新型コロナウイルスの拡大以降、ウェビナーを開催するBtoB企業が急激に増加しました。アイ・ティ・アール(ITR)が発表した「2019~2025年度のウェブ会議市場規模推移および予測」によると、コロナ禍に見舞われた2020年のウェブ会議市場規模は2019年の2倍以上となり、急速に拡大しています。対面での営業活動やオフラインイベントへの出展が困難になり、オンライン上での会議や商談が日常化したことで、BtoBマーケティング施策の一環として、多くの企業がウェビナーに取り組むようになったことが伺えます。
とは言え、まだウェビナーを効果的に活用できていない企業や、単に開催して終わりになっている企業も多いのではないでしょうか?
当記事では「これからウェビナーを活用して新規のリードを獲得したい」「ウェビナーのメリット・デメリットが知りたい」といった悩みを持つマーケティング担当者のために、BtoBにおけるウェビナーの概要やメリット・デメリット、開催手順について解説します。
目次
ウェビナー(Webinar)とは?オフラインセミナーとの違い
ウェビナーとは、インターネット回線を通じてオンラインで行うセミナーのことです。
ウェビナーとオフラインセミナーは、以下の表のように受講場所や準備物、会場費用などが異なります。
ウェビナー(オンラインセミナー) | オフラインセミナー |
---|---|
開催場所 視聴するデバイス機器やネットがあればどこでも開催可能 |
開催場所 会場で実施する(自社会議室、イベント会場など) |
準備 マイク、カメラ、ウェビナーツール、パソコンやタブレット |
準備 椅子、テーブル、デバイス、名刺、配布物(リーフレットなど) |
会場費用 不要 |
会場費用 必要(自社会議室以外の場合) |
ウェビナーに関しては、準備物に記載されたツールさえあれば、会場費や物品・受付や案内等の要員が要らないため、費用を抑え、少人数で開催できる、というメリットがあります。
ウェビナー開催の増加とその背景
出典:Zoom
コロナ禍以降、BtoB企業のウェビナー開催が増えた要因のひとつとして、オンラインでのコミュニケーションの増加が挙げられます。
BtoB企業でウェビナーの活用が増加した大きな要因は、前述の通り2020年以降に流行したコロナ禍によるテレワークの拡大です。これに伴い、オンライン上でコミュニケーションが取れる会議ツールを導入する企業も増加しました。パーソルホールディングス株式会社の「ITツール導入・活用に関するレポート」では、コロナ禍以降導入したITツールは「Web会議システム」と回答した企業が56.2%と過半数以上となりました。
出典:PRTIMES「【データから見る企業実態調査】ITツール導入・活用に関するレポートを発表5割以上の企業でテレワーク関連ツールの導入率が向上ITツール予算は約900~4,000万円、約6.5割が「生産性向上」と回答」
Web会議システムには、ウェビナー後に回収可能なアンケートやレポート抽出といった機能が搭載されているため、昨今のWeb会議システムやツールの普及もウェビナーが増加した要因と言えるでしょう。
BtoB企業がウェビナーを開催するメリット
BtoB企業がウェビナーを開催することで、オフラインセミナーにはないメリットを企業側、参加者側は得られます。その具体的な内容について解説します。
企業側のウェビナー開催メリット
企業側には、以下のように3つのウェビナー開催メリットがあります。
- 開催コストを抑えられる
- オフラインではアプローチできない層を集客できる
- 既存リードへのナーチャリングが可能
それぞれのメリットについて解説します。
●開催コストを抑えられる
BtoBの新規リードを大量に獲得したいと悩む企業には、セミナーや展示会への出展がおすすめです。セミナーを開催した際に交換する名刺の数が多ければ多いほど、リードを獲得できるためです。しかし、セミナー開催や展示会出展の予算は、会場レンタル費やイベント時の配置に必要な人件費など、コストが嵩みやすくなります。
その一方で、ウェビナーで必要になるのは、カメラやマイクなどの機材の初期投資のみ、その後は同じ機材を使用すれば費用をかけずに開催できます。また、ウェビナー開催時の録画を活用することでアーカイブ配信(オンデマンド配信)も行えるため、コストを回収しやすいといった側面もあります。
●オフラインではアプローチできない層を集客できる
