働き方改革によりリモートワークが普及しつつあることや、感染症対策などで対面での商談がしにくいことから、各企業ではオンライン商談を行う機会が増えています。オンライン商談の便利さは実感しているものの「対面より成約に結び付けるのが難しい」と悩む方も多いかもしれません。
この記事では、オンラインと対面での商談の違いを踏まえた上で、オンライン商談を成約に導くコツを11項目ご紹介します。具体的な注意点やチェックリストをご紹介しますので、オンライン商談の質向上を目指す方は、ぜひご一読ください。
目次
オンライン商談の特徴
オンライン商談と対面での商談で、異なる点は何でしょうか。
一番大きな違いは「同じ場所にいるかいないか」という点です。対面では、同じ部屋で目の前にいる相手と会話をするので、お互いに相手の話に集中できます。一方オンラインでは、別の場所で顔だけを見せて相手と会話をするため、見えない手元で別のことをしながら会話をする可能性があり、顧客が商談に集中していない可能性があります。また同じ空間にいないため、対面よりも表情や雰囲気が伝わりにくいという特徴があります。
また「ツールを使用する」という点も大きな違いです。ツール使用によって画面共有や録画ができるなどメリットも多い反面、相手によってはオンラインツールの操作に不慣れだったり、パソコンでの会話に不安があるなど、サポートが必要なケースもあります。さらに音声や回線トラブルなどを防いだり、画面で見やすい資料を作るなどの事前準備が必要です。
この違いを踏まえると、「対面での商談よりも強力に商談相手の興味・関心を引き、要点を伝える工夫」と「オンラインツールの利用を踏まえた準備・配慮」が特に重要になります。
オンライン商談の特徴について詳しくは、以下の記事でご紹介しています。
関連記事:【2021年】オンライン商談とは?成功のコツ、メリット・デメリット、事例、おすすめツールをご紹介
オンライン商談の流れ(5ステップ)
オンライン商談の流れは、アポイントから分析まで、大きく分けて5ステップがあります。
基本的には、対面の商談と同じ流れとなりますが、先ほどご紹介したオンライン商談ならではの特徴を踏まえたポイントがあります。
以降では、それぞれのステップごとに具体的なコツをご説明します。
STEP1:アポイントのコツ
アポイントでは、顧客と連絡を取り、商談の日時を決めます。オンラインでの会話に慣れていない顧客やオンラインよりも対面のほうを好む顧客の場合は、アポイントの段階でオンラインという手段についてのより丁寧な説明が必要となります。
この特徴を踏まえたアポイントでのコツは次の2つです。
【コツ1】商談日時はなるべく直近で設定する
オンライン商談は、お互い自由な場所で商談を行うことができるメリットがある一方で、顧客にとっては場所の準備がないため、つい失念することがあります。また、自由な場所にいるだけに心の準備がなく、気軽にキャンセルしやすくなります。
商談の予定を忘れられないためにも、アポイントの日時は「今日これから」「午後にでも」「明日・明後日」など、直近に予定するのがポイントです。
ただ、時間帯については、前の予定がずれ込む場合もありますので、余裕を持った時間を設定するように気をつけましょう。万一、先の日取りでアポイントを取る場合は、後ほどもご説明しますが、約束の日が近づいたらリマインドを忘れずに行いましょう。
【コツ2】マニュアルやトークスクリプトを作り、オンライン商談の不安を払しょくする
アポイントの段階で、顧客がオンラインでの商談に不安を感じているようであれば、接続方法の簡単なマニュアルを事前に送付しましょう。
画面のスクリーンショットと文字で、簡単なマニュアルにするのがコツです。あまりボリュームが多いと、それだけで相手は「オンラインは大変そう…」とやる気が失せてしまいます。
マニュアルを一度メールなどで送り、必要に応じて、電話でマニュアルの内容を説明します。顧客のパソコン操作に不安があるようなら、そのときに解消しておきましょう。以下のようなトークスクリプトを用意しておくと、さらにスムーズにアポイントをとることができます。
「次回は、オンラインでお話をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「zoomはお使いになられたことはございますか」
「事前に私がメールでオンラインツールのリンク先を送ります。当日そのURLをクリックしていただくと、次の画面が表示されますから、このようにボタンを押して進んでください」
「カメラをONにするには、〇〇部分のカメラマークを押してください」
商談当日に接続トラブルなどで肝心の商談時間が短くならないように、丁寧に説明しておくことがコツです。
STEP2:事前準備のコツ
事前準備では、商談当日のための準備をします。自分のための準備としては、商談用の資料を作成することと、オンラインツールの操作やパソコンなどの端末の準備があります。顧客のための準備としては、リマインドのためのメールを送信することです。それぞれのコツや注意点を解説します。
【コツ3】オンライン商談用の資料を作る
オンライン商談用の資料を作りましょう。
冒頭で「対面の商談と違って、オンライン商談では集中しづらい」という点をお伝えしました。また、対面の商談では、紙に印刷した資料を見てもらったり、タブレットなどの端末で見せたりと見せ方にもバリエーションがありますが、オンライン商談では画面共有機能を使用して顧客に資料を見てもらうことになります。
