエージェント「動画広告市場推計・予測 (広告商品別)2020年-2025年」

株式会社サイバーエージェントの「国内動画広告の市場動向調査」によると、2021年の動画広告市場の規模は昨年比で約1251億円も増加しており、成長傾向が続くと予測されています。

デジタル上で情報収集から検討・購買といった一連の顧客体験が行われる中、コンパクトな画面上で、短時間で分かりやすく情報を伝える手段として、「動画マーケティング」が注目されているのです。今後も、各社による取り組みが活発化していくでしょう。

関連記事:【2022年】動画マーケティングとは?メリット・手法・事例から最新トレンドまで徹底解説!

動画マーケティングに「KPI」が必要な理由

動画マーケティングは、SNSやYouTube上の動画広告による「認知」獲得から、Webサイトへの動画埋め込みによる「コンバージョン」の促進、マニュアル動画による購入後の「満足度向上」など、あらゆるマーケティングファネルにおいて効果を発揮。特に専門用語が多く複雑な商材や、一人ひとりに適した内容が異なるサービスなど、文章や静止画では説明の難しい分野に適しています。

動画マーケティングに取り組む企業が増加している一方で、正しく効果検証ができている企業は多くありません。参考として、株式会社CTが2022年1月に発表した調査データをみてみましょう。
CT「動画マーケティングに関する実態調査」

(引用:株式会社CT「動画マーケティングに関する実態調査」)

上記のとおり、調査対象の企業54.5%が「動画を活用したマーケティングの費用対効果が曖昧」と答えました。つまり、多くの企業が「効果が出ているかどうかわからない施策」に予算を投下してしている現状が伺えます。

費用対効果を曖昧にせず、施策の効果を正しく測定するためには、「KPI」の設計が欠かせません。KPI(Key Performance Indicator)とは重要業績評価指標を指す用語で、動画マーケティングにおける最終目標は「KGI(Key Goal Indicator)」で定義されます。つまり、KPIは大きなゴールに至るまでの中間目標。一般的な小売事業に置き換えて説明すると、KGIは「年間売上」で、KPIは「月間売上」のようなもの。

施策開始後に正しく効果測定ができるよう、予めKPIを設計しておく必要があります。KPIを設計した後、定量データを元に動画の効果を分析する……といったように、データに基づき課題を明確化することで、PDCAサイクルをスピーディーに回せます。
動画マーケティングPDCA
動画マーケティングに取り組む際は、動画公開後の効果測定や運用を含めて、最初に検討しておきましょう。KPIの正しい設計こそが、動画マーケティングの効果を左右すると言えます。

動画マーケティングの主要KPI

それでは、動画マーケティングのKPIには、どのようなものがあるのでしょうか?

動画マーケティングを行う目的は各社さまざま。その目的によって、設定するべきKPIも異なりますが、一般的に動画の効果検証に用いられる指標は以下のとおりです。

  • 視聴回数(再生回数)
  • インプレッション数
  • クリック率
  • ユニークユーザー数
  • 再生完了率
  • 総再生時間
  • 視聴維持率
  • コンバージョン率

次項より、それぞれについて解説します。

視聴回数(再生回数)

動画が視聴された回数を表す数値で、動画マーケティング全体の母数となる重要指標です。「視聴回数が少ない = そもそもクリックされていない」という証ですので、プロモーション方法やサムネイル、動画タイトルなどを見直しましょう。加えて、SNSや外部サイトへのリンク増加も有効です。

インプレッション数

動画のサムネイルが各配信プラットフォーム上に表示された回数です。インプレッションとしてカウントされるためには「1.サムネイルの50%以上が表示される」「2.サムネイルが1秒以上表示される」の両方を満たさなければなりません。インプレッションが低い場合には、再生回数と同じタイトルやサムネイルの設定に加え、「動画の平均視聴時間・視聴回数」も見直す必要があります。

