当記事では、パーソナライズド動画とは「どのような特徴があるのか?」「どんな効果が期待できるのか?」などを知りたい方に向けて、解説をしていきます。
パーソナライズド動画は、視聴する個人毎に最適化された動画です。カスタマーサービスの運用コスト削減、営業支援、ファンの獲得などの効果が期待できます。
パーソナライズド動画を導入しているのは、東京海上日動火災など保険会社を中心とした様々なジャンルの企業です。目的・ターゲットに合わせた手法を選択し、個人情報の取扱いに注意しながら制作・配信体制を構築する必要があります。
以下では、パーソナライズド動画の仕組みや効果、パーソナライズド動画を導入し活用している企業の事例、パーソナライズド動画を活用するための注意点、パーソナライズド動画のおすすめツールについて分かりやすくご紹介します。
目次
「パーソナライズド動画」の仕組み&効果
まず、パーソナライズド動画とは何か、どのような仕組みの動画なのか、どのような効果が期待できるのかを解説します。
パーソナライズド動画とは?
パーソナライズド動画とは、動画の内容を視聴者一人ひとりに対して自動で最適化できる画期的なソリューションです。一般的な動画では、誰が視聴しても同じ内容が再生されますが、パーソナライズド動画では、視聴者の属性や行動履歴、購買行動に合わせた内容が表示されます。
パーソナライズド動画の視聴者は、自分だけのために作られた動画だと感じるため、動画を最後まで視聴する可能性が高いです。従来の動画より成果につながりやすい動画といえるでしょう。
パーソナライズド動画の仕組み
パーソナライズド動画が個人に最適化されるのは、ベースとなる動画の上に、データベースなどから抽出した外部データから自動生成される動画を表示させる仕組みによるものです。ベース動画と外部データから自動生成された動画の「二層構造」にすることで、視聴者に自分のための動画であると感じさせることを実現しています。
また、動画内に仕掛けを組み込むことで、視聴者の選択に合わせて表示する動画を分岐させるインタラクティブな操作も可能です。
パーソナライズド動画の効果
パーソナライズド動画には、以下3つの効果があります。
- カスタマーサービスの運用コスト削減
- 営業支援
- ファンの獲得
それぞれの効果について解説します。
カスタマーサービスの運用コスト削減
パーソナライズド動画では、カスタマーサービスの運用コストを削減する効果が期待できます。顧客がパーソナライズド動画を視聴することで、商品説明やサポートに関する質問などの対応をする必要がなくなり、カスタマーサービスの負担が軽減されるからです。
営業支援
パーソナライズド動画には、商品やサービスの営業を支援する効果があります。パーソナライズド動画は、顧客に商品やサービスを短時間で効率よく理解してもらうことができ、特徴やメリットをアピールできるからです。
パーソナライズド動画の中で顧客に合わせた個別の情報を提示したり、ユーザーが選択した内容を表示できるため、直接対面することなく、最適な商品やサービスの提案が可能になります。
ファンの獲得
パーソナライズド動画には、ファンを獲得する効果があります。パーソナライズド動画を視聴した顧客は「自分のためだけに作られた動画」という印象を持ち、親近感を抱きやすいです。パーソナライズド動画を視聴してもらうことによりエンゲージメントを高め、リピーターやファンの獲得が可能になります。
パーソナライズド動画の活用事例6選
以下では保険会社を中心に、6社の活用事例をご紹介していきます。
【保険】チューリッヒ保険会社(自動車の事故対応の案内)
引用:ZurichJapan YouTubeチャンネル
チューリッヒ保険会社のパーソナライズド動画は、自動車事故の対応案内をすることを目的とした動画です。
チューリッヒ保険会社が、事故に遭った顧客への電話連絡に併せて、パーソナライズド動画のリンクが記入されたメールを送信。視聴者に対して、個人名での呼びかけ、事故状況や保険内容に合わせた手続き方法の案内、車の修理に関する情報提供などを行うことで、自己解決に向けた一連の流れが理解できる仕組みになっています。
動画は繰り返し視聴できるので、何度も内容を確認することが可能です。顧客に動画を視聴してもらうことで、カスタマーサービスの負担が軽減できる仕組みになっています。
【保険】マニュライフ生命保険(ご契約内容を説明)
引用:ManulifeJapan YouTubeチャンネル
マニュライフ生命保険株式会社のパーソナライズド動画は、個別の契約内容を分かりやすく伝えることを目的とした動画です。年に一度配信する「契約内容のお知らせメール」の中に、個々の顧客毎の契約内容を反映した動画を入れて、分かりやすく説明しています。
このパーソナライズド動画では、契約内容を表や図で分かりやすく説明し、それぞれの顧客に最適化した具体例を提示する仕組みになっています。視覚や聴覚に訴えかけることで、より分かりやすく、興味を持ってもらうことが狙いの動画です。
【保険】東京海上日動火災保険(防災情報、保険内容)
引用:@Press「東京海上日動 台風・集中豪雨への備えを パーソナライズド動画で配信」