これらの状況から、オンライン商談用の資料は、以下のポイントに気をつけて作成すると、顧客を飽きさせない、注目してもらえる資料になります。
<オンライン商談資料のポイント>
- アポイント時にヒアリングした顧客の課題に沿って、解決案・サービスを提案する
- 課題が解決したイメージの画像を使う
- 文字は「大きな文字で・少なめに・端的な言葉で」表現する。
- 信用を一目で得やすい、実績や数値、専門家意見や賞などの権威付け、お客様の声を積極的に使用する
- 1枚の資料に1つのメッセージとする
- 全体の資料数を少なめにする
- 口頭で説明する内容と、資料の内容を一致させる
- 視線の流れに沿うレイアウトにし、強調点は目立たせる
オンライン商談の資料について詳しくは、以下の記事でご紹介しています。
関連記事:オンライン商談の質を高める!資料作成&共有のポイント10点
【コツ4】前日までにリマインドメールを送信し、キャンセルを防ぐ
商談の前日までにリマインドメールを送信し、キャンセルを防止しましょう。
商談の日時が数日空いてしまうようであれば、前日までに1回メールを送信し、「〇〇様とお話しできるのを楽しみにしております」といったように、前向きなメッセージを送ります。リンク先はリマインドメールにも記載します。
もし商談開始時間が遅い時間帯なら、「本日のURL」などわかりやすい件名で、当日朝もリンク先を送信すると、先方はリンク先を探す手間が省けます。
商談の日時が明日・明後日などのように直近であれば、オンラインツールのリンク先を送るメールがリマインドになります。また、もし自分も顧客も同じオンラインサービスを利用しているなら、例えばGoogleアカウントを持っている場合スケジューラーでリンクを送るのもリマインドになります。
何か不都合があればすぐ連絡がもらえるように、自分の電話番号もリマインドメールに記載しましょう。
【コツ5】ツールの操作や、カメラ・音声をチェックする
ツールの操作や、パソコンなどの端末のカメラ・音声をチェックしましょう。ツールの操作には、会議の開始方法や、画面共有の仕方などがあります。これまでオンライン会議の主催をしたことがない方は、同僚の方に協力してもらうなどして、操作方法を確認しましょう。
当日になってあわてないように、以下の項目をチェックしてみてください。
<事前準備のチェックリスト>
- オンラインツールの操作は確認したか?
- カメラがオンになるか確認したか?
- 背景はどうするか?
- 音量は適切か?
- 上司が同席するなど、複数参加の場合、参加者にもリンク先を送り、カメラや背景、音量を確認してもらったか?
- 会議室で複数人が参加する場合は、イヤホンマイクを用意したか?
STEP3:オンライン商談本番のコツ
オンライン商談本番では、準備したことをしっかり活かし、商談の目的を達成します。
対面の商談と違って、オンライン商談は集中力が途切れやすいため、対面では有効なトークスキルやテクニックが有効とならない場合があります。流ちょうな話し方よりも、誠実かつ理論的な話し方を心がけましょう。
商談本番でのコツを4つ、ご紹介します。
【コツ6】オンライン商談特有のマナーを守る
オンライン商談のマナーは、対面の商談と少し異なります。対面の商談では、座る位置や荷物の置き方、お茶の頂き方などが押さえておくべきマナーとなりますが、オンライン商談では、オンラインツールでの操作や話し方が、押さえておくべきマナーとなります。またオンライン商談では録音・録画が可能ですが、相手への配慮が必要です。
<オンラインツールの操作のマナー>
- 約束の時間の10分前には入室し、相手よりも後に退室する
- 自分が話していない瞬間はできるだけミュートにしておく
- 名前の表示は「社名+名前」にする
<話し方のマナー>
- ゆっくりはっきり話す
- 長い説明のあとは、話を終えたことがわかりやすいよう「以上です」と言う
- 大きくうなずくことで相づちとする(基本的にミュートにするため、声は聞こえない)
<録音・録画のマナー>
- 少なくとも初対面ではなく、関係性が築けている場合に限る
- 顧客と自社に、必ず事前に許可をとる
- 顧客の本音が出にくくなる可能性があることを認識する
【コツ7】アイスブレイクで緊張を和らげる
アイスブレイクとは、氷を溶かす、つまり緊張した場の空気を和らげることを指します。商談の冒頭では、アイスブレイクをして緊張を和らげましょう。
オンライン商談では、相手が遠い場所にいる可能性があるので、ニュースや出来事などの話題は「いえ、知りませんでした」で終わってしまう場合があります。自分だけでなく顧客や他の参加者も発言できるような話題で質問を投げかけると、最初に一言声を発することができ、参加意識が高まりますので、おすすめです。
「バーチャル背景のデザインが素敵ですね、オリジナルで作られたのですか?」
「東京は久しぶりの雪が降りましたが、〇〇様の地域ではいかがですか?」
【コツ8】双方向コミュニケーションとオーバーリアクションを意識する
双方向のコミュニケーションとオーバーリアクションを意識しましょう。