クリック率

「視聴回数 ÷ インプレッション数」を示す数値。たとえば「インプレッション数 = 1万」「クリック数 = 100回」の場合、クリック率は10%です。目指すべきクリック率の目安については、掲載媒体の性質にもよりますが、YouTubeでは、YouTube の全チャンネルと全動画の半数ではクリック率が 2〜10%の範囲公表しています。クリック率が低い場合は、タイトルやサムネイルを改善し、視聴回数の増加を図りましょう。
youtubeクリック率

ユニークユーザー数

一定時間、動画を視聴した視聴者の総数を示す指標です。計測するのはあくまで「視聴者数」ですので、1人が10回動画を視聴したとしても「ユニークユーザー数 = 1人」としかカウントされません。ユニークユーザーが伸び悩んでいる場合は動画の「入口」でなく、「中身」となるコンテンツ内容の改善が必要。自社がターゲットにしている顧客属性に刺さる動画を作成できているかどうか、見直さなければなりません。

再生完了率

再生数のうち「動画が最後まで視聴された割合」を表す数値。動画の途中で離脱が多く発生していた場合、該当箇所にどのような問題があるのかを分析し、クリエイティブを改善する必要があります。それに加え、動画の「最適な長さ」自体についても、視聴者の離脱率などから分析し、最適化していきましょう。

総再生時間

ユーザーが動画を再生した合計時間です。総再生時間が長いということは、視聴者にとって有益で、満足度の高い動画である証。YouTubeでは総再生時間が一定数以上になるとチャンネルのランクが上昇し、一般視聴者のおすすめや関連動画に表示されやすくなります。

総再生時間が短い場合は、各動画のタイトルやサムネイル、タグ、終了画面の見直しに加え、同カテゴリーの動画群での再生リストの作成などを検討しましょう。

視聴維持率

インプレッション数のうち「動画の終了まで」あるいは「30秒以上」再生された割合を指します。
youtube視聴維持率
視聴維持率が低下するパートの原因を分析し、改善にいかしましょう。たとえば、動画冒頭の離脱が多い場合は「サムネイルと動画内容の不一致」「冒頭30秒の魅力のなさ」などが考えられます。動画中盤以降なら「不適切な音・BGMのバランス」「タイムスタンプが設定されていない」といったものが考えられるでしょう。データから、離脱の背景や視聴者のニーズを読み取り、改善につなげることが大切です。

コンバージョン率

動画視聴者が購入・問合せなどの行動を起こした割合。コンバージョン率が低い場合の原因として、一般的には、視聴者インサイトと訴求内容の不一致が考えられます。動画広告から遷移した先のLPにおけるコンバージョン率をKPIとする場合、GoogleAnalyticsなどサイト上の行動を測定できるツールとの連携が必要です。

KPIによる動画の改善サイクル

「データを取得しただけ」では変化は生まれないため、分析を経て、施策の改善につなげなければなりません。動画マーケティングにおけるPDCAサイクルは、以下の4ステップで実施します。

  • Step 1:動画マーケティングの目的を明確にする
  • Step 2:目的に沿ったKPIを決める
  • Step 3:動画配信後、ツールで効果測定をする
  • Step 4:データ分析を元に、動画を運用しながら改善し続ける

それぞれについて詳しく見ていきましょう。
KPIによる動画の改善サイクル

Step 1:動画マーケティングの目的を明確にする

ただ何となく動画を活用する、というのでは動画マーケティングは成功しません。まずは自社の解決したい課題を明確にし、「認知」「検討」「行動」のどのマーケティングファネルにおいて、動画で何を達成したいのか?目的(= KGI)を定義しましょう。

Step 2:目的に沿ったKPIを決める

動画マーケティング施策の目的を可視化したら、次はそこに至るまでの目標設定を行います。たとえば、コンバージョン獲得を目的にしてKPIを設計するなら、前述した指標のうち「クリック率(数)」「コンバージョン率(数)」を設定するといった要領です。このKPIを元に、適切な動画媒体や表現方法など、具体的な施策を企画・検討し、制作段階へと進みます。

