コロナ禍において、企業や自治体でのデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進んでいますが、その中でも注目されているのが、仮想現実を動画で紹介する「360度動画」と「VR動画」です。
当記事では、「360度動画」と「VR動画」の違いから、8つの事例、最新手法、360度動画の作り方、カメラ選びのポイント&おすすめカメラ3選まで、徹底的に解説していきます。
目次
360度動画とは?~効果・種類・VRとの違い~
360度動画の特徴、VR動画との違い、種類について、ご説明します。
360度動画とは?
360度動画とは、360度の様々な角度から景色や物を楽しめる動画のことです。全天球動画、パノラマ動画、VRとも呼ばれ、いずれも、一度に360度全方向からのアングルを見られる動画を指しています。
360度動画は動かしながら、様々な視点からの疑似体験ができ、何回も視聴が可能です。通常の動画を受動的に視聴するよりも、360度動画で疑似体験しながら視聴したほうが印象に残りやすく、強いインパクトを残すことができます。
コロナ禍では、オンラインショールーム、オンラインイベント、オンライン展示会、などの用途で多くの企業が活用しています。
360度動画を視聴するには、パソコン・スマホさえあれば特別な装置は必要ありません。Google Street Viewのように画面をドラックして向きを変えることもでき、ジャイロセンサーのついたスマホであれば、再生中に端末を動かして視角を変えたり、指をスワイプして視点を切り替えることも可能です。
「360度動画」と「VR動画」の違い
360度動画とVR動画は「360度、さまざまな角度から楽しむ動画」という点では非常に似ており、自分の好きな方向に角度を変えることで、通常の動画では味わえないような「臨場感」を楽しめる点も共通しています。
以下が二つの違いになります。
現実世界で動画を楽しむ。専用装置がなくても視聴できる。
・VR動画
仮想現実へ入り込んで自ら移動し、視点を変えながら動画を楽しむ。基本的にヘッドセットが必要。
3種類の「360度動画」
360度動画には、以下3つの種類があります。
ドームマスター形式とは、360度カメラで撮影したものを1枚にまとめて、魚眼レンズのように表現したものです。
・正距離円筒形式(パノラマ形式)
正距離円筒形式(パノラマ形式)は、球面状に撮影された映像を平面に変更し、緯度と経度を整えたものです。風景撮影などによく使われます。
・キューブマップ形式
キューブマップ形式は、立方体の中心から周囲を覗き込む形の映像です。3DCGのマッピングによく活用されるものです。
360度動画事例8選
ここからは、ウィズコロナ時代における「360度動画の活用事例」として、8つの動画を紹介していきます。
360度動画による「オープンハウス、モデルルームのバーチャルツアー」
コロナ禍では、オープンハウスやモデルルームの見学が難しくなったことがあり、国内外において、オンラインによるバーチャルツアーの導入が急速に進んでいます。
以下は、戸建賃貸住宅 casita(カシータ)の室内を紹介している、360度動画です。
360度動画を視聴することにより、現地に行かなくても、間取りの特徴や回遊性の高さを体感することができます。
360度動画による「バーチャル展示会」
展示会などの大規模イベントで入場数の上限が設けられたことに伴い、360Channel社は、オンラインで展示会を疑似体験できるバーチャル展示会のシステムの開発、提供をはじめました。
特設のサイトにアクセスして、画面をドラックすることで展示会を見渡せるだけではなく、床面にある白いアイコンに触ることで視点を移動でき、実際に展示会を歩いているように体感できます。
アイコンを押して地図を見る、シークバーで行きたい場所に移動する、なども可能になっています。
360度動画による「工場見学」
工場見学の疑似体験としても、360度動画が導入されています。
360度動画で会いに行ける「動植物園」
熊本市動植物園では、新型コロナウイルスの影響を受けて2020年2月末より休園していましたが、来園しなくても普段の動物たちを見学できる仮想現実の動植物園「VR植物園」として、360度動画の配信を開始。360度の撮影カメラで動物エリアを16箇所、植物エリアを2箇所収録し、動物たちと飼育員の日常を紹介する動画を配信しました。