ウェビナーでは、遠方で会場まで足を運べない、予定が合わずセミナーに参加できない、といったオフラインセミナーや対面の商談ではアプローチできない層も集客できます。インターネット環境と視聴するためのデバイスさえあればどこでも視聴でき、幅広い層が参加できるためです。
●既存リードへのナーチャリングが可能
過去に商談に繋がらなかった、または失注してしまった、といった既存リードに対するナーチャリング方法に悩む方は、ウェビナーを行うことで悩みを払拭できるかもしれません。
ウェビナーを定期開催し、有益なコンテンツとして既存リードへ継続的に接点を持ち続ければ、商談化のチャンスが再び訪れることもあり得ます。また、良質な情報や知識を提供し、専門性が高いと感じさせることで企業の信頼度も上がるなど、リードの興味や関心度を高めることができるでしょう。
ウェビナーを定期的に実施することは、商談に至らなかった既存リードを活性化させる有効な手段とも言えます。
参加者側のウェビナー参加メリット
参加者側のメリットとしては「開催地を気にせずに参加できる」という点が大きいでしょう。
ウェビナーはインターネット環境があれば日本全国どこからでも参加できます。「会場まで距離が遠いため参加しにくい」「交通費が発生する」など参加者の負担感がないため、時間や距離を気にせず参加できるのがメリットです。
オフラインセミナーの場合は、情報収集のために参加したくとも、「有益な情報が得られないと時間の無駄になるかもしれない」と申し込み自体を踏みとどまる、または申し込み先を吟味するかもしれません。ウェビナーであれば距離や時間が気にならないことからも参加へのハードルが低くなり、結果的に申込数が増えるといった開催側のメリットもあることでしょう。
さらに、録画配信型のウェビナーの場合は、「他に予定があり開催時間に間に合わない」「日中は忙しくて参加できない」といった状況にある人でも、後でアーカイブ配信を見れる気軽さもメリットと言えます。
BtoB企業がウェビナーを開催するデメリット
ウェビナーの開催はメリットだけでなくデメリットもあります。企業側・参加者のそれぞれから見るデメリット点を解説します。
企業側のウェビナー開催デメリット
企業側には、以下のようなウェビナー開催デメリットがあります。
- 参加者の反応を読み取りにくい
- 集客の仕組みを確立しなければ、参加者が集まらない
それぞれのデメリットについて順に解説していきます。
●参加者の反応を読み取りにくい
ウェビナーは、参加者の反応を読み取りにくいデメリットがあります。ウェビナーでは参加者のカメラを「オフ」とするケースがほとんどで、参加者の表情や反応が開催者側から分からないためです。講演者も参加者の反応がわからなければ、ウェビナーを進行しづらいこともあるかもしれません。
質疑応答(Q&A)ができるようチャット欄を設けるなど、事前に参加者の反応や雰囲気をつかめる「双方向コミュニケーション」の仕組みを導入しておくのがおすすめです。また終了後にはアンケート回答を依頼し、視聴者の満足度やニーズを図り、次の企画へと活かすと良いでしょう。
●集客の仕組みを確立しなければ、参加者が集まらない
ウェビナーを開催しても、「集客」の仕組みがなければ参加者は集められません。知名度の高い企業の場合、公式サイトやSNSなどで開催を告知するだけで参加者を集められる可能性が高いですが、未だ知名度の低い企業の場合、ウェビナー開催の告知を工夫する必要があります。
営業担当者が既存顧客に声をかける、ダイレクトメールを送るなど、ウェビナーの集客施策もウェビナー開催の企画と同時に行うことが重要です。また効果的に新規リードを獲得するためには、広告出稿や他社との共催などの施策も必要になるでしょう。
参加者側のウェビナー参加デメリット
参加者側には、主催者やほかの参加者と交流ができないというデメリットがあります。オフラインであれば通常行われる親睦会や名刺交換会など、主催者や参加者同士が交流を深める機会がありますが、ウェビナーにはありません。
人脈を広げることを目的としてウェビナーに参加したい場合は、交流ができる場が別途用意されているかを確認しましょう。ウェビナーによっては参加者限定で参加できるFacebookページを作るなどの手法を採用していることがあります。
ウェビナー(Webinar)配信方法
ウェビナーはオフラインでのセミナーとは異なり、さまざまな方法での配信が可能です。ここでは、ウェビナーの主な配信方法を以下にまとめました。