Step 3:動画配信後、ツールで効果測定をする

動画の配信後は、各種ツールやサービスを使って施策の効果検証を行います。サイトからのコンバージョン率をKPIとするなら、動画視聴データとGoogleAnalyticsを連携させておく等の準備が必要。適切なツールを使ってKPIを正しく測定し、施策改善に必要なデータを取得しましょう。

Step 4:データ分析を元に、動画を運用しながら改善し続ける

収集したKPIデータは分析したうえで、「検証→改善」のPDCAサイクルを回すことが重要です。自社の施策の改善点を可視化するからこそ、より認知拡大やコンバージョン獲得につながる動画の施策が実現できます。分析を元に、動画クリエイティブを改善できる体制も構築しておきましょう。

以上の4ステップにおいて、Step 1は社内での検討が不可欠ですが、Step 2以降のKPI設計やデータ取得の設定、分析、動画改善・運用には専門的な知識が求められるのも事実。動画マーケティングに対する自社のリソースやナレッジ(知識、情報)が不足しているケースでは、動画マーケティングの専門企業への依頼も検討しましょう。その場合は、ツールやプラットフォームだけを提供する会社でなく、企画やKPI設計、データに基づく改善提案など、伴走型のサービスを提供している会社を選ぶと安心でしょう。

動画マーケティングのKPI測定に役立つツール4選

以下より、動画マーケティングのKPI測定で役立つツールについて、以下の4種類を紹介します。

  • YouTubeアナリティクス
  • Wistia(ウィスティア)
  • PlayAds(プレイアズ)
  • MIL(ミル)

「ツールでどのようなデータを測定できるのか」について把握し、KPI設計に活かしましょう。

YouTubeアナリティクス|YouTubeチャンネル運営に必須の無料ツール

youtubeアナリティクス
(引用:YouTubegヘルプ
  
YouTubeアナリティクス」は、YouTubeによって提供されている無料のアナリティクスツールです。YouTube上に投稿した動画のアクセス解析が可能で、以下のようなKPIデータを収集できます。

  • リーチ度合い:視聴回数、インプレッション数、ユニークユーザー数、クリック率など
  • エンゲージメント:総再生時間、人気の動画、平均視聴時間など
  • 視聴者情報:視聴者の年齢や性別、地域、視聴時間帯、再生した他のチャンネル・動画 など

「どんな人が視聴しているのか」「どんな内容が人気なのか」「どこで離脱しているか」などを、動画毎に分析して、成功パターンを確認し、次の動画企画やチャンネルの成長につなげることができます。これからYouTubeで自社チャンネルを開設しようとしているなら必須のツール。各指標の見方については、以下で詳しくご紹介していますので、参考にしてみてください。

関連記事:【2022年版】YouTubeアナリティクスの見方&5つの注目指標をわかりやすく解説!

Wistia(ウィスティア)|アメリカ発の動画配信&分析プラットフォーム

Wistia
(引用:Wistia

Wistia」は、米企業により開発された企業向けの動画配信プラットフォームです。企業向けの動画配信プラットフォームとは、YouTubeのような「動画コンテンツの配信・管理」をプラットフォーム上で行える仕組み。有料のプラットフォームは分析機能が豊富に実装されており、大多数ではなく「特定の視聴者に向けた限定的な配信」「サイトやメールへの埋め込み」も可能です。

そのなかでも、マーケティングに特化した機能を多数実装しているWistiaは、前述のYouTubeアナリティクス以上に細かくKPIを分析できます。たとえば「クリック率の高いサムネイルの検証ができるA/Bテスト」「ヒートマップ」などです。

Wistiaは「より詳細なKPIの測定や分析がしたい」「動画内にさまざまなコンテンツを埋め込みたい」といったケースで選択肢に挙がり、外部ツールとの連携も可能。YouTubeアナリティクスでは計測しきれないユーザーデータの分析や、動画の好きな箇所へのCTA設置ができますので、成約率向上のために、ユーザーに合わせた細かなナーチャリング(顧客育成)が求められる高単価な商材や無形商材を扱っている企業向けといえます。

PlayAds(プレイアズ)|1秒単位でCMの精度と制作スピードを向上できる!