360度動画による「バーチャルトラベル」
旅行に行けない状況下で、注目が集まっているのがVRトラベルやゲーミング・トラベルの世界です。
YouTubeなどでも手軽に楽しめる360度動画よるVRトラベルコンテンツは多数あり、コロナ禍で海外旅行に行きたいという欲求を疑似体験で満たしたいと、多くの人に視聴されています。不要不急の外出を避ける動きに合わせた360度動画によるVRトラベルコンテンツは旅行に行けない欲求を発散するための動画コンテンツとなりました。
360度動画による「ジェットコースター体験」
ジェットコースターも、360度動画でバーチャル体験できる時代となりました。今後は、遊園地に足を運ぶことなく自宅でジェットコースターからの景色を楽しむことが日常化するかもしれません。
360度動画による「MVのティザー動画」
YOASOBIが2021年7月にリリースした『たぶん』のティザー映像には360度動画が使われています。映像は自主制作アニメーションを手がけるクリエーターの南條沙歩が手がけ、360度動画により、視点を変えて視聴させることを目的としています。
360度動画による「ホラー体験」
360度動画の楽しみ方として、ホラー映画もおすすめです。映画『アナベル 死霊博物館』のトレーラーでは360度動画のVR映像が活用されました。
トレーラーの予告編では目の前に映画の舞台である死霊博物館が広がります。現実世界と勘違いするほどの映像と怪奇現象はとても迫力のあるコンテンツとなっています。
360度動画の最新手法は「動画内を触れる!インタラクティブ動画」
今まで360度動画の事例を紹介してきましたが、「インタラクティブ動画」をかけあわせると、360度動画の中を触ることができるようになります。
以下はインタラクティブ動画と360度動画をかけあわせた「新感覚の体験型・謎解きドラマ」です。部屋の中を360度見回せるだけではなく、ポイントを触って推理を体験することができます。
360度インタラクティブ動画の効果
360度動画の「360度見渡せる」というメリットに、インタラクティブ動画の「触れる」というメリットが加わることで、視聴者がその場所に訪れたかのような印象を与えることができます。以下のような用途にオススメです。
- アパレルの新商品発表、社内セミナーなど「展示会・イベントの疑似体験」
- 視聴者の観たいコンテンツだけを選択して視聴できる「観光の疑似体験」
- 遠方にいる求職者に向けた「採用説明会や会社見学の疑似体験」 など
360度インタラクティブ動画を作るには?
360度動画をインタラクティブ動画化するには、編集プラットフォーム「MIL」がおすすめです。MILでは360度動画のインタラクティブ編集から公開までを一括して行うことができます。
専用の管理画面に動画をアップロードしてリンクの埋め込みやタグ付けを行い、ポップアップ画面を作れば簡単にインタラクティブ動画が制作できます。ご興味をお持ちの方はぜひお問合せください。
360度動画の作り方
360度動画の編集の難易度は高くありません。YouTube上にも個人や中小企業の投稿する360度動画を多く見かけるようになりました。以下では、360度動画の作り方についてご紹介していきます。
360度動画の制作ステップ
1.360度動画素材を用意
360度動画を撮影できる機材を使い、360度動画を撮影します。テンポの遅い映像のほうが、視聴者は360度動画の世界を堪能できます。また360度動画ならではの、周りを見渡したくなる、視点を切り替えたくなる工夫を散りばめると、尚良いでしょう。
2.360度動画素材を編集
360度動画は、2つのレンズで撮影した動画をつなぎ合わせるビデオ・スティッチングという作業が必要になります。以下の動画で詳しくつなぎ合わせのイメージを紹介していますので、興味をお持ちの方はご確認ください。
この作業は、360度動画をYouTubeやアプリで再生するために必ず行わなければいけない作業となります。