オンラインで、受け身で聞いているだけだと、集中力がさらに薄まる可能性があります。商談に集中していただき、顧客の気持ちの変化をつかむためにも、説明がひと段落するごとに「ここまでで、どうお感じになられましたか」「わかりにくい箇所はありませんでしたか」と質問し、答えてもらうようにします。
オーバーリアクションは、対面で話すときよりもオーバーに表情を変えたり、言葉に出したりすることです。顧客についておおげさに褒める、ということではありません。画面共有をしている間でも、カメラがオンになっていれば、隅に自分の姿が映っていることも忘れないようにしましょう。相手の話に対してうなづいたり、口角を上げて微笑んだりと、感情表現を意識することが大切です。
また、画面共有をしようと操作しているときや、画面を切り替えるときなども、無表情で沈黙の時間を過ごすのではなく、言語化して状況を説明すると、顧客は何が起こっているのかがわかり、安心します。
「画面を共有いたしますね」
「具体的な数字をご提示したいので、別の資料に移ります」
「今、ファイルを開きます。データが重いので、少し時間がかかっています。もう少々お待ちください」
【コツ9】進行はテンポよく、スピーディーに
商談の進行は、テンポよく、スピーディーにしましょう。
冒頭では、商談の目的と進め方の大枠をまずお伝えし、双方のズレがないかを確認します。商談中は、自分の伝えたいことを一方的にダラダラと話すのではなく、伝えるべきことを絞って、シンプルな言葉で伝えます。ある程度プレゼンテーションができたならば、クロージングを入れていきましょう。
オンライン商談は、注目するポイントが画面だけになるので、飽きやすく時間を長く感じがちになります。商談時間は、できれば1時間以内におさめます。「今日は1時間程度とお願いしていますが、具体的には〇時〇分ころまでお時間をいただけますか?」と商談の最初に終了予定時刻を約束し、それを守ることでも小さな信頼を獲得していきます。
STEP4:商談後のフォローのコツ
商談後のフォローでは、顧客へのフォローを行います。できるだけ早く、顧客へ連絡を取ります。
【コツ10】当日中に御礼メールを送る
まだ商談の余韻がある当日中に、御礼のメッセージとともに、商談内容のまとめや説明に使用した資料を送り、今後の流れについても伝えます。もし、宿題として持ち帰ったものがあり、調査に時間を要しすぐに回答できなさそうであれば、「〇日頃回答いたします」と回答できるめどを御礼メールの中でお知らせしましょう。
そして、御礼メールの後も、できれば小さなコミュニケーションをとることをおすすめします。商談で紹介しきれなかった他のお客様の声や事例、商談内容についての新しい話題、制度の変更点などをお伝えしていくと、信頼関係の構築、決断の後押しにつながります。
STEP5:分析のコツ
分析では、オンライン商談実施後の分析をします。うまくいかなかった商談について振り返るのは気が進まない気持ちもありますが、対面の商談同様に冷静に振り返り、次回に活かしていきましょう。
【コツ11】受注商談と失注商談に分類して、何が受注につながったかを把握する
「受注できた商談」と「失注した商談」とに分けて、要因を分析しましょう。具体的には次のような項目について振り返ります。
<分析項目の例>
- 時間(約束した時間を守れたか、適正な時間だったか)
- トーク比率(顧客と自分の話した比率はどのくらいか)
- 商談構成(プレゼンテーションに時間をかけすぎていないか)
- スピード(展開のスピードが早すぎたか/遅すぎたか)
- コミュニケーション(質問に対して適切な回答ができたか、信頼を得られたか)
- 資料(顧客はどの部分に興味を示していたか)
- 操作(操作に手間取る時間はなかったか)
- 通信状況(音声が途切れる、画面が固まるなどはなかったか)
- 顧客の状況(商談に集中できる環境に見えたか)
これらの分析を蓄積していくことで、商談の技術改善ができ、成約率の向上につながります。もし、商談時に許可を得て録画ができている場合は、録画を見ながら、自分の話し方を振り返る、時間配分を計測するなどさらに細かい分析を行いましょう。他の人も同席していた場合は、客観的なフィードバックをもらうのも有効でしょう。
まとめ
オンライン商談について、その流れを5つのステップで説明し、ステップごとのコツをご紹介しました。アポイント、事前準備、商談、フォロー、結果分析という流れは、対面の商談とほぼ同じ流れですが、オンライン商談と対面の商談では、以下の違いがあります。
・対面での商談よりも強力に商談相手の興味・関心を引き、要点を伝える工夫が必要
・オンラインツールの利用を踏まえた準備・配慮が必要
短い時間の中でも、プレゼンテーションをしつつ顧客の気持ちをヒアリングし、前向きに決断してもらうことは可能です。むしろ端的にポイントを押さえて必要十分な説明ができれば、信頼感がアップし、それが成約につながります。今回ご紹介したコツを押さえて、オンライン商談に磨きをかけていってください。
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執筆者
桑田 将臣
MIL株式会社 セールスグループ マネージャー
WEB系ベンチャー企業にて新規事業の立ち上げ・セールスなどを経験後、PR会社にてデジタルプロモーションの企画提案を担当。2019年3月よりMIL株式会社に入社し、現在はセールスグループの各部門を統括している。