ライブ一方向(リアルタイム) | リアルタイムでウェビナーを配信。主催者側のみ情報を発信する |
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ライブ双方向(リアルタイム) | リアルタイムでウェビナーを配信。主催者と参加者双方でコミュニケーションが取れる |
ライブ録画配信 | 事前録画したウェビナーを特定のタイミングで配信する |
アーカイブ配信(オンデマンド) | 事前録画したウェビナーを参加者は好きなタイミングで視聴できる |
ウェビナーはリアルタイムで配信する「ライブ配信」と録画しておいたウェビナーを配信する「録画配信」に分かれます。
「ライブ配信」の場合は更に、上記表の通り、主催者側のみが会話をする「一方向のウェビナー」と、主催者と参加者双方で会話が行われる「双方向のウェビナー」の2種類に分かれます。
ライブ配信以外で代表的な配信方法は、決められた時間に配信するライブ録画配信と、参加者が好きなタイミングで視聴できるアーカイブ配信(オンデマンド配信)の2種類があります。好きな時間に視聴ができないというデメリットがある「ライブ録画配信」に対し、「アーカイブ配信」は一時停止や巻き戻し、スピードを変えての視聴も可能で、参加者の都合に合わせて参加しやすいというメリットがあります。
また、企業側の視点でも、アーカイブ配信は有益なコンテンツとして継続的に活用できるというメリットがあります。ウェビナーを開催して一度で終わることなく、ナーチャリング用のコンテンツ、サービスの説明動画として活用することも可能なため、費用対効果が高いと言えるでしょう。
ウェビナー開催手順 基本のステップ
一般的に、ウェビナーは以下の手順で開催します。
1.企画
2.配信ツールの設定
3.告知ページの作成・公開
4.集客
5.当日の運営
6.振り返り
それぞれの手順を解説します。
1.企画
ウェビナーの企画を行う最初のステップは企画です。ウェビナーを開催する目的(「商材の認知」「リード獲得」など)を定め、目的に沿ったKPIを設定しましょう。
BtoB向けのウェビナーにおける一般的なKPIには、以下のような項目があります。
- 事前の申し込み数
- 参加者数
- ウェビナー参加後の商談数
- ウェビナー経由での成約数
その後、リアルタイムか録画配信かといった開催方法、使用するツール、ウェビナーの集客方法の決定、ウェビナーのタイトルや内容の検討、登壇者や運用するスタッフの選出を順に行います。
ウェビナーのタイトルや内容は、自社のサービスや商品のペルソナやカスタマージャーニーに沿って決めましょう。潜在層向けの場合は、企業の課題解決に役立つような「お役立ちセミナー」、顕在層向けであれば「自社サービスや製品の活用事例などを含めたセミナー」など、ターゲットとする対象者に対し適切なテーマを企画します。
2.配信ツールの設定
次に、ウェビナーを配信するためのツールの設定を行います。多くのBtoBのウェビナーで用いられているツールは、Zoomをはじめ、Google Meet、Teams、Live Onなどです。
出典:リードレ「【2021年最新】今選ぶべきウェビナーツール(システム)10選」
ツールにより参加人数や録画機能、オンデマンド配信の有無などが異なります。開催するウェビナーに合わせたツールを検討しましょう。ツールを選定後、ウェビナー配信のための必要な設定を行います。
1.ウェビナーライセンスを購入する
2.事前登録が必要なウェビナーの場合、ウェビナーへの登録方法(自動承認、手動承認)を設定する
3.ウェビナーのスケジュールを設定する
4.出席者とパネリストを招待する
5.ウェビナーを開始する
出典:Zoom「Zoom Webinars 入門」
3.告知ページの作成・公開
ウェビナーへの集客と参加申し込みのために、告知ページを作成します。ページのタイトルや内容を検討した後、ウェビナーの申し込みフォームを作成し、ページ作成後に公開する流れです。
4.集客
ウェビナーの告知ページを公開後、ウェビナーを多くの人に知らせるための集客を行います。BtoB向けウェビナーの代表的な集客方法は、既存リード宛にはメルマガや営業担当者からの案内、SNSでの告知などがあります。また新規リードの獲得を目的とするなら、外部のウェビナー情報サイトへの掲載や広告出稿などが主流です。