360度動画を撮影できるカメラであれば自動でビデオ・スティッチングを行いますが、プロフェッショナルな360度動画を撮影し、編集するとなると、一眼レフを複数台使用して編集するほうがクオリティをコントロールできます。ビデオ・スティッチングは、ここで必須な作業となってきます。
3.完成した360度動画を共有する
YouTubeは360度動画、VR動画に対応しています。アップロードにより、簡単に共有することができます。
YouTubeにアップロードする場合には変換と圧縮が必要になります。一般的にはエンコードと言われています。この作業は360度動画に限らず使われています。
エンコード完了後は360度動画の再生を有効にするために、以下の流れでメタデータを入れていきます。
- 360 Video Metadataのアプリをダウンロードし、アプリを起動します。
- アプリから、動画ファイルを選択します。
- 「Spherical」にチェックを入れて「Save as」をクリックします。
- 作成したファイルに名前をつけ保存を行います。
アップロード可能なファイルデータが元のデータのある場所に作成されます。ここでできたファイルデータをYouTubeにアップロードすれば、YouTubeでの共有が完了となります。
360度カメラ選びのポイント&360度カメラおすすめ3選
最後に、もっとも重要な機材である「360度カメラ」についてご紹介します。
360度カメラ選びのポイント
360度動画を撮影するカメラを選ぶポイントは、以下の2点です。
1. 全天球カメラか?半天球か?
半天球はレンズが1枚だけになります。カメラは水平方向の360度、あとは地球儀の上半分のみの撮影となります。
全天球には前後に1枚ずつの計2枚のレンズを搭載されており、1枚のレンズがそれぞれの片面を撮影し、2枚のレンズの撮影した映像を合成することで、360度動画が完成します。天地撮影が可能になりますが、デメリットとして撮影者や三脚が360度動画の中に映り込んでしまうことがあります。
全天球のほうが目を引く映像を撮影できるため、インパクトを重視したり、SNS等で拡散を狙うのであれば、全天球のほうが適していると考えられます。
2. 防水機能の必要有無
屋外での撮影がメインであれば、防水、防塵、耐衝撃性能も検討したほうが良いでしょう。室内使いがメインであれば、あまり必要ないかもしれません。
360度カメラおすすめ3選
360度動画の撮影におすすめのカメラとして、以下3点をご紹介します。
- RICOH THETA SC2
- Insta360 ONE X
- GoPro Fusion
1.RICOH THETA SC2
360度動画を撮影するカメラの入門機になります。従来のモデルよりも動画性能の向上、内臓メモリーの増量などが改良されています。比較的安価であり、小型ボディなので常に鞄に入れて持ち歩けたり、負荷にならない携帯性が魅力です。
2.Insta360 ONE X
Insta360 ONE Xは今までのInsta360 ONEの最新のモデルであり、画質などの基本性能はもちろん、アプリなどの拡張もされました。最高5.7K30fpsの最高動画記録画質は、携帯型360度動画撮影用カメラとしては最高クラスの動画画質となります。
3.GoPro Fusion
元々アクションカムで有名なGoProですが、新しいジャンルに挑むということで、初めて360度動画撮影ができるカメラを発売しました。5.2Kの動画撮影、脱ジンバルのスタビライゼーション機能など注目の機能です。
まとめ
360度動画はウィズコロナ時代における新しい視聴体験として、広く一般に受け入れられ始めているかと思います。
更にインパクトある視聴体験を提供したい方は、最新手法である「360度インタラクティブ動画」の導入も検討してみてはいかがでしょうか?
MILではインタラクティブ動画の事例を多数ご紹介してますので、ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。
執筆者
田中
MIL株式会社 クリエイティブグループ エディター
1997年生まれ、神奈川県出身。大学在学中にインターンとしてMIL株式会社にジョインし、2020年12月に入社。インタラクティブ動画を専門とした制作経験を活かし、クリエイティブグループでは主に、インタラクティブ動画特有のUIデザインや映像編集を担当する。