東京海上日動火災保険株式会社のパーソナライズド動画は、保険の契約者に対して台風や集中豪雨などの防災情報や契約している保険の補償内容、被災時の連絡方法を配信することを目的とした動画です。
動画内の対話機能により契約内容とニーズに合わせたサービスを提供する仕組みになっています。動画を視聴してもらうことで、契約更新の案内や事故の状況に合わせたサポートを充実させ、契約者と代理店の接点を増やすことが狙いです。
【保険】イーデザイン損害保険(保険金請求の確認)
イーデザイン損害保険のパーソナライズド動画は、事故に遭った契約者に対して、保険金支払いの内容や翌年以降の保険料への影響、事故対応の説明をすることが目的の動画です。
契約データを利用して、保険金の支払額の表示や翌年以降の保険料の変化を動画で表示する仕組みになっています。
動画を視聴してもらい保険金の支払いなどの疑問を解決することで、カスタマーサービスへの負担を軽減、保険金支払い手続きにかかる手間と時間を短縮することが狙いです。
【不動産】大和ハウス工業(住宅展示場への来場促進)
大和ハウス工業のパーソナライズド動画は、住宅展示場への来場を促進することを目的とした動画です。
サイトの会員に対して、動画を添付したメールマガジンを配信しています。メールマガジン登録時のデータを利用して、動画内のテキストやナレーションを自動的に変化させる仕組みです。例えば、動画内の表札に顧客の名前が入っているなどのサプライズがあり、住宅購入への期待感を高める工夫が散りばめられています。
動画の再生完了率を高め、実際に展示場へ足を運んでもらうことが狙いの動画になっています。
【メーカー】Cadbury Glow(顧客拡大)
引用:Idomoo YouTubeチャンネル
イギリスの菓子・飲料メーカーCadbury Glowのパーソナライズド動画は、顧客拡大を目的とした動画です。
チョコレートと動画のリンクが書かれたQRコードをプレゼントするキャンペーンを実施。
視聴者のFacebookページから写真を引用し動画内に組み込むことで、視聴者の写真が入った動画を自動的に表示する仕組みです。
「チョコレートは想いがこもった贈り物である」という概念を訴求し、CTR(クリック率)を高め、コンバージョンにつなげることが狙いの動画をなっています。
パーソナライズド動画活用の注意点
パーソナライズド動画を活用する際は、以下の3点に注意しましょう。
- 目的・ターゲットに合わせた手法の選択
- 個人情報の取扱い
- 制作・配信体制の構築
それぞれについて説明していきます。
目的・ターゲットに合わせた手法の選択
パーソナライズド動画を活用するために重要なことは、顧客に最適なコンテンツを提供するということです。
名前や性別などの個人情報をそのまま差し替えるのではなく、顧客の名前や写真などを取り込んで顧客毎のオリジナル動画を作成したり、年齢や性別、購入履歴などでアレンジした動画を作成したりします。
目的とターゲットに合わせて手法やコンテンツを検討しましょう。
個人情報の取扱い
パーソナライズド動画では、個人情報の取り扱いに注意が必要です。パーソナライズド動画の制作を外注する場合には、個人情報が外部へ流出するリスクがあります。 社内で顧客情報の管理体制を整え、セキュリティ対策を講じた上で厳正にデータを扱うようにしましょう。また情報に間違いがあった場合、満足度の低下や不信感にもつながります。データ確認・管理の工程やルールも整える必要があるでしょう。
制作・配信体制の構築
パーソナライズド動画の制作から配信、運用まですべてを外注した場合、膨大な費用が必要になります。自社で制作と配信を行う、外注は動画の制作のみにするなど、費用対効果や人員対策を含めて運用体制を検討しましょう。
パーソナライズド動画のおすすめツール
パーソナライズド動画を運用するためのツールとして、以下の3点をおすすめします。
- PRISM(株式会社クリエ・ジャパン)
- DNP マーケティングクラウド(大日本印刷株式会社)
- KDDIエボルバ(株式会社KDDIエボルバ)
それぞれのツールの特徴や費用、メリット・デメリットについて紹介します。
PRISM(株式会社クリエ・ジャパン)
クリエ・ジャパンが提供する「パーソナライズド動画生成ツールPRISM」は、さまざまなデータを活用し、視聴者一人ひとりに合わせた動画を自動で合成、生成できるパーソナライズド動画の生成ツールです。自社でパーソナライズド動画作成と動画配信を行いたい企業におすすめできるツールとなっています。 SNSやメール、Web、サイネージ上の動画も合成・配信が可能です。
活用できるデータには、以下のようなものがあります。
・Web閲覧履歴
・顧客属性
・契約履歴
・購買履歴
・診断履歴
・利用履歴
PRISMの費用は、継続期間と制作本数に応じて動画1本あたりの単価が安くなる仕組みです。利用期間が1ヶ月のスタートパック、利用期間が3ヶ月から12ヶ月の継続パックの、2種類の料金プランが用意されています。
スタートパックで動画を2,000本制作する場合の料金は1本あたり920円ですが、20万本制作する場合だと1本あたり33円になります。12ヶ月契約の継続パックで20万本制作する場合は、1本あたりの料金は10円です。