PlayAds
(引用:PlayAds

PlayAds」はGMOリサーチ株式会社が提供する動画マーケティング用のツール。リサーチパネル「JAPAN Cloud Panel」と連携しており、ユーザーの心理状態を数値として可視化できる「感情取得技術」が実装されているのが特徴です。

ビデオコンテ(動画案)段階での「A/Bテスト」も可能で、可視化が難しい動画視聴者の「消費者行動モデル」を測定できます。動画公開前にターゲットとなる視聴者の反応を予想できるため、データから改善のヒントを得て、動画の精度と制作スピードを向上させることが可能。バリエーションの異なる動画を短期間で作成・リアクションの想定を行えれば、短期間の検証・改善のサイクルで、よりコンバージョン獲得に貢献する動画を配信できます。

単に動画を配信するだけでなく「購買や問い合わせの行動を確実に促し、費用対効果を高めたい」と考える場合に有効。しかし、詳細なKPI測定が可能な分、「データの扱い方」に関してはより専門的な知識が必要でしょう。

MIL(ミル)|動画の最先端!インタラクティブ動画配信&分析プラットフォーム

mil

MIL」は、インタラクティブ動画の配信・分析ができるプラットフォームであり、ツール提供だけでなく、企画から制作・KPI設計・データ分析・運用後のクリエイティブ改善まで、専門家による伴走支援を含んだサービスです。

インタラクティブ動画とは、触れる動画のこと。視聴者がタップやクリックなどのアクションを行えば、選択肢に応じた展開にストーリーが遷移していきます。自らが選んだコンテンツが表示されるため、離脱を防ぎ、高い興味関心を維持したまま、購買行動へと促すことができます。
インタラクティブ動画の特徴
また動画内から、外部サイトへ直接遷移できる点も特徴。例えば、アパレル企業が洋服を紹介する動画であれば、視聴者が動画内から気になるアイテムをクリックして詳細を確認後、そのままECサイトへと遷移させることが可能です。動画上でしっかりとアイテムを理解し、納得した上でECサイトへと遷移するため、コンバージョン向上に効果をもたらします。

MILでは、そんなインタラクティブ動画上のアクションデータを基に、50以上の視聴動態データ分析が可能。「視聴者が興味を持っている箇所」や「離脱しやすいポイント」を可視化でき、クリエイティブ改善につなげることができます。
MILのインタラクティブ動画のデータ分析
また動画のアクションから得た視聴者の「インサイトデータ(真の興味関心)」をWebサイトの改善や他のマーケティング活動に役立てられる点も、他の動画とは違う活用のメリットです。

まとめ

デジタルが消費者との主なコミュニケーションの場となりつつある現在、動画マーケティングは、WebサイトやSNSにおいて、認知や売上げ拡大につながる効果的な施策として注目を集めています。
動画をうまく活用することで、成約に至るまでに、多くの説明や専門用語の理解が求められるような複雑な商材であっても、効果的なアプローチが期待できます。

しかし、動画マーケティングで正しく効果を出すためには、適切なKPIの設定が不可欠。本稿でも紹介したとおり、動画マーケティングで測定するべき指標は多々あります。動画マーケティングで解決したい課題や目的を明確化した上で適切なKPIを設定し、自社に合ったツールを使いながら、PDCAサイクルを回していきましょう。
動画マーケティング入門ガイド

執筆者
黒谷 純子

MIL株式会社 マーケティング

大学卒業後、編集プロダクション等を経て、人材サービス企業のマーケティング職に従事。2021年3月よりMIL株式会社に入社し、現在は自社サイトやMILblogの企画・ディレクション・執筆等を担当している。
Twitter : https://twitter.com/MIL29292841

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