また、最近では他社と協力して開催する共催ウェビナーも人気です。1回のウェビナー開催に対し、複数社が同時に集客を行うことになるので、自社単独開催と比較すると、より多くの参加者を集められるといったメリットがあります。
5.当日の運営
プログラム通り時間内にウェビナーが終わるか、機材トラブルがないか、などを確認するために、当日までにリハーサルを行っておきましょう。
当日を迎えたら、改めて、使用するウェビナーツールやマイク、カメラなどの機材の設定・確認などを行います。またウェビナー開始後は、Q&Aの受付や終了アンケートのアナウンスなどを行い、ウェビナーを円滑に進めます。
6.リードへのアプローチ&振り返り
ウェビナー終了後は、次回のウェビナーに活かすために振り返りを行いましょう。振り返りは、参加者数、出席率、ウェビナー後の商談化数などの数値を計測し、「定量的な振り返り」と、アンケート回答や質疑応答の内容などに基づく「定性的な振り返り」を行います。
BtoBウェビナーでリード獲得やナーチャリングを最大化するポイント
ウェビナーを開催したものの、うまくリード獲得やナーチャリングにつなげられないこともあるかもしれません。ここではBtoBウェビナーの効果を最大化するためのポイントとして、2点を解説します。
- 他社との共催
- アーカイブ活用
それぞれについて、見ていきましょう。
他社との共催
ウェビナーは他社と共催することで「自社が持たない見込み顧客へアプローチできる」といったメリットがあります。共催社それぞれが保有している顧客リストに対してメルマガを配信したり、自社サイトやSNSなどで告知をして、ウェビナーの参加申し込みを促すことで、相互の顧客へアプローチができ、新規リードの獲得につながります。
ウェビナーを共催する企業は、自社と提供する商材やサービスが異なり、かつ親和性の高い商材やサービスを取り扱っている企業がおすすめです。類似する商材やサービスを持つ企業と共催することでリードの奪い合いとなることもなく、また多角的なニーズを持つ参加者の集客、リード獲得につながるでしょう。
出典:MIL株式会社「動画×CRMで実現するOne to Oneコミュニケーションとは?~顧客体験を向上させるCV獲得・育成・LTV向上施策〜」
アーカイブ活用
ウェビナーはオフラインセミナーと異なり、開催済みの内容をアーカイブ化することで継続的に展開できるメリットがあります。ウェビナーのアーカイブは、既存リードへメール配信を行い、ナーチャリング、アップセル、クロスセルへとつなげられます。
しかし、録画したものをそのままアーカイブ配信するだけでは、大きな成果は期待できません。視聴者が見やすいように編集したり、動画視聴中や視聴後に参加者が「資料請求」「問い合わせ」「アンケート回答」といった次のアクションを取りやすい仕掛けを仕込むことで、リード獲得やナーチャリングにつなげられます。
そのためには、動画からサイトへとシームレスに遷移できるよう、「CTA」を組み込めるプラットフォームを利用すると良いでしょう。YouTubeでもCTAの設置は可能ですが、設置できる箇所が限られるなど機能に制限があるのが難点です。
たとえば動画をタップ・クリックできる「インタラクティブ動画」を活用して、動画内に「資料請求」や「オンライン相談」などのCTAを設置し、ウェビナーを視聴しながら興味をもったタイミングですぐにアクションができる仕掛けを施して、コンバージョンに繋げるという方法もあります。
関連記事:ウェビナーのインタラクティブ動画化でBtoBのリード獲得・育成・商談化を実現!
まとめ
ウェビナーの概要やメリット・デメリット、開催する手順を解説すると共に、ウェビナーからリード獲得やナーチャリングにつなげる方法について説明しました。
ウェビナーの効果を最大化するには、ただ単に配信するだけでなく、集客や開催後のリード獲得のための施策を講じることや、アーカイブ動画を制作し、コンテンツとして継続的に展開することがポイントになります。BtoBのリード獲得やナーチャリングの手法として、ぜひウェビナーの開催を検討してみてください。
執筆者
瀧口 愛
MIL株式会社 マーケティング
Web制作会社でサイト構築に従事後、MIL株式会社へ入社し、マーケティングチームに所属。ウェビナーや展示会実施の基盤を構築し、毎月のウェビナーやオフラインイベントの企画・運営全般を担当している。その他、メルマガ配信やマーケ全体の施策効果分析など、フィールドマーケティング領域全般を担う。