DNPマーケティングクラウド(大日本印刷株式会社)
大日本印刷が提供する「DNPマーケティングクラウド」は、顧客に関連するさまざまなデータを、高度な情報セキュリティ環境で安全に蓄積し、統合管理して活用できるパーソナライズド動画ツールです。
「DNPパーソナライズド動画サービス」を併用することで、パーソナライズド動画制作が可能となります。また多様なMAツールと連携が可能で、プラットフォームを介してパーソナルな動画やDMなどを配信できる機能を備えています。
データ管理から、動画作成、動画配信までカバーしたシステムが必要な企業におすすめできるツールとなっています。
DNP マーケティングクラウドの利用料金は、最小の構成の場合で初期費用が800万円から、月額料金が80万円からとなっています。使用するデータ量や選択するサービスによって料金は異なるので、詳しい料金について知りたい場合は、Webサイトで問い合わせてみましょう。
パーソナライズド動画サービス(株式会社KDDIエボルバ)
KDDIエボルバが提供する「パーソナライズド動画」は、視聴者一人ひとりに最適化された動画を自動生成するツールです。商品やサービスの説明やマーケティング利用、カスタマーサポート利用にパーソナライズド動画の活用を検討している企業におすすめのツールとなっています。
KDDIエボルバは、auなど個人・法人の契約数6,000万超のサポート業務で培ったノウハウがあり、顧客体験価値(CX)の向上を強みとしています。コールセンターやBPOなどのサービスも展開しており、包括的なサポートも可能です。
パーソナライズド動画のデメリット
以下では、パーソナライズド動画のデメリットと、解消手段についてご紹介します。
パーソナライズド動画のデメリットは、料金の高さ
パーソナライズド動画は訴求力が高く、非常に魅力的な手法ですが、制作・運用の専用ツールを導入すると費用が高くなる点がデメリットです。
顧客情報に基づき名前を挿入したり契約内容を変えたり、個別にアレンジしたコンテンツを大量に作成するのが「パーソナライズド動画」ですが、近しい手法として「インタラクティブ動画」があります。パーソナライズド動画の制作・運用コストが気になる場合には「インタラクティブ動画」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
「インタラクティブ動画」とは?
「インタラクティブ動画」とは触れる動画のことで、視聴者が動画をタップ・クリックしてストーリーをカスタムする方式(ストーリー動画)を活用すると、個人の選択に合わせた情報を提示することができ、パーソナライズド動画よりも低料金での制作が可能になります。
関連記事:インタラクティブ動画とは
インタラクティブ動画の活用事例(三井住友カード)
この動画は、株式会社三井住友カードが「若年層のカード入会・利用促進」を目的として制作したインタラクティブ動画です。インタラクティブ動画編集プラットフォーム「MIL」を利用して制作されており、視聴者の回答に合わせてストーリーがカスタマイズされます。
動画ではクイズ形式で4つの質問が現れます。最後の設問で「19歳以下」「20代」「30代以上」と年齢を問う3択に答えると、それぞれの年齢に合わせたカード紹介が出る仕組みになっています。前半をゲーム感覚のストーリーにすることで、年齢というパーソナルな情報も抵抗なく回答できるよう工夫されています。事例について詳しくは、以下記事もご参照ください。
関連記事:三井住友カード様|MILを活用したストーリー動画事例
インタラクティブ動画は「視聴者参加型」の動画のため、通常の動画よりも一人当たりの視聴時間が長くなる、エンゲージメントが高くなりやすい、情報が記憶に残りやすいなどの特徴があります。パーソナライズド動画を本格的に導入する前に、まずはインタラクティブ動画を使って低料金で運用してみるのも良いでしょう。
まとめ
パーソナライズド動画は、閲覧履歴や顧客情報などのデータを活用することで、視聴者一人ひとりに最適化された動画を自動で生成する仕組みの動画です。
目的やターゲットに合わせた手法を選択することで、カスタマーサービスの運用コスト削減、営業支援、ファンの獲得などの効果が期待できます。 個人情報の取扱いに注意しながら制作・配信体制を構築することが重要です。
パーソナライズド動画のコストが気になる場合は、低料金で運用可能なインタラクティブ動画での代替を検討してみてはいかがでしょうか。「インタラクティブ動画編集プラットフォームMIL」を活用すれば、ブラウザ上で誰もが簡単にインタラクティブ動画を制作することができます。1ヶ月間の無料トライアルを実施していますので、ご興味をお持ちの方はぜひお気軽にご体験ください。
執筆者
桑田 将臣
MIL株式会社 セールスグループ マネージャー
WEB系ベンチャー企業にて新規事業の立ち上げ・セールスなどを経験後、PR会社にてデジタルプロモーションの企画提案を担当。2019年3月よりMIL株式会社に入社し、現在はセールスグループの各部門を統括している。